鈴木唯(12)が、フランスで開催中の第78回カンヌ映画祭で、最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品された、早川千絵監督(48)の新作「ルノワール」(6月20日公開)の公式会見に現地時間18日、出席した。
闘病中の父と仕事に追われる母と暮らす少女・沖田フキを撮影当時、役と同年齢の11歳で演じた主演の鈴木唯は、12歳でカンヌ映画祭に初参加した。女優賞を受賞した場合は日本人初、主要賞においても、2004年に「誰も知らない」(是枝裕和監督)で、当時14歳で男優賞を受賞した柳楽優弥(35)を抜き、史上最年少受賞の期待がかかる。早川千絵監督(48)と撮影現場で、どのようなやりとりがあったのかと聞かれると「早川監督と一緒にフキちゃんの行動や考え方を話し合いました。監督と私は相性が良かったんじゃないかなと思うほど、スポン、スポンとピースがはまっていくような感じでした」と、堂々と答えた。
早川監督は「唯ちゃんにはディレクションをしなくても、彼女が自然にそのままのお芝居でやってくれたものが本当に素晴らしかった」とたたえた。そして「彼女が言う通り、私たちはとても相性が良かったです。フキという少女について、私と唯ちゃんは誰よりも彼女のことを理解していたので、撮影の中盤からは何も説明してなくても分かるから大丈夫だという状況になっていました」と語った。
会見では、ジャーナリストから「セリフが少なく、出演者の演技から多くを感じ取る作品」との評価と、キャスティングへの質問も出た。早川監督は「フキはキャスティングが、とても重要になると考えていたので、見つかるまでとにかく何百人でもオーディションを続けようと臨んだのですが」と主人公のフキのキャスティングが鍵だったと説明。「鈴木唯ちゃんが最初にオーディションに現れた瞬間『ここにフキがいる』と思い、すぐに決まってしまいました」と、鈴木が一択の状態だったと明かした。
「ルノワール」は、日本がバブル経済真っただ中だった80年代後半の夏を舞台に、闘病中の父と仕事に追われる母と暮らす11歳の少女・沖田フキを主人公に物語が展開。マイペースで想像力豊かなフキは、空想にふけりながら、それぞれに事情を抱えた大人たちと触れ合う。子供特有の感情を細やかに描写するとともに、フキが関わる大人たちの人生の、ままならなさや人間関係の哀感を温かなまなざしとユーモアを持って描き出す。
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早川監督は、高齢化社会が深刻化し75歳以上の高齢者が自ら生死を選択できる制度「プラン75」が施行された、近未来の日本を描いた長編初監督作「PLAN 75」が、22年にカンヌ映画祭ある視点部門に出品された。新人監督賞「カメラ・ドール」受賞こそならなかったが、同賞に準ずる監督に授与されるスペシャルメンションを授与された。「ルノワール」は「PLAN 75」とは、ひと味違った作品だけに、製作意図を問う質問も出た。
早川監督は「私が映画を撮りたいと思い始めたのは『ルノワール』の主人公・フキと同じぐらいの年頃でした。その時に抱えていた気持ち、感覚をいつか絶対に映画にしたいと長年思ってきました。いつしか、子どもが主役の映画を撮りたいという思いを、今回、実現させることができました」と答えた。その上で「子ども時代というのは、自分が何を感じているのか、起きているのかをなかなか言語化できない時期だと思うんです。当時、感じていた何か分からなかったものを、大人になって段々と分かってきて、自分は寂しかったんだ、哀しかったんだ、傷付いていたんだという気持ちを描きたいと思いました」と作品に込めた思いも語った。
日本映画のコンペ部門への出品は、役所広司(69)が男優賞を受賞した「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督)、坂元裕二氏(57)が脚本賞を受賞した「怪物」が出品された23年以来2年ぶり。会見には、フキの母詩子を演じた石田ひかり(52)、闘病中の父圭司を演じたリリー・フランキー(61)も出席した。
◆「ルノワール」 1980年代後半のある夏。11歳の沖田フキ(鈴木唯)は、両親と3人で郊外の家に暮らしている。時には大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性を持ち、得意の想像力を膨らませながら自由気ままに過ごしていた。時々、垣間見る大人の世界は刺激的だけどなんだか滑稽で、フキは楽しくて仕方ない。だが、闘病中の父圭司(リリー・フランキー)と仕事に追われる母詩子(石田ひかり)との間には、いつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常もいや応なしに揺らいでいく。フキが出会う大人たちを中島歩(36)、「PLAN 75」に引き続き河合優実(24)、さらに坂東龍汰(27)と、各年代の実力派俳優が演じた。日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタールの国際共同製作で、24年7〜9月に国内、同11月には海外で撮影が行われた。
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