写真連続テレビ小説『あんぱん』(NHK)では、ヒロインの朝田のぶ(今田美桜)の末妹・メイコ役を好演。アニメ映画『すずめの戸締まり』、映画『ミステリと言う勿れ』、実写版『【推しの子】』など話題作への出演が続き、耳目を集める若手俳優の原菜乃華。
6月6日公開の最新主演映画『見える子ちゃん』は、累計発行部数330万部突破の同名マンガを原作とする、青春ホラーエンターテイメント。異形の霊をひたすらに無視する女子高生・四谷みこ役を熱演しているが、実は本人は怖いものが大の苦手だとか……。そんな初めてのホラー作品への挑戦について聞いた。
◆「ホラー映画を見切ったことがない」
――最新主演映画『見える子ちゃん』が公開されます。もともと怖いものは苦手だそうですね。
原菜乃華(以下、原):そうなんです。ホラー映画を見切ったことがないくらいで。
――原さんが演じた四谷みこは、霊が見える女の子ですが、本作への出演が決まったときはどんな気持ちでしたか?
原:原作のマンガをもともと見させていただいていて、すごく好きな作品だったので、“出たい”という思いは強かったです。それに、コメディ要素も強い作品なので、完璧にホラーとも言い切れないというか……“これなら私でも!”という気持ちがありました。
――初めて脚本を読んだときの感想を教えてください。
原:もちろん原作と違うところはあるんですけど、独特のテンポ感だったり、コメディとホラーのテンポがごちゃまぜになったシュールな雰囲気だったりがそのまま表れていて、「これは『見える子ちゃん』の空気感だ!」と一瞬でわかるような脚本だったので、撮影をするのが楽しみでした。間違いなく『見える子ちゃん』の要素をしっかり受け継いだ実写化だなと思いましたし、原作のいちファンとしてもそれがうれしかったです。
◆いつもの整体で言われた恐怖の一言
――ちなみ、原さんご自身は霊感やオカルト体験を持っていますか?
原:霊感ゼロなんですけど、怖い体験したことが1回だけあるんです。とある心霊スポットに行った翌日に、いつも通っている整体に行ったら「背中に女の子が憑いてる」って言われたんですよ。
――ガチのやつじゃないですか! その心霊スポットにはお仕事で行ったんですか?
原:もちろんです! 撮影で行きました!プライベートでは絶対に行かないです!
――映画にもたくさんの霊が出てきましたが、霊の見え方について参考にしたものはありますか?
原:う〜ん、特にはないですね。というのも、CGではなくて、霊役の方たちがそのままの格好でそこにいらっしゃったので。
――それで、あの迫真の演技なんですね。
原:はい、だからしっかり怖がっていました。特に、白塗りのツトムくんという男の子がすごく怖かったですね。撮影の合間に、私の膝の上に座って、一緒にお話ししたり、歌を歌ったりしていてすごくかわいかったんですけど、あの白塗りメイクのまま近くでニッと笑うと、心臓が一瞬ヒヤッとするんですよね(笑)。
――撮影現場におどろおどろしい雰囲気はあったのでしょうか。
原:それが全然なくって。“本当にホラーの撮影してるの?”っていうぐらい、和やかな現場でした。
◆高校時代のお昼休みみたいな撮影現場
――演じる上での難しかった部分はありますか?
原:私が演じたみこは、霊が見えることを周囲に隠しているので “(霊を)怖がっているけど、怖がっていることがバレてはいけない”というお芝居をしなくてはいけなかったんですね。ただ、映画を観ている人には、ちゃんと恐怖の感情も伝えないといけない。その塩梅が難しかったです。
――そこは監督としっかり話し合って作っていたのでしょうか。
原:はい。最初から最後まで細かく演出をつけてもらって、話し合いました。監督からは「お客さんが見ている景色と、みこから見えている景色は同じだから、目線の少しの動きやまばたきのような細かいところで伝わる。安心して抑えてもらって大丈夫だよ」と言っていただいて、それでなんとなく芝居の方向性が決まったので、良かったなと思います。
――中村義洋監督は、『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズや『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』など、心霊系の作品もたくさん撮られていますが、ホラー作品ならではの撮影技法で印象的だったものはありましたか?
原:今回の映画は、大きな音で「バン!」みたいなものもないですし、どちらかというと青春やコメディにフォーカスしてるので、いわゆる“ホラー作品”とはまたちょっと違った感じです。
――演じる側としても、青春ものの映画の感覚が強かったんですか。
原:そうかもしれないです。現場も同年代の方が多かったので、本当に学校の休み時間みたいな感じで和気あいあいとしていました。「今日はどれが美味しい?」「どれにする?」ってみんなでお弁当を選んで控え室で食べたりするのが、高校時代のお昼休みを思い出しました。
◆虫を避けるときも先生はかっこいい
――劇中でも、久間田琳加さんが演じた百合川ハナ、なえなのさんが演じた二暮堂ユリアとの友情は見どころかと思います。
原:本当にふたりがハナとユリアでよかったなと思っています。群馬県で泊まり込みの撮影をしていたんですけど、スタッフさんも含めて一緒にごはんに行ったりしてすごく楽しかったですし、ひとりだけのシーンのときにちょっと寂しくなっちゃうぐらい、おふたりがいることで青春ものを撮っているんだなって感覚がありました。
――原さんが演じた四谷みこについては、どんな印象を持ちましたか?
