実話をもとに描く『木の上の軍隊』伊江島で中学生招いた特別試写会開催、沖縄先行公開スタート

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2025年06月13日 10:37  ORICON NEWS

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映画『木の上の軍隊』作品の舞台である沖縄・伊江島の中学生を招待して特別試写会を実施。平一紘監督と主題歌を担当したAnlyも出席
 1945年の沖縄・伊江島で実際に起きた出来事をもとにした映画『木の上の軍隊』が本日(6月13日)より沖縄県内で先行公開された。公開前日の12日には、作品の舞台であり、撮影地のひとつでもある伊江島・伊江村のはにくすにホールで地元・伊江中学校の生徒104人を招いて特別試写会が実施された。

【動画】映画『木の上の軍隊』予告編

 本作は、伊江島で激しい攻防戦が展開される中、2人の日本兵がガジュマルの木の上に身を潜め、終戦を知らずに潜伏生活を続けた約2年間を描く。原案は作家・井上ひさしさんが手がけた舞台作品で、今作は全編沖縄ロケで撮影。伊江島に実在するガジュマルの木の上での撮影も行われた。

 試写会には、沖縄出身の平一紘監督、原案者の娘でこまつ座社長の井上麻矢プロデューサーのほか、撮影中に戦没者とみられる約20人分の遺骨を発見した造園スタッフ・知念洋輝氏、さらに「ニーパンガズィマール」を管理する宮城孝雄氏が登壇した。

 上映後には、伊江中学校出身のシンガーソングライターAnlyが主題歌「ニヌファブシ」を初披露。「まだどこでも歌ったことがない」と語ると会場からは大きな拍手が送られた。アカペラで始まる透明感のある歌声は、作品の世界観と見事に重なり、生徒たちを魅了した。

 平監督とAnly、そして生徒たちとのトークセッションも行われた。

 「なぜこの映画を撮ろうと思ったのですか?」という質問に対し、平監督は「戦争の悲惨さや平和の尊さを伝えるために、『木の上の軍隊』というテーマに興味を持ってもらえると考えました」と回答。また、主演の堤真一と山田裕貴が実際に減量して役に臨んだエピソードも明かされ、「体を作るというより、飢えを感じる気持ちを作るための食事制限でした」と撮影の裏側を語った。

 主題歌にAnlyを起用した理由については、「伊江島の景色には、伊江島で生まれ育った人の声が必要だった」と監督。Anlyも「私以外に誰がやるのか、という使命感で取り組みました」と胸の内を明かした。

 作中では、戦闘で死亡したりケガを負ったりするシーンも生々しく描かれている。生徒から「苦しそうに亡くなっていく俳優の皆さんの演技が上手だった」という感想を受けた平監督は「数としての死ではなく、一人一人の死を描きたかった」と強調。観客に生きることの喜びや日常の尊さをより強く感じられる構成にしたと、その意図を語った。

 生徒からは、「木の上で思いをぶつけ合う二人の姿が印象的だった」「自分が見ている風景が映画の中にあって面白かった」「自分たちにとって身近な場所が出てきていたので、もし戦争が今起きると、自分たちがこういうことに巻き込まれるのだなと実感できました」「80年前の沖縄でこんなことがあったんだなと分かりました。自分のおばあちゃんもこの戦争を体験しています。おばあちゃんにもっと話を聞いていきたいし、この作品を観て『戦争をしてはいけない』と思いました」といった感想が寄せられた。

 戦後80年を迎える2025年、戦争体験者が少なくなるなか、沖縄戦の記憶をどう次世代に伝えるかが改めて問われている。『木の上の軍隊』は、伊江島で暮らす若者たちにとって、故郷の島で起きた悲劇に向き合い、生きることの尊さに関心を深める貴重な機会となったに違いない。

 映画『木の上の軍隊』は、7月25日より全国公開予定。

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