小栗旬・松坂桃李・池松壮亮・窪塚洋介の共演映画『フロントライン』に拍手。最前線で未知のウイルスと闘った人々の素晴らしさを伝えたい!

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2025年06月13日 00:30  Pouch[ポーチ]

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【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、小栗旬さん、松坂桃李さん、池松壮亮さん、窪塚洋介さんという豪華キャスト共演が話題の映画『フロントライン』(2025年6月13日公開)です。試写で鑑賞いたしましたが、エンタテインメントとしての要素を盛り込みつつも、誠実で硬派でとてもいい映画でした。

では、物語から。

【物語】

2020年2月、横浜に入港した豪華客船から新型コロナウイルスの患者が確認され、感染は瞬く間に拡大。100人を超える乗客が症状を訴えていました。そんな中、出動を要請されたのは災害派遣医療チームDMAT(ディーマット)。

対策本部ではDMATを総括する結城(小栗旬さん)と厚生労働省(以下、厚労省)の立松(松坂桃李さん)が対応。船内では、結城と旧知の医師・仙道(窪塚洋介さん)が指揮を取り、DMAT隊員の真田(池松壮亮さん)ら医師と看護師が患者の対応にあたっていました。

未知のウイルスと対峙することになった彼らですがウイルスは手強く、困難を極めるのです。

【忘れられない豪華客船 ダイヤモンド・プリンセス号】

ダイヤモンド・プリンセス号に新型コロナウイルスに感染した乗客が乗船していたことが発覚したニュースは、当時、毎日報道されていたから知っている人も多いと思います。

─────あのとき、船内では何が起こっていたのか。

本作は、当時のダイヤモンド・プリンセス号の関係者、DMAT、厚労省、自衛隊、消防署、警察、クルー、乗客に取材を重ねて作り上げたといいます。フィクションではあるものの、実話をベースにした部分も多いと思います。

なぜならこの映画にはDMATはじめ、船内で踏ん張って闘い抜いた人たちにしかわからない心情が描かれており、彼らの心に寄り添った物語だからです。

【本作を輝かせる4人の男たち】

船内で起こったことを描いていますが、見せ場を作るために派手な演出をしたりすることはなく、DMATのメンバーが粛々と任務にあたっている姿を映し出しています。目の前で起こることに悩み、苦しみながらも真摯に対応していく姿に見ているこちらは胸を打たれます。この感動はメインの4人の俳優たちの個性が際立っていたことが大きい!

ということでで、4人のキャラクターのプロフィールを簡単に紹介します。

▪️結城英晴(小栗旬):
DMATのリーダーで総指揮を取る。愛想がいいタイプではないけれど、ワンマンじゃないところが魅力的。人の話をちゃんと聞くし、助けを求めることもできる真面目で誠実な人柄。

▪️立花信貴(松坂桃李):
厚生省から派遣されてきた役人。ポーカーフェイスで情に流されないので、DMATと敵対する存在かと思いきや、調整役の結城を巧みにサポート。いざというとき頼りになる!

▪️真田春人(池松壮亮):
困っている人を放って置けないタイプ。船に行くことを即決した彼に、妻が「行かないでと言ってもあなたは行くよね」と言うのですが、それが彼の本質を物語っていました。

▪️仙道行義(窪塚洋介):
常に冷静で “今、何をすべきか” をいちばんわかっている人。調整役の結城が戸惑っていると「結城ちゃん」と親しみを込めて声をかけつつ、方向性を示すことができる

それぞれのキャラを演じる俳優たちは、役の性質をしっかり掴み、自分の立ち位置で個性を打ち出していく絶妙のパフォーマンス。「俺が!」とスタンドプレーをする人はいないから、次第にチームとしてまとまっていくんです。本当にかっこよかった!

【人を救うために闘う人間たちへの差別】

DMATの仕事はウイルス陽性患者を病院へ送り、陰性だった乗客は隔離期間を終えたら帰宅させることですが、これが本当に難しいことだった、というのが映画を見るとわかります。

治療法のわからない未知のウイルスのため、受け入れ先の病院は見つからない、間違った報道によりクルーズ船の乗客やスタッフへの差別が生まれてしまう、など問題は山積み。

看護師の女性はニュースにチラリと映ってしまったことがきっかけで保育園からNOを突きつけられ、子どもを預けられないから船内の任務が続けられない……という厳しい場面も。真田医師も妻に対し「船で治療にあたっていることは絶対に誰にも言わないでくれ」と言います。だって、言ったら最後。家族が猛烈な差別にあってしまうからです。

人を助けるという尊い任務なのに、差別を受けるなんて理不尽!と思いつつも、未知のウイルスが恐怖だったことは事実。当時は自分もコロナが怖くて外出時はピリピリしていたことなどを思い出してしまいました。

またダイヤモンド・プリンセス号を取材するテレビクルーに対し、ネガティブな情報の方が視聴率を稼げると暴走していたところにざっくりメスを入れたのもよかった。結城がテレビ局の記者(桜井ユキさん)に「あなたたち、面白がってない?」と言うんですよ。核心をついたこの一言は強烈でした!

新型コロナ感染拡大の初期を思い出したり、船内で起こっていたドラマに没入したり、俳優たちの素晴らしい演技に見入ったり……。見どころ多すぎな『フロントライン』。最前線で闘った人たちの姿に勇気をもらってください!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©2025「フロントライン」製作委員会

『フロントライン』
2025年6月13日より全国ロードショー
監督:関根光才
脚本:増本淳
企画・脚本・プロデュース:増本淳
出演:小栗旬
松坂桃李 池松壮亮
森七菜 桜井ユキ
美村里江 吹越満 光石研 滝藤賢一
窪塚洋介
配給:ワーナー・ブラザース映画

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