「におい」は無言の評価基準──信頼を築く職場のエチケット設計

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2025年05月24日 07:30  JIJICO

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JIJICO

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あなたは、なぜ自分が「臭っているかもしれない」と気づかないのか。
それは、「におい」が視覚や聴覚と違い、自覚しにくい五感のひとつだからです。
自分の匂いに慣れてしまう「嗅覚の順応」が働き、日常の中で“におい”は意識の外に追いやられてしまいます。
その一方で、他者はあなたの「におい」を敏感に感じ取っているのです。


エレベーターの中で香る柔軟剤に癒されることもあれば、
隣に立つ誰かの“生乾き臭”に眉をひそめる瞬間もある。
においは、その人の人格や生活を印象づける「空気の名刺」です。
それは、語られず、書かれず、しかし確実に受け取られている情報なのです。


「誰かが臭う」ではなく、「自分が臭っているかもしれない」。
それは決して攻撃ではなく、自覚し、信頼を築くための第一歩です。


においの種類は大きく3つに分類されます。


1.体臭由来:汗、皮脂、加齢による変化
2.衣類由来:洗いきれない皮脂・汗・生乾き菌
3.生活臭の付着:タバコ、料理、香水の過剰使用


特に問題になるのが2番目、衣類のにおいです。
自分では「ちゃんと洗っている」のに、他人には「洗えていない」と感じられる。
それは、洗濯という行為の「結果」が、思ったほど清潔ではないからです。


では、なぜ“洗っても取れない”のか?
答えは「繊維の構造」にあります。
ポリエステルなどの合成繊維は吸水性が低く、皮脂や汗を“中に”吸着します。
洗濯しても水が届かない“臭いの巣”が繊維の奥に存在するため、見た目がキレイでも、臭いは残り続けるのです。


また、「生乾き臭」は乾燥が不十分なまま放置された衣類に雑菌が繁殖した結果です。
これは、においだけでなく「管理が行き届いていない印象」を与え、あなたの「信頼スコア」に目に見えないマイナスを刻みます。


ここで問います。
“あなたは、誰と働きたいですか?”


答えは明白です。


•身なりが整っていて
•空気を読み、周囲に配慮できて
•一緒にいて不快感がない人


そして他者も、同じ問いをあなたに対して無言で投げかけているのです。
においは、その答えに対する“最初のリアクション”になります。


では、何ができるのか?
「信頼設計」のためのにおい対策Tipsを紹介します。


【TIP 1】服の素材を見直す
吸湿性・通気性のある綿素材をベースに。
ポリエステルやアクリルは便利ですが、臭いが残りやすい傾向があります。インナーに消臭機能素材を活用しましょう。


【TIP 2】洗濯方法をアップデート
・60度前後の温水で洗えるなら熱洗浄が効果的
・酸素系漂白剤を使用


【TIP 3】乾燥と保管にも気を配る
・乾ききる前に収納しない
・クローゼットに炭やシリカゲルを設置


【TIP 4】自分の体も整える
・香りのケアは“無香または微香”を選ぶ
・足、首、脇など、においが出やすい部位のケアは衣類以上に重要


あなたの香りは、あなたが発する「無言の自己紹介」。
体臭対策や洗濯方法は、エチケットであり、社会的スキルです。


臭いは、信頼の設計図に“明文化されていないが、確実に存在する線”です。その線を美しく引けるかどうかが、人間関係の輪郭を整えます。


“臭い”は、信頼を壊す音のないノイズであり、気づかれず、語られず、しかし確実に空気を変えていきます。


他人の空気を意識できる人間は、どんな職場でも必要とされる存在です。
そのスタート地点が、匂いの配慮であることを、私たちはもっと意識してよいはずです。


身だしなみとは、自分の評価のためだけにあるのではありません。
あなたの香りが、職場という「空気の共同体」の一部になること。
それこそが、現代の社会設計に必要な“やさしさ”なのです。



(上野 由理・美脚専門家)

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