宮田莉朋、今季初入賞もセットアップの悩みは続く「だからといって僕は諦めません」/FIA F2第4戦レビュー

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2025年05月20日 18:00  AUTOSPORT web

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2025年FIA F2第4戦イモラ 宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC)
 5月16〜18日に開催された2025年FIA F2第4戦。噛み合わないシーズン序盤3大会を過ごした宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC)は、約1カ月のインターバルを経て、ヨーロッパラウンド初戦となるイタリア・イモラで今季初入賞を狙った。

 入賞に向けては初日の予選順位が重要であり、予選でパフォーマンスを発揮するためには、持ち込みのセットアップを外すことなく、フリー走行から好走することが鍵となる。ただ、そのフリー走行で宮田はトップから1.230秒差の21番手に終わった。

「今季はずっとクルマのセットアップで悩まされており、フリー走行はそれが大きく出てしまいました。ただ、クルマの足りない部分を修正できれば、もっと上にいけるという感覚はあり、予選ではその感覚のとおりトップ10に入るパフォーマンスで走ることができました」と、宮田はレースウイーク後の取材で振り返った。

 フリー走行のどん底からセットアップをアジャストした宮田は予選開始早々から好タイムを刻み、各車が1セット目のアタックを終えた時点での自己ベストは1分28秒108で暫定9番手につけていた。セッション後半にタイヤを履き替え、最後のアタックに入ったが、宮田がセクター1を過ぎたところでクッシュ・マイニ(ダムス・ルーカスオイル/アルピーヌ育成)がクラッシュを喫し、セッションは赤旗が掲示され、そのまま終了となった。

 赤旗提示までに5台が2セット目のタイヤで自己ベストを更新し、そのうちのひとりディーノ・ベガノビッチ(ハイテックTGR/フェラーリ育成)がポールポジションを獲得した。宮田はセクター1をベガノビッチと同じ27.9秒台で通過していたが、赤旗でアタックを止めることになり、自己ベストはセッション前半に1セット目のタイヤで記録した1分28秒108で、正式結果は10番手となった。

「予選1セット目のアタックは、クルマの足りなかった部分を補えたか、そして自分がどこまで攻められるかを確かめる走行でした。チームメイトのビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/ウイリアムズ育成)はフリー走行から高いパフォーマンスを見せていましたが、彼とのタイム差を縮め(FP:0.839秒差 予選:0.684秒差)、1セット目からトップ10に入れるところまでアジャストできたという点は自信に繋がりました」

 今季ベストグリッドかつ、予選上位10台がリバースグリッドとなるスプリントレース(決勝レース1)ではポールポジションを獲得する結果だったが「もっと上にいけるパフォーマンスを示したかったです」と、宮田。赤旗提示は宮田にとって不運な出来事だった。

「とはいえ、今季これまでの3大会に比べれば本当に大きく進歩できた予選だったと思います。ジェッダまでの3大会はクルマのパフォーマンス不足が厳しく、どうにもならない状況のなか、ドライビングでベストを尽くした上での順位でした。戦うためには、クルマのパフォーマンスを上げなければならないので、セットアップの面で『ここを直してほしい』という具体的な要望はチームにお願いしました。結果として、自分が感じていた問題箇所の影響が大きかったのだろうというのが今の印象です」

 フリー走行からの改善が、わずかに実った予選を経てスプリントレースに臨んだ宮田。ポールポジションという好位置からレースをスタートしたが、クルマのパフォーマンスレベルが低い状況に変わりはなかった。

 宮田は悪くない蹴り出しでスタートを切ったが、2番グリッドのジャック・クロフォード(ダムス・ルーカスオイル/アストンマーティン育成)が抜群の蹴り出しでトップに浮上した。その後、レース序盤は2番手をキープした宮田だったが、タイヤのデグラデーション(性能劣化)が進むにつれてペースダウンが顕著となり、後続の猛追を凌ぐことは叶わず。それでもスプリントレースでは8位までが入賞となるなか6位でチェッカーを受け、今季初入賞を飾った。

