映画収益のカラクリ、興行収入と配給収入の違いを知る

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2025年06月15日 06:20  ITmedia ビジネスオンライン

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映画の収入はどうなっているの?

 映画の興行収入について、説明しましょう。興行収入(興収)とは入場料収入(映画鑑賞料金)のことで、入場料×有料入場者数で算出されます。日本は1999年まで配給収入(配収)が興行成績の統計(日本映画製作者連盟データ)に使用されていましたが、2000年から欧州や米国の基準に合わせて、興収で映画の売り上げが発表されるようになりました。


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 例えば、2024年公開の洋画で最高の興収53億6000万円を記録した『インサイド・ヘッド2』(8月1日公開)は、週末3日間で動員40万人、興収5億円強を記録し、週末動員ランキングで2位スタート。初日からの4日間累計では動員57万人、興収7億円を突破しました。これは15年に公開され、最終興収40.4億円を記録した前作『インサイド・ヘッド』を上回る出足です。


 私のこれまでの経験値からの予測ですと、公開から10日間で初週末3日間の約2倍の動員80万人、興収10億円超ですが、実成績は8月11日(11日間)までの累計で動員137万人、興収17億6000万円を記録。


 さらに、10日間の成績を2.5〜3倍したものが最終興収となるのがこれまでの平均的数値でしたが、『インサイド・ヘッド2』は動員、興収ともに予測を上回りました。ただし、コロナ禍前あたりから洋画の大作であっても、10日間の成績から予測する最終興収を下回る作品が増えています。


 全国300スクリーン以上で公開する規模の作品は、公開最初の3日間の成績で概ね最終興収が予測できます。1スクリーン当たり3日間でどれくらい動員(アベレージ)しているのか、全国でどれくらい興収をあげているのかで、過去のデータからスクリーン数を維持するのか、増やすのか、減らすのか判断できます。近年の洋画は特に翌週の落ちが早いので、初週にいかに稼ぐかが勝負になります。


 もちろん、作品によっては初週の数字を翌週に上回って、右肩上がりの興行を展開する作品もありますので、数字だけではなく、客層や公開時期も加味しながら興行会社(劇場)、配給会社でそれぞれ判断していきます。興行会社からすると、いかに興行力のある作品の機会損失を減らすかがポイントになるのです。


 もう一例、予想を上回ったインディ系の単館拡大作品を挙げると、22年10月21日に全国240館で公開されたインド映画『RRR』は、公開初日から3日間で動員2万3000人、興収3500万円をあげるスタートを切り、公開10日間で動員7万4000人、興収1億1000万円(先行含む)を記録。


 その面白さは年をまたぎ2023年に入っても口コミで広がり続け、メディアで取り上げられたことも後押しとなり、最終的には興収24億円を突破。劇中の楽曲「ナートゥ・ナートゥ」とダンスもSNSを中心に話題となり、予想を遥かに上回る大ヒットで社会現象を巻き起こしました。


●映画料とは


 次に、この興収を興行会社(映画館)と配給会社とで分けるのですが、興行会社側が一定の配分を除いて配給会社に支払う料金を“映画料”、その総計額を配給収入(配収)と呼んでいます。邦画は、配収から一定割合の配給手数料と宣伝費を含む配給経費などを除いた残りを製作会社(製作委員会)に戻します。


 洋画は、海外の製作会社(権利元)に買付け料をすでに支払っていますので、経費を除いた配収が配給会社の収入となります。


 ちなみに、映画料は勝手に割り引いてはいけません。劇場独自のサービス(会員特典など)で割り引いた分は興行会社が、宣伝促進や動員増を狙って割り引いた分は配給会社が負担、つまり配収から差し引かれることになります。


 その割合(配分)は平均的には半々ですが、劇場によっては55%:配給会社45%というケース(もしくは6:4)もあります。配給手数料は10〜30%と、興行会社、配給会社、作品によってケース・バイ・ケースです。


 ちなみに、TOHOシネマズが2023年6月に映画鑑賞料金を改定してから、一般は2000円、シニアは1300円、レイトショーは1500円、ファーストデイは1300円となり(大学・高校・中学・小学生・幼児、障がい者割引の料金は改定なし)、各社割引料金など多少の違いはありますが、他の興行会社もほぼ同額にそろえられました。


この記事は『映画ビジネス』(和田隆/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。


(和田隆、映画ジャーナリスト、プロデューサー)



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