画像提供:マイナビニュースアイ工務店は5月20日〜21日、京都大学ならびに奈良女子大学と共同で実大耐震性能検証試験を実施。今回は、耐震性能検証試験ではあまり行われることがない、スキップフロアおよび外張り断熱工法を採用した耐震等級3の木造住宅における耐震性能を検証した。
今回の試験では、「スキップフロア」「外張り断熱工法による高い断熱・気密性」「耐震等級3の強固な構造」「制震ダンパーによる揺れの抑制」を組み合わせた木造住宅の耐震性能を、実際の住宅規模の建物を用いた実大振動試験として実施。
試験は、京都大学の中川貴文 准教授、並びに奈良女子大学の角田功太郎専任講師の監修のもと、茨城県つくば市にある「国立研究開発法人 土木研究所」にて行われ、大地震時の建物の挙動や損傷の有無を詳細に分析した。
試験の結果を受けて、中川准教授、角田専任講師は以下のとおり考察している。
○京都大学 生存圏研究所 中川貴文准教授のコメント
【スキップフロアを採用した木造住宅における耐震性能の検証結果と考察】
試験の結果、震度7の揺れを複数回与えても損傷や変形は全く見られず、十分な耐震性が確認できました。今回のように、スキップフロアでも耐震性が確認できたということは、今後自由設計を進める上でも耐震性が担保されたと言えます。
また、実験の前にPC上でスキップフロアや外張り断熱を数値化しシミュレーション(解析)を行いましたが、その想定数値と実際の実験の数値がほぼ同じでした。これは、今後の設計で耐震性を想定して家を作ることができるということ、つまり「耐震性をコントロールできる」ということであり、これが今回の実験の意義として非常に大きいと考えています。
【外張り断熱工法を採用した木造住宅における耐震性能の検証結果と考察】
試験の結果、外張り断熱やバルコニーを設置することで、同じ耐震等級でもそれ以上の強さを発揮することが確認できました。地震から家を守るには家を硬くすることが重要ですが、この「硬さ」を住宅で実現するには、耐力壁の確保を前提とし、腰壁や垂れ壁、2階のバルコニーや外張り断熱などの「余力」も大きく影響します。今回の試験体でも、外張り断熱やバルコニーを設置したことで、さらに耐震性が増したと考えられます。
○奈良女子大学 生活環境学部 角田功太郎専任講師のコメント
今回の試験では、試験体がほとんど変形せず、損傷もごくわずかで、想定以上に耐震性能が高いことが確認できました。特に、スキップフロアの耐震性が心配でしたが、損傷は全く見られず、しっかりと耐震設計されていればスキップフロアがあっても大地震に十分耐えられることが実証されました。
また、地震の揺れが大きくなるにつれ制振ダンパーがしっかりと効果を発揮することも分かり、耐震性の余力があると感じました。その余力の一部には、外張り断熱による構造強化の効果も大きく関わっていると考えられます。
なお、アイ工務店は今後、「今回の成果を今後の技術開発にも活かし、関係各所と協力のもと『安心・安全・快適』な耐震住宅の開発を推進し、建築業界における耐震住宅の技術革新に貢献していく」という。(CHIGAKO)