「最低限ポイントを獲得できたこと、そこだけはよかったかなと思っています」と、宮田。

「ジェッダまでと比較すれば、パフォーマンスは改善のステップを踏めています。とはいえ、タイヤのデグラデーションも他車と比べると早く起きやすく、まだまだレースペースに関しては大きな改善が必要です。ドライビングに関しては自分の感触としてはやり尽くした、という感じです。レース後にデータを見返しても、チームメイトとドライビング面で違う部分はありませんでした。ポジションを上げるにはとにかく、チームと一緒に地道にクルマのパフォーマンスを上げる必要があります」

 明けた日曜日のフィーチャーレースは2種類のタイヤコンパウンドを使用するタイヤ交換義務があるなか、10番グリッドスタートの宮田はプライムタイヤ(硬め/ソフトタイヤ)をスタートタイヤに選んだ。

「イモラは過去のデータを見ると、セーフティカー(SC)の入るリスクが少ないコースでした。そのため、無難にオプション(柔らかめ/スーパーソフトタイヤ)→プライムという戦略を採るか、リスクを背負いながらもプライムでスタートして、終盤にオプションを履いて追い上げるか、選択は悩みました。ただ、スプリントでSCが入らなかったので、賭けに出てみようと、リスクのあるプライムスタートを選びました」

 2番グリッドのセバスチャン・モントーヤ(プレマ・レーシング)がピットレーンスタートに変わり、実質9番手スタートとなった宮田は、スタートで2台をかわし一時は7番手に浮上する。その後レースペースに勝るライバル勢にかわされるも、オプションスタート勢がピットに入ると宮田は3番手に浮上した。

 ただ、オプションスタート勢がタイヤを変え、プライムスタート勢がステイしていたレース中盤にラファエル・ヴィラゴメス(ファン・アメルスフォールト・レーシング)がマシンを止めてSCが導入された。これで宮田を含むプライムスタート勢と、タイヤ交換を済ませたオプションスタート勢とのギャップは消え、プライムスタート勢は勝負権を失うことになった。その後、27周目にオプションタイヤに履き替えた宮田だったが、終盤はデグラデーションに悩まされ、16位でチェッカーとなった。

 なお、宮田は22周目にアレクサンダー・ダン(ロダン・モータースポーツ/マクラーレン育成)にオーバーテイクされる際、ダンのリヤタイヤと接触し、フロントウイングの左翼端板を失ったが「もともとペースが厳しい状況でしたので、そこから少し厳しさが増したという印象でした」と、宮田は話した。

 予選一発の改善、そして今季初入賞を通じ、状況好転へ向けた確かなステップを踏んだ宮田。とはいえ、依然としてマシンのパフォーマンス不足に悩まされていることに変わりはない。

「FIA F2は今の車両(2024年導入のF2 2024シャシー)になってから本当にセンシティブで、セットアップのスイートスポットがかなり狭い上に、タイヤのデグラデーションも厳しい、本当に難しいクルマです。だからといって僕は諦めません。チームと一緒にしっかりと、懸命に準備をして、フリー走行からいいパフォーマンスで走れるように取り組みます」

「次戦のモンテカルロはオーバーテイクが難しいコースで、予選がさらに重要になります。また、モンテカルロ戦だけは予選が2グループ制で1グループごとの走行時間も16分と短くなります。短い時間で結果を残すためにも、マシンのパフォーマンスを良い方向へアジャストし、ドライビングも含めてしっかりやっていきたいと思います」

 次戦となる2025年FIA F2第5戦モンテカルロは5月22〜25日に、モナコのモンテカルロ市街地コースで開催される。宮田のコース上での走りはもちろんのこと、ARTグランプリとともに臨む、戦える・手応えを得られるクルマ作りが実を結ぶことを願うばかりだ。

[オートスポーツweb 2025年05月20日]

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