「白ワンピに肉球の跡が…」美容室で“犬を膝の上に乗せられた”潔癖女性の悲劇

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2025年06月10日 16:31  日刊SPA!

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 日系エアラインのCAから六本木のクラブママを経て作家となった蒼井凜花が、実際に体験した、または見聞きしたエピソードをご紹介。今回は「衛生面の価値観」についてお届けする。
◆美容室で犬をひざの上に乗せられ…

 私はかなりの潔癖症である。例えば、帰宅したら即手洗い・うがいを行う。

 バッグ類は基本、地べたに置かない。地べたには目に見えない雑菌、吐しゃ物、犬のふん、鳩の落とし物、無数のバイキンがうようよしているのだ。他人が駅のホームにバッグを直置きする姿を見た日には、思わず除菌シートを手渡したくなる。

 そんな私に、ある日事件が起きた。場所は行きつけの美容室である。カットが終わって髪も整い、仕上げのスタイリングを受けていたときのこと。エントランスには、可愛いトイプードルを連れた若い女性がいた。どうやらサロンのシャンプーを買いに来たらしい。

 赤い洋服を着たトイプードルはふわふわで、お客さんやスタッフに大人気。「可愛い〜」「抱っこしていいですか?」と、はしゃぐ声が聞こえてきた。

 飼い主の女性も上機嫌だ。そして、担当の男性美容師が、さりげなく私に聞いてきた。

「蒼井さんは、犬好きですか?」

「ええ、好きです」

 そう答えた直後、彼はエントランスに向かい「ちょっとお借りします。あちらのお客さまもワンちゃんが好きなんですって」と、その犬を抱き上げ、私のひざの上にポンッと乗せた。

 そのときの私の洋服は白のワンピース。クロスも外して、まさに仕上がった直後である。よりにもよって「土足の犬」、そして「白ワンピのひざの上」だ。

◆土足で膝に乗られて心の中で絶叫

(うそでしょ、土足で?)

 私は心の中で絶叫した。しかし、「汚れるからやめて」と言いかえす勇気はなく、心の中で泣きながら笑顔で犬を撫でた。人懐っこくて可愛いワンコだが、結果、白いワンピースにはうっすら肉球の足跡が……。

 そのとき、私は理解した。「ペット好きな人は、足の裏の汚れは意外と気にしないのだ」と。これはある意味、文化や価値観の違いかもしれない。

◆ホテルのカーペットは「土足ゾーン」なのに…

 実は、これに似たことが、元カレとの旅行中にもあった。

 大阪の外資系ホテルでの一夜。彼がシャワーを浴びてバスローブ姿で出てきたまでは良かったが、ふかふかのカーペットの上を、なんと裸足で歩いてきたのだ。

 この恐怖、ご理解いただけるだろうか。高級カーペットだろうと、所詮は「土足ゾーン」。ハイヒールに革靴、何百人もの足が踏みしめたバイキンのホットスポットである。

 雑菌、吐しゃ物、犬のふん。見えない汚れのオンパレードなのに……。

◆彼が筆者に言った“驚きの言い分”

 しかも、彼はその足で私と同じベッドに入ろうとした。私はさすがに悲鳴をあげてしまった。

「ごめんなさい、もう一回シャワーで足を洗って。それに、歩く時はスリッパを履いてほしい」

 彼は、私が潔癖症だということを知ってはいるが、面倒くさそうにシャワールームに向かう。

「ちょっと神経質すぎないか?雑菌を排除すると、かえって免疫力が落ちるぞ」「ふかふかのカーペットを裸足で歩くから気持ちいいのに」と文句たらたら。

◆衛生面での価値観の違い

 筆者は冷静に、「アナタの気持ちも十分わかる。でも、私はその足で同じベッドに入れるほど強くないの。ごめんなさい」と頭を下げた。

 彼は理解してくれたが、世の中には汚れや雑菌に対して気にしない人がこんなにもいるのかと驚いてしまう。

 育った環境なのだろうか。見えない雑菌を「無いもの」として処理してしまうのか。万が一、小さな傷口から雑菌が入り、重大な病気を引き起こすかもしれない——。そんな想像力はないのだろうか?

 衛生面での価値観の違いで、人間関係や男女関係が壊れる場合もあるだろう。見えない汚れをどう捉えるかで、信頼感や愛情の温度が見えてくるのかもしれない。

 あなたは「見えない汚れ」とどう付き合っていますか?

文/蒼井凜花

【蒼井凜花】
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。

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