ラリー・ポルトガルに挑戦した小暮ひかる/トピ・ルフティネン組のGRヤリス・ラリー2 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム2期生の小暮ひかると山本雄紀、3期生の後藤正太郎と松下拓未が、5月15〜18日にてポルトガル北部で開催されたWRC世界ラリー選手権第5戦『ラリー・ポルトガル』に挑戦した。
ヨーロッパでは今季初となったグラベル(未舗装路)ラリーで、小暮はWRC2クラス15位、山本は同クラス23位で完走。松下はWRC3クラス6位で完走を果たしたが、後藤は木曜のシェイクダウンで横転した影響で戦わずしてリタイアとなった。
今季2025年もポルトガル北西部の大都市ポルト近郊に位置するマトジニョスにサービスパークが設けられた今大会には、全部で50台を超えるラリー2マシンがエントリー。その多くがWRC2クラスに参戦したことで、序盤からハイレベルな戦いが繰り広げられた。
小暮と山本がラリー・ポルトガルにラリー2カーで出場するのは前年に続いて2回目だが、前回はふたりともフルデイの初日にリタイアを喫する悔しい結果に終わっている。彼らにとって今回のポルトガルはシーズン最初のグラベルイベントというだけでなく、新しいハンコックタイヤで挑む最初のラリーでもあった。
フルデイ初日の金曜にパンクやギヤボックスのトラブルに見舞われながら戦い続けた山本は、土曜に行われたロングステージのターマック区間でクルマにダメージを負い、デイリタイアを喫することに。それでも最終日に再出走し完走を果たした。
一方の小暮はSS2でクルマにダメージを負いながらも修復して競技を続行し、金曜のデイ2をクラス15番手で終える。土曜にはSS17でパンクを喫し、これが大幅なタイムロスとなってしまったが、めげずにすべてのステージを走破してWRC2クラスを15位で完走してみせた。
3期生の後藤と松下にとって今回のポルトガルは、これまで使用してきた前輪駆動のラリー4カーら四輪駆動のラリー3カーに乗り換えての初めてのラリーとなった。さらにフィンランド以外の国で経験する初めてのグラベルラリーでもあった。
速度域が高くフラットなフィンランドのグラベルと異なり、ポルトガルは路面がラフでツイスティ。そのため多くの経験を積むことが今回期待されていたが、後藤は木曜のシェイクダウンで運悪く横転してしまう。これにより彼のマシンはロールケージが損傷し、本戦に臨むことができなくなってしまった。
同じく3期生の松下は、競争が激しいWRC3クラスで好スタートを切り、一時は3番手につけるなど好走を見せていたが、クロスメンバーの破損や複数回のパンクでタイムを失ってしまう。しかし、その後のスーパーSSではWRC3クラスで自身初のステージ優勝を飾るなど速さを発揮し、最終的にクラス6位でラリー・ポルトガルを締めくくった。
「小暮と山本が忍耐強く適切なペースを見つけ、走行距離を伸ばすことができたのは良かった」と語るのは、チーフインストラクターのユホ・ハンニネン。同氏は4人のラリーを次のように振り返った。
「今回ふたりが経験したことが次のサルディニアで活かされ、ペースの改善につながることを願っている」
「後藤は残念ながら小さなミスで大きな代償を払うことになり、短いラリーウイークとなってしまった。一方の松下はコンディションに応じてクレバーに運転しながら何度か良いタイムを記録した。本当にポジティブなことだと思う」
2期生である小暮と山本の次戦は6月5〜8日にイタリアで開催されるWRC第6戦『ラリー・イタリア・サルディニア』だ。地中海に浮かぶサルディニア島北部が舞台となるラリーのステージは全体的に道幅が狭く、木や岩に囲まれた回廊を走行することとなる。また、路面は全体的に砂状のグラベルに覆われているが、その下側には岩盤や石が隠れており、コンディションの変化には注意が必要だ。さらに、この時期は気温が高くなることも多く、選手だけでなくクルマやタイヤにも厳しいラリーとして知られている。
■TGR WRCチャレンジドライバーのコメント
●小暮ひかる(GRヤリス・ラリー2/WRC2クラス15位)
「2024年のラリー・ポルトガルでは数ステージを走っただけでリタイアし、多くの経験を積む機会を逃していただけに、今回すべてのステージを走り切ることができて安堵しています」
「荒れた路面と轍の多いタフなコンディションの道を走るのは大変でしたが、それでもクルマに良いフィーリングを感じ、ドライビングの改善点を探りながらラリーを完走できたので非常に良かったです。走行距離を伸ばすことができたことで、次のサルディニアのラリーに向けて良い準備になりました」
●山本雄紀(GRヤリス・ラリー2/WRC2クラス23位)
「タフなラリーでしたが、競争力を維持しながら長いステージ距離を走ることができたのは本当に良かったです。土曜日は残念ながら少し早めに終わってしまいましたが、日曜日に焦点を切り替え、経験を積むことに集中しました」
「大きなリスクは取らずとも良いペースを維持することができたので、サルディニアに向けて良いかたちでラリーを締めくくることができたと思います。全体的には非常に多くの経験と知識を得ることができましたし、将来に役立つとても重要なラリーになりました」
●後藤正太郎(ルノー・クリオ・ラリー3/DNS)
「残念ながら、自分にとっては短いラリーウイークでした。シェイクダウンのステージ終盤、コーナーの轍で突然クルマがはね上げられ横転してしまいました。比較的低速なコーナーだったので、転倒するとは予想していなかったので驚きました」
「自分たちの身体は大丈夫だったのですが、クルマのロールケージが曲がり、ラリーをスタートすることができなくなってしまいました。非常に強いフラストレーションを感じましたが、起こってしまったことは受け入れなければなりません。そして、少なくとも事前のテストとレッキでポルトガルの道を経験することができたことを、良しとするべきでしょう」
●松下拓未(ルノー・クリオ・ラリー3/WRC3クラス6位)
「良い週末でした。金曜日の朝はクルマのセットアップにやや苦労しましたが、少し調整を加えたことで良いフィーリングが見つかり、良いタイムも記録することができました。何度かパンクを喫し、サスペンションにも問題が発生しましたが、全体的にはとてもポジティブな週末でした」
「このラリーの典型的ともいえる、さまざまなコンディションを経験することができましたし、非常にラフなラリーでクルマをケアする方法を学ぶこともできました」
[オートスポーツweb 2025年05月22日]