「お菓子は私の分だけいつも無い」陰湿な“職場いじめ”で退職した44歳女性。散歩中に偶然見つけた“次の居場所”が素敵すぎた

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2025年06月17日 09:10  女子SPA!

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人生に行き詰まり立ち止まってしまった時に、ふと今まで見えなかったものが見えてきた……あなたはそんな経験をしたことはありませんか?

今回は、最近長年勤めていた会社を辞めてしまった酒井冬美さん(仮名・44歳/独身)のエピソードをご紹介しましょう。

◆陰湿ないじめに遭い「自分は無価値」と思い込む

「職場でずっと同じチームの女性陣からいじめや嫌がらせを受けていました。普段は私の存在自体を無視されているような感じで、お土産のお菓子も私の分だけがいつもありません。別にお菓子が欲しかったわけではないですが、そんな風に自分を“いないもの”として扱われ続けるのはキツいものがありましたね」

そうかと思えば、冬美さんがいるのを分かっているのに、近くで露骨に悪口を言われることもあったそう。

「他にも、私にだけ予定を伝えてくれなかったり、重要な書類を隠されたりして……そんな日々を送っているうちに『私は誰にでも嫌われてしまう価値のない無能な人間で、だからこういう扱いを受けても仕方ないんだ』と思うようになりました。

最初はもちろん理不尽な目に遭っていると分かっていましたが、結局嫌がらせをしてくる人を変えることはできません。それで無意識のうちに『自分に原因があるのだから仕方ない』と納得することで折り合いをつけようとしたんだと思います」

◆うつ病になって仕事を辞めた私に、親友は

そうこうしているうちに冬美さんは体調を崩してしまい、病院に行くとうつ病と診断されました。

「やっぱりなという感じでしたね。そこから半年ほど休職したのですが、どうしてもあの会社に戻れる気がしなくて結局辞めてしまったんですよ」

未婚で彼氏もいない冬美さんは、親友の未歩さん(仮名・42歳/主婦)によく話を聞いてもらっていたそう。

「未歩はずっと私に『そんな会社辞めた方がいいよ』と言ってくれていたんですよ。ですが私が無駄に我慢しているうちにこんな病気にまでなってしまって……嫌がらせもキツいけど、環境を変えることも怖かったんですよね」

そして徐々に体調が良くなってきた冬美さんは、未歩さんにその時の心情を正直に話しました。

「『そろそろ社会復帰しようと思ってるんだけど……。とりあえず派遣社員とかかな? と思っても、自分がオフィスに出勤してパソコンで作業しているのを想像してみたら、どんどん暗い気持ちになってきてやる気がなくなってくるんだよね』と私が言ったら、未歩が意外な言葉を返してくれたんです。

『前職に縛られないで、自分の興味のあることや、ワクワクできる仕事についたらどうかな? これから冬美には1日1日を楽しく過ごしてほしいんだよ』って。目から鱗が落ちたような気持ちになりました。私は勝手に“自分には事務職しかない”と思い込んでいたので」

◆近所を歩いていたら偶然見つけたのは

その後のある日、近所にある通ったことのなかった路地にふと入ってみた冬美さんは、蔦のからまる雰囲気の良い洋食レストランを発見しました。

「私は昔からレトロなお店を食べ歩くのが趣味なんです。そのレストランはあまりにも自分好みの店構えで、うっとり眺めてしまいました。お店は休憩時間で閉まっていたのですが、『インスタやっています』と書いてあったので見てみると、トップにアルバイト募集のポストが固定されていて。反射的に『あ、これだ!』と思いました」

そして「決まり次第この投稿は消します」という文言を読んで焦った冬美さんは、すぐに応募しました。

「今は履歴書なんて書かずにDMで申し込めるんですね。本当は一度お店で飲食してから応募するのが筋だとは思いますが、そんな風にもたもたしている間に他の人の採用が決まってしまうかもしれない?! と、悩む間もなく送信してしまいましたね」

ですが、その後で冷静になって考えてみたら「でもこんな可愛らしいお店のしかもホールのバイトなんて、絶対若くて綺麗な子がいいだろうし、私みたいな飲食店で働いた経験のないおばさんなんて面接すらしてもらえないかも……」と悶々としてしまったそう。

「とにかく自信を失っていたので、どうせ駄目に決まっていると思うことで楽になろうとしていたら……なんと丁寧な返信がきて面接してもらえることになったんですよ」

◆自分の居場所を見つけられた気がして嬉しかった

面接当日。ドキドキしながらお店のドアを開けると、オーナーシェフの女性が笑顔で迎えてくれました。

「オーナーは28歳で、あまりに若くてびっくりしてしまいましたね。長年働いていた30歳のバイトさんが独立して辞めてしまうので、新しいバイトを募集しているとのことでした」

そして冬美さんは未経験にもかかわらずトントン拍子に採用されて、その洋食レストランで働くことになったそう。

「オーナーからの電話で『冬美さん、ぜひ一緒に働いていただきたいです!』と言ってもらえた時に、自分の居場所を見つけられたような気がしてとても嬉しかったんですよね。それまで邪険にされ続けてきたので」

しかも、6人のバイト希望の中から1人だけ選ばれたと聞き、そのことも冬美さんの自信となりました。

「せっかく採用してもらえたのだから、このお店の役に立って恩返しできるように頑張ろう」とシンプルな気持ちで頑張れるのがとても精神衛生上いいそうで……。

◆まさかこんな近所に“3拍子”そろったオアシスがあるなんて

「オーナーは、私が仕事を覚えるのが遅くて萎縮していると『最初からできる人なんていませんし、もっと図々しいぐらいの気持ちでいてください。楽しみながら働いているうちにいずれ覚えてもらえればいいので』と決して怒ったりせず、おおらかに接してくれるので、こちらもストレスを感じずに働くことができるんですよね」

覚えることがいっぱいありプレッシャーも多少はあるものの、今は新たな仕事が新鮮で楽しく、そんな風に楽しめている自分のことも徐々に好きになれてきたそう。

「まさかこんな近所に、優しいオーナーに可愛らしいお店に美味しい料理の3拍子そろったオアシスがあるなんて(笑)。まかないもとても美味しいし、出勤するのが楽しみなぐらい今は仕事がとても楽しいです」と微笑む冬美さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

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