約2年前のシカゴ初開催イベントで優勝し鮮烈なカップデビューを飾った“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トラックハウス・レーシング/シボレー・カマロ)が、ふたたび初開催ラウンドを制覇する偉業を達成 シリーズの野望である国際進出への足掛かりとして、国境を越えメキシコシティで争われた2025年NASCARカップシリーズ第16戦『Viva Mexico 250(ビバ・メヒコ250)』は、約2年前のシカゴ初開催イベントで優勝し鮮烈なカップデビューを飾った“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トラックハウス・レーシング/シボレー・カマロ)が、ふたたび初開催ラウンドを制覇する偉業を達成。これでポイントランキングトップ30圏外から大躍進のポストシーズン進出も果たしている。
先週開催のミシガンを終え、同国が誇るF1トラック、アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスに集結すべく大陸間縦断移動を敢行したカップシリーズの一行は、そのトランスポーターが隊列を組む陸路ではなく木曜の空路で遅延が発生。航空機2機の延期により複数の関係者がシャーロットを出発できなかったことを受け、現地メキシコシティでの金曜、土曜のスケジュールが再調整された。
さらにそのミシガンで今季3勝目を飾っていたデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)は、新しい家族である3番目の息子の誕生に立ち会うべく、レースウイークに入りメキシコへの出国を取り止めるとアナウンスした。
「息子の誕生をお知らせできてうれしいね。家族は皆元気だ」と喜びの声を届けたハムリン。「最優先事項は婚約者のジョーダンと家族のために、彼女が退院し、家族5人での生活が再開できるまでの数日間、家にいることだ。ジョー・ギブス・レーシング(JGR)の皆、パートナー企業の皆、そしてファンの皆には、ここ数週間のサポートに感謝している。来週末のポコノでのレース復帰を楽しみにしているよ」
そのハムリンに代わって11号車を操るドライバーには、チームのリザーブドライバーでありシミュレーターワークも担当する、元王者マーティン・トゥルーエクスJr.の弟、ライアン・トゥルーエクスが指名された。
「ここ数週間は忙しかった」とコカ・コーラ600の週末からJGRに帯同してスタンバイしてきた、自身2014年以来のカップ参戦となるトゥルーエクス。「練習の時間が取れるサーキットで復帰できてありがたい。まだ数人しか来ていないしね(笑)。水曜の夜に知ったから、ここに来てすべてをまとめるのはかなり大変だった。この経験に感謝しているし、ここにいられることにも感謝している。目標も期待値も決めていないし、とにかく週末を楽しみたいだけなんだ」
迎えた金曜は50分間の追加フリープラクティス(FP)から始まると、ここではマイケル・マクドウェル(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が最速。続く通常25分枠のFP2ではトッド・ギリランド(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)がトップに立つなど、やはりいつものロードコースとも異なる顔ぶれが並ぶ。
さらに雨に翻弄されセッション時間が短縮された予選では、この時点でランキング33位につけていたSVGが首位のタイミングで終了が判断され、自身も予想外と言えるキャリア通算2度目のポールポジション獲得となった。
「素晴らしい。僕たちにとって本当に素晴らしい成果であり、明日に向けて素晴らしいスタート地点を得ることができた。興奮している、本当に素晴らしいよ!」とふたたびの奇跡を予感させるグリッドを得た元豪州チャンピオン。
「昨夜は大きな変化があった。クルマは少し良くなり、フロントグリップが大幅に向上した。これはまさに僕が求めていたものだった。でもラップは平均的で、とくに前半は他にリードされていたのが分かると思うが、後半は良いラップになった。さらに連続でもう1周、猛烈な勢いで走ったが最終的には失敗に終わった。今日はかなりスピードが出ていて、それは良いことだし大きな進歩だ。天候がどうなるかを見極める必要があるが、良いスタートを切ることができたね」
その言葉どおり、日曜午後の決勝はスタートから雨に祟られることとなり、オープニングラップを終える前にコーションが出され、NASCARは路面コンディションを“ウエット”だと宣告。スリックタイヤを使用するか、ウエットタイヤを履くかの判断は各チームに委ねられる。
ここでクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)とオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)だけがスリックを装着し、ドライアップまで各陣営の戦略は分かれる展開となる。
すると直後の7周目にはカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がターン1進入時にスピンし、複数のドライバーに接触したことでコーションが発動。このアクシデントにより数周遅れとなったカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)やゼイン・スミス(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)のチャンスは失われ、AJ・アルメンディンガー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)とジャスティン・ヘイリー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)も巻き添えとなってしまう。
そのままステージ1はフロントロウ2番手発進だったライアン・プリース(RFKレーシング/フォード・マスタング)が制し、続くステージ2ではSVGとタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が優勝戦線に浮上。ここではSVGがステージウインを攫っていく。
迎えた最終ステージ。早めのルーティンでピット作業を終えていたSVGは、65周目のカーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)のスピンによる最後のコーションで好機を得ると、イエローピリオド中もコースに留まり先頭集団へ。
レース再開の69周目からはアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)とクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)を鮮やかにオーバーテイクして独走。最終的に100周中60周という最多周回数をリードして16.5秒差の“ポール・トゥ・ウイン”を決めてみせた。
「素晴らしい1週間だった。本当に楽しかったよ!」と初モノ“マイスター”ぶりを遺憾なく発揮してみせた勝者SVG。「でも今日の走り自体は良くなくて、終始楽しめていたわけじゃない。でも(今週のメインスポンサーである)セーフティ・カルチャー、トラックハウス、シボレー、そしてECRエンジンに感謝する」
「僕らのマシンは素晴らしかった。54号車(ギブス)も僅差だったと思うけど、最後のスティントはラップごとに猛烈なスピードで走り、ミラー越しに彼らがどんどん小さくなっていくのを見るのは本当に楽しかった。信じられないよ!」
併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第15戦『Chilango 150(チランゴ150)』では、グリッド最後尾からスペアカーで劇的な勝利を収めるという驚くべきストーリーを描いたもうひとりの主役。グリッド唯一のメキシコ出身カップレギュラーでもあるダニエル・スアレス(ジェイアール・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が勝利のバーンナウトを決め、グランドスタンドに集まった地元の大観衆を沸かせる結果となった。
「まさに求めていた通りの、特別な一日だ!」と、カップではトラックハウスの99号車を操る2016年エクスフィニティ王者の33歳。「長年、僕を支えてくれ、NASCARメキシコ時代から僕を知っているファンの前に立つことができて、本当に、本当に特別な瞬間だ。今は……こんな『ビッグボーイ』たちと戦っている。僕らはNASCARの皆と、この週末に歴史を作っているんだ!」
https://www.youtube.com/watch?v=ZJQM5EU1o-0
[オートスポーツweb 2025年06月17日]