なぜ日本で「音声コンテンツ」は流行らないのか? 市川紗椰がその要因を分析「世界では"耳の黄金時代"が来ています」

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2025年05月23日 06:50  週プレNEWS

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J-WAVE『ニッチな学習帳』の現場にて

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「音声コンテンツ」について語る。

 * * *

目が疲れた。肩も凝った。スクリーンタイムは12時間を突破。それでも情報が欲しい、エンタメを楽しみたい、誰かの声が聞きたい......。そんなあなたに送りたいのが、「音声コンテンツ」。

世界では"耳の黄金時代"が来ていますね。アメリカではポッドキャストが企業のマーケティング戦略にまで組み込まれ、オーディオブック市場は年々成長。バラク・オバマ元大統領やポール・マッカートニーらも自身の番組を配信し、メリル・ストリープも朗読をやっているほど。日常的な情報・娯楽の手段として完全に定着しています。私自身もポッドキャストは寝る前に毎日聴くし、お犬さまとの散歩ではオーディオブックで小説を堪能してます。

しかし周りに聞いてみると。「Audible? ああ、登録だけして忘れてた......」「ポッドキャスト? えーと、アレだよね?」といったように、音声配信サービス全般は「知ってるけど使ったことない」の典型な気がする。

なぜ、日本では音声コンテンツがはやらないのか? 音声コンテンツって、目も手も使わずに楽しめる、唯一の情報エンタメ。忙しいときの"ながら作業"にピッタリだし、疲れたときに寄り添ってくれる。音声コンテンツは、人類が発明した最も地味で、最も優しいエンタメなのかもしれない。なのに、はやらない。なぜ。考えてみました。

ひとつは、通勤スタイルの違い。そもそもアメリカ人には、車で片道1時間通勤しながらトークラジオを聴く文化があった。日本では片道30分の電車通勤で、「空き時間=スマホを使う時間」になりがち。

公共交通機関中心だと、耳より目がヒマな状況が多いから、視覚コンテンツのほうが向いている。と言いつつ、不思議とYouTubeの切り抜き動画やライブ映像を耳で楽しんでる人も多いような気がするんですよね。

そこには、根本の情報消費スタイルの違いがあると思います。日本では文字情報の信頼性が高く評価される傾向があり、"読む文化"が根強い。学校でも、先生は大事なことを黒板に書きます。

対してアメリカでは、トーク文化(ラジオ、ディスカッション、ディベート)の土壌があるから、音声での情報発信・消費のほうが自然。さらに日本語は、音だけでは意味をつかみにくい語も多い。「かく」だけで「書く」「描く」「掻(か)く」「欠く」「各」「核」「角」「格」......。「耳で理解する」より「目で確認して納得する」傾向になるのもしょうがないでしょう。

"声の好み"も理由かもしれません。日本は世界でも有数の"声のプロ"がいる国。アニメやナレーション文化が豊かであるがゆえに、リスナーの耳がやたら肥えてる。「抑揚が気になる」「落ち着きすぎて逆に怖い」「ずっと話されると疲れる」など、個人のツボが細かい印象です。特にオーディオブックだと、個人の好みが大きく影響して、ちょっとしたことで「内容が入ってこない」と感じる人も多い気がする。

それでも! 音声コンテンツは素晴らしい! 地味だけど優しい! 想像力も働いてやたらと笑えたり感動できる! 今回は、これをメインで語るはずでした......。次回に続きます。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。5月からJ-WAVEでもポッドキャストでも聴ける新番組『ニッチな学習帳』がスタート!ぜひ! 公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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