“年金改革法案”国会提出へ 骨抜き批判も本当に安心? 氷河期世代の大量退職で何が?【Nスタ解説】

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2025年05月15日 21:43  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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“骨抜き”との批判も出ている「年金制度改革法案」が16日に国会に提出される予定です。

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「骨抜き」とは?「年金改革」自民党が考える当初の案

井上貴博キャスター:
これだけ少子高齢化が進んでいる日本で、年金制度が厳しくなっていくのは想像できますが、どうやって持続可能なものにしていくのか。その中で、自民党のある案がありました。

そもそもの財政検証のモデル世帯というのが、夫が会社員、妻が専業主婦にしている時点で、どれだけ時代遅れなんだという感じはしますが…これは少し置いておきましょう。

今後どうなっていくかという「財政検証」が行われました。そこで、2024年度と2057年度を比較しました。

平均の手取り額は、インフレなども加味して増えそうということがわかりました。しかし、手取りは増えているのに、もらえる年金は少し減ってしまう。

特に深刻なのは、基礎年金部分が3割も減ってしまいます。これは由々しき問題だということで、何とか補填しなければいけない。そこで、減った分を補填するのに「厚生年金の積立金を当てませんか」と、これが当初の自民党案でした。

厚生年金はサラリーマンや会社員、公務員の皆さんが積み立てているもの。それが流用されるのはどういうことなんだと、批判が起きることが想像できます。

批判が起きると、選挙で票が減ってしまう。参院選を見据えて、この部分が削除されたわけです。

しかし、これが1つの骨格でしたので、この部分を削除するのは「骨抜きの案」ではないかというのがニュースになっている。

骨抜きで残った2つの部分「加入者の増加」「高齢者への支援」

骨抜きにしたことで、残った案にはどのような部分があるのか。

(1)厚生年金の加入者増加
→「106万円の壁」を撤廃します。これにより、パートの人も厚生年金に加入してくださいというものです。

そして、「段階的に撤廃」もします。これまで従業員数50人以下の比較的小さい企業は任意での加入でした。その小さい企業もどんどん厚生年金に入ってくださいということがあります。

(2)高齢者への支援
→「支給停止基準額(収入の合形)を月50万円から月62万円引き上げました(※厚生年金受給者に対し)」。つまるところ、働ける人は働いてくださいと後押しをする。

さらに、「iDeCoの加入年齢の上限を65歳未満から70歳未満に引き上げます」。これによって、入れる方はiDeCoにも入ってくださいというものです。

これが1つの案として、16日に提出される予定だということです。

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
本丸の、就職氷河期対策でもある国民年金を少しかさ上げしましょうというのは、先送りになったので、骨抜きということはしょうがない。

厚生年金を増やすこと自体は結構なことなんですが、1つ難点があるのは、企業側も負担が生じます。特に中小企業です。中小企業の負担をどうしていくかというのが、1つの課題になると思います。

年金生活「毎月3万円足りない」それ以上にも…

井上キャスター:
将来、毎月どのくらいお金が必要なのか。どのくらいもらえるのか。そういったところについて、ある試算が出ています。これは総務省「家計調査」によるものです。

65歳以上のリタイア夫婦2人の家庭を想定しています。収入の約9割が年金生活になり、2024年は1か月・25万2818円になるだろうと。ここから食料費、住居費、娯楽費などを支出。一般的に標準的な生活をすると、3万4058円足りないという試算が出ています。

2024年で考えても、もらえる年金だけでは生活できない、暮らしていけそうにないというのがおわかりいただけるかと思います。

もう少し細かく見てみると、標準的な部分の住居費が1万6432円と、総務省「家計調査」にはありました。しかし、この額は少し低すぎないかと感じたんです。

家賃と比べて低いのはなぜなのか。これは2023年度のデータですが、8割以上(約84%)の人が持ち家です。なので、住居費として必要なのが1万6000円台に抑えることができているというわけなんです。

これが今後どうなっていくのか。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介チーフエコノミストによりますと、現在の40・50代の人は、30年前に比べ、持ち家率が低下しています。マンション価格が高騰しているため、今後購入する可能性は低い。そう考えると「確実に持ち家率は下がる」ということです。

つまり、住居費がどんどん上がっていくということは、毎月足りない額がどんどん増えていくということが想像できるわけです。

氷河期世代の問題が深刻化 財源を負担するのは現役世代の可能性

もう1つ、就職氷河期世代の問題です。就職氷河期世代は約2000万人いるといわれています。数年後、その人たちが一斉に退職する時代がやってきます。この時代の人は非正規雇用が多いです。そのため国民年金の比率が高いんです。

国民年金は、ただでさえ財源が枯渇していると言われている中で、十分な年金を受け取れなくなります。そうすると、生活保護の受給者が増えることが想定されます。

生活保護は、どこから財源を持ってくるのかというと、現役世代が負担するということが考えられます。なので、どんどん厳しくなっていくだろうと…。

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
具体的に言いますと、国民年金だけしかもらえない人は月5〜6万円ぐらいになってしまいます。その金額で暮らしなさいというのは、都市部では到底無理です。地方でもなかなか厳しいと思います。

そうすると、その人たちは一斉に生活保護にシフトしてしまいますから、生活保護はこの国の税金で賄うということになりますので、今度、国はそちらの方に税負担が増えます。

そういう先のことを考えれば、今から就職氷河期世代に対して手当をして、最低保障年金8万円とか10万円ぐらいを保障できるようなシステムを、本当は構築しなければいけないんです。

国民年金が約6万円ならば+2万円や3万円を保障して、税負担も含めて、最低保障年金というシステムを早く考えてもらわないと、大変なことになるということだけはわかりましたね。

出水麻衣キャスター:
そういった議論はあるんですか。

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
税金の社会保障の専門家の中では問題意識にあるのですが、それを言うと選挙に不利になるから口に出さないというのが現実ですね。

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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島出身
政治記者歴30年

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