電車の床に落ちたペットボトルを誰もが見て見ぬふり…蹴り飛ばした中年男性に、若者が思わぬ一言

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2025年05月24日 09:21  日刊SPA!

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※写真はイメージです。
 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
 今回は、電車内の空気が張りつめたように感じられたという2人のエピソードを紹介する。

◆床に落ちたペットボトルを誰もが見て見ぬふり

「夕方の電車内は、ほどよく空いていて、静かな雰囲気でした」

 井上浩司さん(仮名・40代)は、その日少し早めに仕事を切り上げ、帰宅のために電車に乗っていた。すると突然、“コロン……”と音を立てて、空のペットボトルが転がってきたという。

「おそらく誰かの荷物から落ちたと思いますが、誰も拾おうとしませんでした。視線は送るのに、誰も手を出さない。電車ってそういうもんですよね」

 ペットボトルはゆっくりと転がり続け、ある中年男性の足元で止まった。するとその男性が、思いがけない行動に出る。

◆転がってきたペットボトルを蹴った男性に、若者が思わぬ一言

「男性は舌打ちすると、いきなりそのペットボトルを蹴り飛ばしたんです。ペットボトルは勢いよく飛んで、斜め向かいの席に座っていた女性の足元に当たってしまいました」

 女性は驚いて声を上げたが、男性は無反応のまま。その場にいたほかの乗客も沈黙したままで、車内には重苦しい空気が漂っていたそうだ。

 しかしその直後、女性の隣に座っていた若者が立ち上がり、イヤホンを外して男性の前に歩み寄ったのだ。

「コントロールできないなら蹴んなよ! 人に当ててなにも言わないなんて、一番ダサいヤツっすね!」

 若者の言葉が発せられると同時に、車内はピリピリした空気に包まれた。男性は何も言い返せず、視線を逸らしながら、次の駅で降りたという。

「若者はペットボトルを拾って、女性に『ひどかったですね』とだけ言い、静かに席に戻りました。誰も口にはしませんでしたが、車内は、まるで“拍手が沸き起こったかのような”一体感になっていました」

◆横入りに対して「ちょっと待て!」という一言が発端に

 久しぶりに電車を利用することになった松井翔さん(仮名・60代)は、駅のホームの先頭に並び、到着を待っていた。

「扉が開いた瞬間、大柄な男性が列に並ばず、いきなり横から入ってきました。そして、私を押しのけるように電車に入ろうとしたんです」

思わず「ちょっと待て!」と注意した松井さんに対し、男性は「なんじゃ!」と威嚇。そのまま口論に発展してしまった。

「男性が『降りろ!』と言い出したので、話し合いのためにホームへ降りましたが、落ち着いて話せるような状況ではありませんでした」

 男性は高身長で、松井さんに向かって上からつかみかかろうとしたとのこと。松井さんはとっさに身をかわし、下から相手の首元を押さえて応戦した。

「なんとか押さえ込みましたが、男性は激しく抵抗を続けたんです。これは危ないと感じて、“これ以上動いたら危険です”という思いを込めて警告しました」

「頭を押さえますよ!」

◆かたちだけの謝罪に誠意が感じられない

 この一言にようやく収束しかけたのだが、今度は「警察(鉄道警察隊)に行く」と言い出したため、松井さんもそれに応じた。

 鉄道警察隊は、駅構内や車両内のトラブル、犯罪の予防や検挙などに対応する警察の専門部署で、大都市の主要駅に常駐している。

「警察隊の担当者は、まず男性に私への謝罪を促しましたが、その謝罪の仕方がひどくて、まったく誠意を感じられませんでした」

 男性の態度に担当者も苦笑いだった。松井さんは「これ以上関わっても時間の無駄だ」と判断。その場を後にし、後続の電車に乗り込んだ。

「この年になって、まさか電車で口論やもみ合いになるとは思いもしませんでした。久しぶりの電車が、忘れられない一日になってしまいました」 

 電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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