『遠い山なみの光』© Kazuko Wakayama広瀬すず主演映画『遠い山なみの光』が、5月13日(現地時間)から開催されている第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、石川慶監督、原作者でありエグゼクティブ・プロデューサーのカズオ・イシグロ、広瀬と吉田羊、カミラ・アイコ、松下洸平、三浦友和の7名がカンヌ入り。フォトコール、公式上映、そして囲み取材とレッドカーペットに参加した。
リラックスした雰囲気のフォトコール
海辺の街カンヌが輝く晴天が広がる中、まず公式上映に先駆けて行われたフォトコールでは、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の白いノースリーブのドレスに身を包んだ広瀬、赤白の「寿ぎ」着物スタイルの吉田、「アルマーニ(ARMANI)」のタキシード姿の松下と、「HUGO BOSS」のタキシードを着こなす三浦らキャスト陣に加え、「プラダ(PRADA)」のフォーマルスーツに身を包んだ石川監督、そしてノーベル文学賞受賞作家のカズオ・イシグロらが登場。
「ヒロセ!ヒロセ!」「スズー!」というコールや、視線を求める呼びかけも世界中のカメラマンから飛び交い、広瀬も手を振ったり、満面の笑顔で大勢のマスコミ陣の呼びかけに応えていた。
主演の広瀬は、2015年に参加した是枝裕和監督作『海街diary』以来10年ぶり2度目、吉田、松下、三浦は初めてのカンヌ国際映画祭への参加となる。
本作の原作者であり、エグゼクティブ・プロデューサーも務めるカズオ・イシグロは1994年にクリント・イーストウッドやカトリーヌ・ドヌーヴらと共にコンペティション部門の審査員を務めたが、出品者としての参加は今回が初。
ヴェネチア国際映画祭などで高い評価を受ける石川監督もカンヌへは初の参加となり、1950年代の長崎と1980年代のイギリスで生きる女性たちを描いた本作のキャスト・スタッフが満を持して映画の聖地であるフランス・カンヌの地を踏んだ。
5分にわたるスタンディングオベーション
公式上映の会場であるTHEATRE DEBUSSY(ドビュッシー劇場)の会場内に監督やキャストたちが入ると満席の客席からは溢れんばかりの拍手が。
上映前の舞台挨拶では、温かな歓迎を受けて感動の面持ちの一同を代表し、石川監督が「今日は本当にこの映画をずっと支えていただいたカズオ・イシグロさん、それから本当にずっと映画で戦ってくれたスタッフ・キャストの皆さんと、そして朝からこの会場に駆けつけていただいた皆さんと、この特別な瞬間を共有できることをとても嬉しく思っています。今日は自分も一観客に戻って映画を楽しみたいと思います」と挨拶。
その後、司会を務めていたカンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモー氏が、予定になかったカズオ・イシグロにマイクを向けスピーチをリクエスト。
「これは台本に書かれていなかったよ!」と笑いを誘いつつも、「この映画は私が25歳の時に書いた本がベースになっています。ひどい本なんです(笑)。私が書いた初めての本でして。でもひどい本から素晴らしい映画になるという長い長い歴史が映画にはあります。石川監督が本作の映画化の企画をくださったときに、素晴らしいアイディアだと思いました。美しい映画が生まれる可能性に満ちていた。そして、僕のその直感は正しかったんです。だから、今僕は次のひどい本を書こうと思ってます。どうもありがとう!」と、会場を大いに笑いに包み込むウィットに富んだスピーチを披露した。
上映終了後には作品を観た観客たちから5分にわたるスタンディングオベーション。エンドロールが始まった瞬間になりだした拍手は、場内の明かりが明転すると同時に観客総立ちの大きな拍手へ。圧倒的な高揚感に包まれたキャスト、石川、イシグロは満場の観客を見回し、改めて上映の余韻を噛み締めるように熱い抱擁を交わしたり、堅い握手を交わしながら、初の世界への披露となるこのワールドプレミア上映の熱気を全身に浴びていた。
上映を終え、広瀬は「すごく特別な空間の中で映画が届いたんだなというのをすごく実感できる瞬間だったなと、いまだにやっぱり景色が焼きつくような、そんな空間でした」とコメント。
10年ぶりのカンヌに「あの時のことってすごかったんだなって思いながらこの10年過ごしてきた」と話す広瀬は、「改めて今来てみて、色々感じること思うことがありました。街ごと映画を盛り上げるというこの空気感はやっぱりなかなか経験できない、カンヌならではの世界だなと思います。前は手触りがないまま帰ってしまったような感覚なので、今回は思う存分楽しみながら浸りたいなと思います」と今回の抱負を口にした。
レッドカーペットでは装い新たに
夕暮れに包まれたリュミエール劇場前のレッドカーペットに登場した『遠い山なみの光』一同。昼間のフォトコールから装いを新たに、ゴールドの大きなタフタが片袖についた黒の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のドレスを身に纏った広瀬。
また、映画が世界に羽ばたいていくようにとの願いを込めて選んだという鶴が大きく羽を広げた姿が印象的なアンティークの着物を凛と着こなした吉田、すらりとした高身長を活かしたタキシード風パンツスーツが印象的なカミラ・アイコ、「アルマーニ(ARMANI)」のタキシードに身を包んだ松下、「HUGO BOSS」のタキシードを粋に着こなす三浦らがカンヌの象徴たるレッドカーペットを満喫した。
『遠い山なみの光』は9月5日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)