【キウイは語る】(上) 垣間見えるニュージーランド人気質、果物消費でひとり気を吐く

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2025年05月19日 13:10  OVO [オーヴォ]

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グリーン、サンゴールド、ルビーレッドと色とりどりのキウイ

 果物が嫌いという人は少ないと思うが、日本人の果物消費量は年々低下傾向にあるという。政府の家計調査などによると、世帯あたりではここ10年で2割ほど減少。国連食糧農業機関(FAO)によると、年間1人あたりの供給量では日本は186カ国中150位(2021年)と下位に沈む。ところが、そんな状況の日本でキウイの消費量だけは増えている。2024年の調査ではリンゴやミカンなどが軒並み10年で2〜4割減少したのに対し、キウイはなんと2割以上増しと、ひとり気を吐いている。その背景を探ろうと、世界の生産国別流通量では首位の約40%、日本国内では70%以上を占めるニュージーランドを訪れた。キウイを通して、いろんなことが見えてきた。

 ▽キウイのじゅうたん


 日本から赤道を越え約9000キロ、オーストラリア南東の太平洋南端に浮かぶニュージーランド。地図を見ると、先はもう南極だ。10時間半の空の旅を終え、北島にある最大都市のオークランド空港に降り立つと「最果ての地のロマン」を感じる。4月の現地は秋と春の違いはあるが、ちょうど日本と同じで過ごしやすい季節だ。何はともあれ目指すのはキウイ農園。オークランドから国内便に乗り、北島の北側にあるキウイ栽培の中心地というタウランガに向かった。


 この辺りの湾は「ベイ・オブ・プレンティー」という名前で、陸地の一帯は「ベイ・オブ・プレンティー地方」と呼ばれる。ガイドによると「たくさん(プレンティー)のサンシャイン・たくさんの雨・たくさんの食べ物」との意味が込められている。目的の「リリーバンク・オーチャード」を見て、その言葉に納得した。日本にあるブドウ棚のように空を覆うキウイ畑に足を踏み入れると、頭上にはたっぷりとキウイの実がなっていた。今回の旅に同行をお願いした「キウイ博士」こと西山一朗先生(駒沢女子大学人間健康学部学部長を3月に退官)も「これほど広い農園は初めて」と興奮気味だ。


 農園主のティム・トーアーさんとリンダ・ホウズさんが「ここは果樹栽培に適した火山灰地で水はけがいい。雨が降るので水やりは不要」と説明してくれた。「頭を下げて股の間から見るといい」と言うので、天橋立でするように股のぞきをすると、「キウイのじゅうたん」の壮観が広がった。

 ▽ゼスプリ経験


 69歳というティムさんは大学で園芸学を学び、卒業後はキウイ農家へ栽培指導などを行う仕事に就いた。2008年に3歳年下のリンダさんと出会い、10年3月に8ヘクタールのオーチャード(農園)を購入した。「生涯の伴侶とここで生きていくという決意ですね」と話を向けると、リンダさんは「私は国内の別のところに住んでいたんだけど、彼と出会ってここに来たの」と少女のような笑顔になった。

 一方、ティムさんの答えはより現実的だった。「ゼスプリ・エクスペリエンス(経験)の一部になりたかったから」。ゼスプリとは、タウランガに本社を置く世界最大のキウイ販売・マーケティング会社。ニュージーランド国内では、オーストラリア以外の国へのキウイ販売の独占権を持っている。1980年代に国内の生産者が過当競争を避け輸出窓口を一本化するため創設した「ニュージーランド・キウイフルーツ・マーケティングボード(KMB)」が前身で、今も生産者が株主という体制を守っている。ちなみにニュージーランド国内の生産者数は約2800で国外が1500人だという。

 ▽同じ夢


 ニュージーランドのキウイ生産者にとって、ゼスプリの一員であることのメリットは大きい。病害虫対策や品種改良では、ゼスプリが社として研究開発した成果を共有できる。ティムさんが農園を購入した年にはキウイが細菌に感染する「かいよう病」が流行。その後の数年で全世界でのゴールドキウイの売り上げを半減させるほどの猛威を振るった。ティムさんも「うちのゴールドキウイも壊滅した」と振り返る。しかし、その後ゼスプリが病気への耐性を持った新品種のサンゴールドキウイを開発。サンゴールドキウイが生産量、売り上げともグリーンキウイを圧倒していく流れをつくった。


 ニュージーランドは輸出の6〜7割を、キウイや乳製品、羊肉、ワインといった農産品が占める。国際競争力もあり政府の保護も手厚い。リンダさんは、「ゼスプリは何か問題があってもみんなで協力し合って解決する。みんなが同じ方を見て、同じ夢を持ち、よりいいキウイを作りたいと思っている」と話した。「ワン・フォー・オール・オール・フォー・ワン(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」。ニュージーランドの国技といわれるラグビーでよく使われる言葉だ。キウイ栽培の現場にも、そんなニュージーランド人気質が宿っているようだ。

(中に続く)

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  • 老化したからだろうか?キウイの木のペアの開花時期がずれて生りが悪い。生産者のペアの気質に似るのだろうか?ひとり剪定した木を掃く。
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