タイに“お試し”で1年半移住した夫婦のリアルな暮らし「チェンマイでの生活費は月4万バーツ(約17万6000円)ほどでした」

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2025年05月13日 16:21  日刊SPA!

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お試し移住の旅で訪れたトルコ・カッパドキア。夫のやまさん(左)と、YANAGIさん(右)
物価高や急激な円安の影響は大きく、日本で生活を続けることが「現実的に厳しい」と感じる人も少なくないだろう。
そんななか、自由な働き方と暮らし方を手に入れるべく、海外に活路を見出す日本人も存在する。YouTubeチャンネル「やなぎらいふ 世界試住」を運営するYANAGIさんもそのひとりだ。

現在はタイ・チェンマイを拠点に、夫婦で“世界試住”(世界各地をお試し移住)をしている。彼女が語る、海外でのリアルな日常とは——。

◆結婚を機に「今のうちに海外へ」

「世界試住を始めたのは27歳のときです。それまでは関東のアパレル会社やメーカー営業の仕事をしていました。海外で暮らしたいと考えるようになったきっかけは、結婚したときに夫婦で『これからどこに住みたい?』って話し合ったことです。最初は日本で暮らすつもりでしたが、まだ子どももいないし、親の介護も必要なかった。『今なら自由に動けるよね』ってことで、思い切って海外に出ることを決意しました」

2022年、コロナ禍のタイミングで、2人は勢いで“お試し移住”の旅に出る。最初の地に選んだのは、PCR検査が不要だったカンボジアのプノンペン。その後も、タイのバンコク、トルコのイスタンブール、ジョージアのクタイシ・トリビシ、トルコのイズミル、ベトナムのダナン、インドネシアのバリ島、マレーシアのペナン島と、滞在可能なビザの範囲内で各国を回った。

「チェンマイを訪れたのは2024年の1月でした。もともと行く予定はなかったんですが、フリーランスの友達から『すごく良いところだよ』と勧められて。それで実際に行ってみたら、バンコクとはまた違って都会と自然のバランスが絶妙で街もコンパクト。食べ物も美味しくて、『ここなら長く住めそう』って感じました」

◆チェンマイでの生活費は夫婦2人で月4万バーツ(約17万6000円)

その後、ノンイミグラントED (教育)ビザを取得して語学学校に通いながら、約1年半チェンマイで暮らすことになったYANAGIさん。実際の生活費はどのようなものだったのだろうか。

「日本人も多く住むニマンヘミンというエリアのコンドミニアムに住んでいて、1ベッドルーム(1LDK)で家賃は1万7000バーツ(現在のレートで約7万5000円)でした。食費はほとんど外食で、ローカルなお店はもちろん、おしゃれなカフェや日本食レストランにもよく行ってました。チェンマイって、バンコクと比べて日本食が安いんですよね。生活費は家賃込みで夫婦2人で月4万バーツ(約17万6000円)ほどでした」

海外試し住みを始めたタイミングで、それまで日本で続けていた仕事をきっぱりと辞めたというYANAGIさん。現在の主な収入源について聞いてみた。

「今はSNSディレクターとしての仕事が本業で、YouTubeは副業として続けています。夫(やまさん)はもともと副業でSNSマーケティングをやっていたんですが、それ一本でも十分に生活できるようになってきたので、今では独立しています」

◆SNSディレクターとして独立。無収入期を乗り越えて

YouTubeを始めたのは、お試し移住をスタートしたタイミングだった。YANAGIさんは当時、海外でも続けられるオンラインの仕事を模索していた。

「2022年当時はちょうどコロナ明けで、海外旅行の最新情報がなかなか手に入らなかったんです。じゃあ、自分たちの経験をシェアしようと思ってYouTubeを始めました。とはいえ、当初はYouTubeも動画編集もまったくの初心者で。編集なんてやったことなかったので、すべて独学で勉強しました。続けていくうちに、InstagramのリールやYouTubeのショートなど、短尺動画の制作の仕事も少しずつ受けられるようになっていきました」

もちろん、軌道に乗るまでは決して簡単ではなかった。

「最初の頃は収入がほとんどなくて、貯金を切り崩して生活していました。3カ月やって仕事が安定しなかったら、日本に帰ろうかとも考えてたくらいです。ほんとに無計画で始めたんですけど……気がつけば、もう4年近くこの生活でなんとかやってこれています(笑)」

夫のやまさんは会社員時代の2.5倍の収入を得られ収入が安定し、チェンマイ暮らしを実現させたYANAGIさん。実際に暮らしてみて、現地で感じたギャップや意外な発見はあったのだろうか。

「驚いたのは、チェンマイって思った以上にインフラが整ってること。バンコクに比べたら田舎だけど、英語が通じたり、Wi−Fi速度が速いことも驚きました。でも、以前、10年に1度と呼ばれる洪水があった際は友人の家が完全に浸水して、しばらくホテル暮らしになっていたんです。エリアによってはそういったリスクがあるので、住む場所選びは本当に大事ですね」

また、大気汚染の問題も深刻だという。

「大気汚染は、特に3月〜4月中旬がひどくて、11月もPM2.5が多い時期なんです。現地のタイ人もみんなマスクをしたり、顔を覆ったりするくらい深刻でした。私自身は体調を崩すことはなかったけど、やっぱり気分が沈んでしまいますね。逆に、5月〜10月は空気がきれいで、とても過ごしやすいです。チェンマイにいる知り合いも、ご家庭によってはパタヤなど空気の良い南の地域に一時的に避難することもあります」

◆「旅行」と「実際の移住」の違いとは?

旅行と実際の移住の違いについて、YANAGIさんはこんなふうに語る。

「旅行はベストシーズンに行って楽しめるし、帰る場所もありますよね。でも、実際の移住となると、その土地のいい時期も悪い時期も経験することになる。だから『好き』っていう気持ちだけじゃダメで、プラスもマイナスも含めて“ここにいたい”って思えるかどうかが大事だと思います」

そんなYANAGIさんでも、「住みたい」と思いながら断念した国もあるという。

「トルコのイスタンブールはすごく気に入ってたんですけど、物価の上昇や政治的な不安定さがあって。ロシアのウクライナ侵攻の影響で、ビザが取れなくなり、泣く泣く諦めました。スペインも第3候補にしているのですが、今後何度か訪れて検討してみようと思っています」

その点、タイは日本人にとって非常に住みやすい国だと感じていて。日本語の情報も豊富だし、日本食も手軽に食べられる。チェンマイは日本人も多すぎず、ちょうどいい距離感なんです。そのバランスがすごく心地いいですね」

今後はチェンマイをベースに他の国との2拠点生活も視野に入れているという。

「ヨーロッパも第二の移住先候補としながら、旅を続けています。将来的に子どもができたり、親の介護が必要になったりしたら、日本に戻ることもあるかもしれません。でも、“将来のために”というよりは、“今できることを全力で楽しむ”という気持ちで、これからもいろんな国をめぐっていきたいと思いますね」

【YANAGI】
世界各地を“お試し移住”中。YouTube「やなぎらいふ 世界試住」運営、SNSディレクター。タイ・チェンマイを拠点に夫婦で自由な暮らしを模索しながら、リアルな海外生活を発信中。
Instagram:@yngpkpk

<取材・文/カワノアユミ>

【カワノアユミ】
東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano

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