柔道男子日本代表監督で、04年アテネ五輪100キロ超級金メダルの鈴木桂治氏(44)が14日、花巻東(岩手)で講演を行った。テーマは「柔道から学んだこと」。硬式野球部をはじめ、部活動がさかんな同校の全生徒に「目標は身近に置くこと」と訴えた。
国士舘大時代、監督に「いつ世界一になりたいか」と問われ、鈴木氏は「今すぐにでもなりたい」と答えたという。「先の目標は、日々をなんとなく過ごしてしまうが、『明日にでも世界一になりたい』と思えば、今日、何をするべきか、1日1日を積み重ねることができる」と語りかけた。
貴重な実体験も話した。「目標が折れたとき、支えるのは日々の積み重ね」。監督として迎えた24年パリ五輪で、その光景を目の当たりにした。兄妹での五輪連覇を目指した阿部一二三(27)と妹詩(24)だったが、詩が2回戦敗退。鈴木氏は兄妹での目標を失った一二三に不安を覚えた。だが、一二三は顔色を変えず、練習に取り組んだ。担当コーチからも「(一二三は)大丈夫ですよ」と言われハッとした。「これまでの取り組みを見てきたのに、不安に思ってしまった自分が悔しくて。コーチの言葉で目が覚めました」と当時を振り返った。
一二三は金メダルを獲得し五輪連覇を達成。「大きな目標が目の前で失われたとき、最後に自分を支えてくれるのは積み重ね。(一二三は)積み重ねてきたし、しっかりと研磨してきたので、それが金メダルにつながったと思います」。
花巻東からは、ドジャース大谷やエンゼルス菊池が巣立った。これからも世界で活躍する人材の誕生に期待を込め、講演を締めくくった。【木村有優】
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