有価証券報告書の株主総会前開示が急増=投資家保護、開催後ろ倒しも―上場企業

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2025年06月12日 08:02  時事通信社

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時事通信社

 投資家保護の観点から、株主総会前に有価証券報告書(有報)を開示する上場企業が増えている。金融庁は総会前の開示を求めており、2025年3月期決算の企業は半数以上が応じる見込み。株主に十分な判断時間を確保するため、総会の開催時期を後ろ倒しする企業も出始めた。

 金融庁が11日公表した資料によると、3月期決算期の上場企業2262社のうち、1241社が総会前に有報を開示する予定だ。前期は全体の1.8%だったが、今期は5月末時点の集計で54.9%まで急増。加藤勝信金融担当相は今年3月、全上場企業に対して、総会の前日から数日前に有報の提出を検討するよう要請していた。

 有報は金融商品取引法に基づく資料で、事業の状況や役員報酬など株主の議決権行使に役立つ重要な情報が記載されている。決算日から3カ月以内に開示する必要があるが、以前は総会当日から3日後までに提出・開示する企業が大半だった。

 金融庁は総会の3週間以上前の開示が望ましいとの立場だ。レンズ大手HOYAは6月26日に総会を開催予定で、開示は3週間前に済ませた。ただ、総会前に開示予定の企業のうち、1日前の開示が6割以上を占めるのが実情だ。

 総会日程を遅らせる方法もある。半導体製造装置大手のアドバンテストは27日の総会に定款変更を諮り、今後は7月下旬から8月上旬に開催したい考え。東証グロース上場のソラコムも開催時期を1カ月ほど遅らせるため定款を見直す。

 財界関係者からは「総会の日程は一種の社会慣行であり、変えるのは難しい」との声も聞かれる。投資家保護と事務負担の増大との間で板挟みになる上場企業も多く、着地点を見いだすにはまだ時間がかかりそうだ。 

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