「23歳で“50-50”の可能性も」大谷翔平超えの貢献度…MVP候補「PCA」の衝撃実力

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2025年06月10日 15:51  日刊SPA!

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「Chicago Cubs」公式Xアカウントより引用
 今季のメジャーリーグは、日本人選手が所属するチームが軒並み地区で上位を争っている。
 特にナ・リーグはその傾向が顕著だ。東地区は千賀滉大がいるメッツが、中地区は鈴木誠也と今永昇太のいるカブスがそれぞれ首位に立ち、西地区も大谷翔平、山本由伸らがいるドジャースと松井裕樹のパドレスが熾烈な首位争いを演じている。今季まだ出場がないがダルビッシュ有もパドレス所属だ。

◆MVP争いは今季も大谷翔平が主役に?

 そんなナ・リーグにおいて、今季もMVP級の成績を残しているのが大谷である。これまでエンゼルス時代に2度(2021、2023)、ドジャースに移籍した1年目の昨季もリーグMVPに選出されている。今季も“普通にプレーができれば”、3年連続4度目のMVP受賞は濃厚と言っても過言ではない。
 実際、打棒を爆発させた5月はナ・リーグの月間MVPを受賞。6月に入ってやや本塁打のペースを落としてはいるが、もし現時点でMVP投票が行われたとすれば、多くの1位票を獲得するのは間違いない。

 ただ昨季のように満票での受賞とはならないだろう。なぜなら大谷を凌ぐ成績を残している新たなライバルがいるからだ。

◆MVPの鍵を握る“WAR”という指標とは

 MVPとはMost Valuable Playerの略で、日本語では最優秀選手と訳される。稀に投手が選ばれることもあるが、基本的にはその年にもっとも活躍した野手が選ばれる。

 MVPを選出するうえで近年もっとも重視されているのが、勝利の貢献度を測る「WAR」という数値だ。メジャーリーグでは主に「rWAR」と「fWAR」の2種類が用いられるが、前者はBaseball Referenceが、後者はFanGraphsがそれぞれ公表しているもの。両者の算出方法に微妙な違いはあるが、今回はfWAR(以下WAR)の方を参照する。

 日本時間9日現在、ナ・リーグのWARトップ5は以下の通りだ。

1位 3.7:ピート・クロウ=アームストロング(カブス)
2位 3.3:大谷翔平(ドジャース)
3位 3.0:コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)
4位 2.9:フランシスコ・リンドーア(メッツ)
5位 2.9:ポール・スキーンズ(パイレーツ)

 大谷は6月に入ってやや調子を落としているにもかかわらず2位を維持。ちなみにrWARではスキーンズが2位に入り、大谷は僅差の3位である。

◆PCAが覚醒!打撃も開花した若きスター

 ナ・リーグでトップに立っているのは、鈴木と今永の同僚でもあるカブスのクロウ=アームストロング。左投げ左打ちの外野手は、今年3月の東京シリーズでも話題になった。「PCA」の異名を持つ選手といえば、思い出すファンもいるかもしれない。

 PCAことピート・クロウ=アームストロングは、カブスの一員として来日した東京シリーズで、2試合に先発出場するも7打数無安打、3三振。結果を出せなかったが、三振を喫した際に悔しさを前面に出したり、常に全力疾走したりする姿が、日本のファンの心を鷲づかみにした。

 出場した5人の日本人選手以外で、もっとも大きな歓声を浴びたのがPCAだった。東京ドームには幾度となく“PCAコール”が鳴り響いたのを記憶しているファンも多いだろう。

 今季でメジャー3年目を迎えるPCAは、今年3月の帰国直後に23歳になったばかり。昨季は守備と走塁でメジャー随一のパフォーマンスを見せていたものの、.237の打率が示す通り、打撃はまだ粗削りだった。

 ところが、今季は開幕直後こそ不振が続いたが、4月中旬のドジャース戦で今季1号と2号を放ち覚醒。打率は3割にこそ届いていないものの、一気に課題とされた打撃の才能を開花させ、WARにおいて大谷にセーフティーリードをつけている。

◆守備と走塁で圧倒的な存在感を放つPCA

 先述したように、PCAの最大の売りは守備と走塁。特に天性のスピードを生かしたセンターの広い守備範囲はメジャーでも1、2を争う。両リーグトップを誇る刺殺数が何よりの証拠だ。
 おまけに肩の強さもメジャーで5本の指に入るレベル。補殺数はまだ3個にとどまっているが、PCAの強肩を恐れて走者が進塁をあきらめる場面も多い。

 そして走塁面でも、65試合ですでに21個の盗塁を成功させており、失敗は3回だけ。成功率もリーグ上位である。もちろんトップスピードの速さも折り紙付きだが、何より際立っているのが走塁技術だ。

◆「50-50」の可能性も

 このようにPCAは、「走」と「守」においてメジャーでもトップレベルのインパクトを残しているが、今季は打撃もそれに追いつく勢いである。打率こそ.277と大谷に比べるとやや低いが、本塁打の数は昨季の10本をすでに大きく上回り、すでに17本に到達。

 ここまでの本塁打と盗塁の数をシーズン162試合に換算すると、「41本塁打×51盗塁」。つまり、後半戦にかけて本塁打のペースを上げていくことができれば、大谷に次ぐ史上2人目の「50本塁打×50盗塁」も視野に入るというわけだ。

 もし23歳にして大谷と同じ偉業を打ち立てれば、間違いなくスター候補から“候補”の2文字は外れるだろう。そして、PCAがたとえ「50-50」に達しなくとも、守備での貢献度を考えれば、大本命・大谷からMVPを奪取する可能性はあり得る話だ。

 両親ともに俳優という芸能一家に育ったPCA。大谷を脇役に押し退け、23歳にしてナ・リーグの“主演男優賞”に輝くことになるのだろうか。

文/八木遊

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

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