原:みこは、周りの人への愛がすごく深い子だなと思いました。そこまで感情が表に出るようなキャラクターではないんですが、常に「人のために」を原動力に動いている子で、友だちや誰かを守るためにいろいろと大胆な行動を起こしていくんですよね。そこまでの度胸を私は持ち合わせていないので、そこがすごくかっこいいなと。
――みこが通う高校に代理担任として赴任してくる謎めいた教師・遠野善役としてSixTONESの京本大我さんも出演されています。共演の感想はいかがでしたか?
原:撮影日数は他の方と比べてそこまで多くなかったんですが、すごくたくさんお話ししてくださって、面白かったです。虫の多い場所で撮影をしていたんですけど、京本さんは虫がすごく苦手みたいで、すごく俊敏にかっこよく虫を避けていて、“虫を避けるときも先生はかっこいいんだな”と思いながら見ていました(笑)。
――怖がっているのに、かっこいいんですね。
原:本当にかっこよかったです。私側の方の壁に虫がいたときに「あ、いる!」って言ったら、すごい怖がりながらもパッと追い払ってくれて。そのときに「先生〜!」って思いました(笑)
◆ホラー以外にも「怖いものが本当にたくさんあって」
――作品全体の見どころを教えてください。
原:本当に今までに見たことがない作品だと思います。コメディ、青春、ヒューマンドラマがすべて入ったホラーというか(笑)。すごく懐かしい気持ちになったり、笑ったと思ったら、次の瞬間には泣いていたりして、100分で本当に目まぐるしくいろんな気持ちになるような作品なので、ホラーというよりも、おばけ屋敷に遊びに行くようなエンターテイメント作品なので、デートにもぴったりだと思います。
――怖いものが苦手な原さんですが、おばけ屋敷は大丈夫なんですか?
原:それも苦手です(笑)。怖いものが本当にたくさんあって、私も虫も苦手だし、おばけも怖いし、あとジェットコースターにも乗れないですし。
――遊園地はあまり楽しめなさそうですね。
原:遊園地自体は好きだし、楽しいは楽しいんですけど、アトラクション系はちょっと苦手ですね。でも、それがお仕事だったらやるしかないので、そのときはがんばります(笑)。
◆両親のデートスポットを聖地巡礼
――ちなみに、原さんの今年の目標は「脱・出不精」だそうですが、いまのところ計画は順調ですか?
原:順調です! 歌舞伎鑑賞や陶芸にも挑戦しましたし、行ってみたい博物館もいっぱいあって、このあいだは「目黒寄生虫館」にも行きました。寄生虫が好き……というか、すごく興味があるんですよね。だから、めちゃくちゃよかったです。ちなみに、『目黒寄生虫館』は両親の2度目のデートスポットだったそうなので、個人的には聖地巡礼みたいな気持ちもありました(笑)。
――忙しいなかでも、アクティブにお出かけをされているんですね。
原:休みの日にダラダラしてしまって、家から出ないことが多かったんですよね。お仕事のときは動けるんですけど、休日は体力を温存するために全然家から出られなくなっちゃっていて。でも、行きたいところも、食べたいものも、体験したいこともたくさんあるから、今、死んだら後悔するなとふと思ったんです。だから、「脱・出不精」を目標に、やりたいことを書き出してひとつ一つ潰していっています。今年は、いろいろなことを経験していこうと思っています。
――ちなみに、今年の3月には原さんが所属するトライストーン・エンタテイメントが開催した運動会(『Tristone Fan fes 2025〜UNDOKAI〜』)にも参加されましたよね。
原:はい。本当に素敵な事務所に所属させていただいているんだなって、しみじみ感じました。みなさん本当に面白くて、周りをすごく気遣ってくださって。そういう方たちが先輩として近くにいてくださる環境はすごくありがたいし、学びがあるなと思いました。ただ、運動の方では足を引っ張ってしまったので、もし次があるなら、そのときは戦力になれるように今からジムに行かなきゃなと思っています。実際に、いくつか体験レッスンには行っていて、ちょっと3日坊主感があるんですけど、続けられるようにがんばります!
【原菜乃華】
2003年、東京都生まれ。2009年に子役として芸能活動を開始。2022年に映画『すずめの戸締まり』でヒロインに抜擢され注目を集める。放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』ではヒロインの妹役を好演。累計発行部数330万部突破の同名コミックの実写化となる主演映画『見える子ちゃん』が6月6日より公開。ある日突然、霊が見えるようになってしまった女子高生・四谷みこ(原菜乃華)が選んだのは「無視する」こと。霊たちに見えていると悟られないよう平静を装うみこと霊たちの日常がコメディタッチで描かれている
<撮影/鈴木大喜 取材・文/森野広明 ヘアメイク/馬場麻子 スタイリング/山田安莉沙 衣装協力/EZUMi、mysha、enn.、Pearl for Life (c)2025『見える子ちゃん』製作委員会>