
《対岸の家事みて涙がでる。これはみんな気持ちがわかるから》
《江口のりこさんが演じてる礼子はまさしくわたしたち。夫も上司もまったく出てこない これがまじでリアル》
SNS上で多くの女性視聴者から共感の声が湧き出たドラマ『対岸の家事』(TBS系)。初回放送はTVerでの再生回数が400万回(2025年4月1日〜4月15日)を突破した。
繊細に描かれた心情
「第1話は特に子育て世帯の話だったので、子育て世帯以外の人にはピンとこないんじゃないかと思っていたんです。でも、いざ放送してみたら、独身の方など属性関係なく、多くの人に見ていただけたのは意外でした。とてもありがたく感じています」
と話すのは、原作小説『対岸の家事』(講談社)の著者である朱野帰子先生。
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専業主婦、ワーママ、育休パパ、不妊治療中の主婦といったさまざまな立場の人物の心情を繊細かつ的確に書けるのはなぜなのか。
「私の中にあるいろんな部分を切り分けて、それぞれの立場に反映させています。
例えば、官僚である中谷(ディーン・フジオカ)というキャラクターの、“こうあらねばならない”という硬直的な考えが私にもあって、それを極端な形でストレートに表したのが彼です」(朱野先生、以下同)
専業主婦を主人公にしたワケ
ドラマを見て印象的に残ったシーンについて、
「こういうふうに描くのか、と思ったのが、第5話の体験格差のテーマ。中谷の『When life gives you lemons, make lemonade』(人生が君にレモンを与えたら、レモネードを作れ)というセリフです。レモン(=人生における困難や欠陥)をレモネード(=チャンス、良い結果)に変えるという、今ある現状を一生懸命生きていれば、プラスになるという言葉をみんな待っていたのではと思いましたね」
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『対岸の家事』を書こうと思ったきっかけについて聞いた。
「2011年ごろの話になるのですが、妊娠を機に専業主婦になった元書店員の大学の後輩がいて。彼女が子どもと児童館に行ったときに、育休中の人に『お仕事は何しているの?』と聞かれ、『家事と子育てです』と答えると『それは仕事じゃない』と言われた話を聞きました。マジョリティーのワーママを主人公にするよりも、専業主婦を主人公にしたほうが面白いのでは、と考えました」
5月13日に放送された第7話では、詩穂(多部未華子)が育児で追い詰められるシーンがある。
「私自身の体験も反映されています。子どもが乳幼児のとき育児は、2〜3年ろくに寝ていない人が高速道路を運転しているような感覚でした。すごい緊張感に襲われていたのもつらかったですし、子どもを育てるという過剰な責任感が暴走したときは普通ではない思考になり、自分ではコントロールできなくなる。
詩穂のような子ども思いの人でも子どもを道連れにして命を絶とうとするほど追い詰められてしまうというのを小説では書きたかったですし、ドラマでは多部さんの素晴らしい演技で表現してくださいました」
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子育ては関係ないから、と対岸の火事とせず、多くの人に触れてほしい作品だ。