ニコ・ミュラー(アンドレッティ・フォーミュラE) モナコE-Prix DTMドイツ・ツーリングカー選手権などで活躍したアウディ時代を経て、2022年からはプジョーのハイパーカープロジェクトへ加入。そして今季2025年はポルシェへ電撃移籍を果たしたニコ・ミュラー。5月8〜10日にスパ・フランコルシャンで開催されたWEC世界耐久選手権第3戦では5号車ポルシェ963のステアリングを握った彼が、復帰を果たしたWECと参戦中のABB FIAフォーミュラE世界選手権について語った。
ミュラーは2019-2020年シーズンからフル電動フォーミュラ・シリーズに参戦している。現在はポルシェのワークスドライバー契約にともない、2024年限りでドイツメーカーを離れたアンドレ・ロッテラーの後任として、ポルシェのパワートレインを用いるアンドレッティ・フォーミュラEから2024-2025年の“シーズン11”に臨んでいる。
――プジョーからポルシェへの移籍後、すでにIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でLMDhカーを運転していると思いますが、『9X8』と『963』に大きな違いを感じますか?
ニコ・ミュラー「プジョーはLMH(ル・マン・ハイパーカー)規定のクルマ。対して963はLMDhカーという、まったく異なるマシンコンセプトであることから運転時のフィーリングは昼と夜ほどの大きな違いではないが、いくつかの違いがあるのは事実だ」
ミュラー「それに慣れる必要があるが、全体的には比較的似ていると言えるだろう。もちろん、両マシンには若干異なるものの、それぞれに長所があり、おそらく異なる弱点もあるはずだ」
――今シーズン、フォーミュラEではポルシェのカスタマーチームに移籍し、WECではスパで初めて963をドライブします。今後もポルシェのハイパーカーでWECに出場することを希望しますか?
ミュラー「プロドライバーである限り、可能な限りの数多くのレースに参戦することを望んでいる。過去にはWECとフォーミュラEのダブルプログラムに乗るチャンスに恵まれたこともあったが、今年はスケジュールの都合でそれが叶わず、残念ながら断念することになった」
ミュラー「僕が現在フォーカスしているのはフォーミュラEだけだが、例え一戦でもWECに復帰できたことは本当に嬉しかった。将来的に何が可能になるか誰も分からないし、何が起きるか分からないこそ、今回のような幸福な日が訪れる可能性のある日々を楽しみにしている自分がいるよ」
――ところで、フォーミュラEのモナコ戦では残念ながら2戦続けて不運が襲いましたね。
ミュラー「とくに土曜日は、戦略的に多くのことを正しく実行できたからレースに勝つチャンスがあったが、残念ながらピットブーストに失敗してしまった。日曜日はペースがなく、それらを分析して理解し次回はウエットコンディションでもっと良い結果を出さなければならない」
――WECのスパ戦の翌週はフォーミュラEの東京大会です。2年目の東京E-Prixは2レース制となります。
ミュラー「僕たちドライバーは東京E-Prixを本当に楽しみにしているよ。シーズンのハイライトであり、素晴らしいロケーションに設置された非常にテクニカルなコースだ。東京のコンディションに合わせてパッケージをうまく調整し、ふたたび良いポイントを獲得できればと願っている」
ミュラー「せっかくヨーロッパから遠く離れた日本へ旅をするのだから、2レースをファンの皆の前で戦えることは、僕たちドライバーやチームにとっては間違いなく素晴らしく、そして喜ばしいことだ。僕個人では今季のカレンダーの中でも本当に楽しみにしているラウンドのひとつなんだ。今シーズンは新たにピットストップが義務化され、ショー的な部分も増えてさらに楽しんで貰えるのではないだろうか」
――新ピットストップのルールは非常に複雑で、理解するのは難しいと感じるファンもいるようです
ミュラー「フォーミュラEはあまり複雑なルールを導入しないように注意する必要があると思っている。アタックモードには多くのアクションと重要な戦略的要素が組み込まれているが、ピットブーストによってさらに多くのアクションが加わったため、チームとドライバーにとっては大きな重要なタスクとなり、すべてを追跡するのは本当に簡単ではなくなってしまった」
ミュラー「会場で、またテレビの前で応援してくれているファンの皆に、“いま一体何が起こっているのか”をできるだけ明確に理解し、楽しんで貰えるためにも僕たちドライバーやチーム、主催者はそれに対して常に目を光らせておく必要があると思っている」
――最後に、フォーミュラEの東京大会を楽しみに待っている日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
ミュラー「僕たちドライバーやチームを一生懸命応援し、レースを盛り上げてくれる熱気溢れる日本のファンは本当に素晴らしい! みなさんと東京でお会いできるレースウイークを心から楽しみにしているよ」
[オートスポーツweb 2025年05月14日]