小日向星一instagramより 名優・小日向文世には、ふたりの息子がいる。長男・小日向星一と次男・小日向春平は、ともに俳優である。
小日向星一は、現在公演中の舞台『反乱のボヤージュ』で共演する財津優太郎のInstagram投稿(2025年5月8日)で、話題を集めている。俳優であることや出身大学が同じ春平とは、どんな兄弟なのだろうか?
彼らにとっての父・小日向文世がどんな存在なのかも気になるところ。男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。
◆小日向家の俳優史
地方ローカルの有名CMには、ご当地出身の有名俳優が起用されることがある。北海道出身である筆者からすると、全国的に人気の銘菓「わかさいも」のCMに出演する小日向文世が特に馴染み深い。
優しげで快活な声色で商品名を宣伝する小日向がイメージキャラクターに起用されたのは、2014年から。明治初期に炭鉱が開かれ、石炭の町だった三笠市出身の人。アンモナイトの化石で有名でもある。芋で作る銘菓と石炭と化石。北の大地の歴史を感じる名優中の名優である。
美術の道を志した小日向は高校卒業後、札幌オリンピックが開催された1972年に上京。結果的に演劇の世界に入り、39歳で当時所属した劇団の女優と結婚。長男を授かり、劇団は解散したが、現在長男と次男がふたりとも俳優の道を歩んでいることを考えると、小日向家の俳優史みたいなものが連綿と続いているんだなぁと思う。
◆初共演が初大河ドラマ出演
歴史ということでいうなら、1995年生まれ現在29歳の長男・小日向星一と1998年生まれ現在27歳の次男・小日向春平の初共演が初大河ドラマ出演で話題になった。2021年に放送された吉沢亮主演作『青天を衝け』(NHK総合)である。
星一が演じたのは会津藩主・松平容保。春平が演じたのが松平容保の弟・松平定敬。現実でも兄弟、ドラマ世界でもリアル兄弟役を演じた。同作放送年、星一と春平の出身大学である明治大学のホームページ上に興味深いツーショットインタビューが掲載されたことも見逃せない。
揃って同じ大学出身者であり、高校までは剣道に打ち込み、大学では同じ演劇に関心をもった。でも同じ俳優としては、ライバルというインタビュー記事(小日向星一さん・小日向春平さん 対談)が面白いのだ。
◆過去と現実がクロスするトーク
このインタビューは明治大学創立140周年を記念する掲載タイミングであり、ここにもたしかな歴史性を感じる。しかも星一は2018年卒業のOBとして、春平は当時現役生だった。過去(先輩)と現実(後輩)がクロスするトークでもあった。
兄は自然と演劇の道に興味をもち、明大の演劇サークルに入った。一方で弟は当初「演劇を始めてたまるか」という気持ちだったらしいのだが、兄とは違うサークルに入ることで芝居の世界を志す。
今ではともにプロの俳優となり、大河ドラマで初共演も経験したふたりに、インタビュアーが目標にする俳優の名前を聞いてみる。当然求める答えは、小日向文世その人なのだろうけど、ふたりはそれぞれドラマで共演した松田龍平と綾野剛だと答えている。
◆小日向兄弟の名回答
でもやっぱり話題はどうしても父のことになる。そりゃ言及しなきゃならないよな……。みたいな感じでインタビュー全体の撮れ高を兄弟揃って満たそうともしている。
「父を超えたいという思いがあります。僕たちは一生『小日向文世の息子』として見られますし、比べられることが多いと思いますので、時間はかかるかもしれませんが父を超えなければいけないと思っています」とまず星一が話す。
すると春平が「いつか『小日向文世の息子』ではなくて、『小日向文世が、小日向春平の父親』というふうに認知されたら面白いなと考えていたので、兄の話を聞いてとても共感しました」と補足する。
美しい連携に阿吽の呼吸を感じるが、小日向兄弟のコンビネーションによるこうした名回答が、小日向家の俳優史をどんどんあざやかに更新していくのだろうと思う。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu