
9月からNHKで柴犬を題材にしたドラマ『シバのおきて〜われら犬バカ編集部〜』が放送されるという。
犬好きたちが期待を寄せる一方で、「シベリアン・ハスキーの悲劇」の再来を危惧する声も少なくない。
「ハスキーの悲劇」とは、ドラマ化もされた人気コミック『動物のお医者さん』で注目を集めた大型犬種「シベリアン・ハスキー」が大量に遺棄された悲惨な過去のこと。
ブームに乗って飼い始めたものの、ロシア原産の作業犬種ならではの性質や飼育上の難しさを事前に調べもせず、「こんなはずじゃなかった」と、無責任に飼育を放棄する飼い主が続出。日本中の保健所にハスキーが大量に収容される悲劇が起きた。
|
|
ニコニコが可愛いあの柴犬も「バリバリの柴気質」
日本の天然記念物でもある和犬、柴犬。可愛い顔立ちや、飼いやすい小柄な体格に加えて、SNS上でもしばしば話題になるほど、豊かな表情や楽しい仕草で絶大な人気を誇る犬種だ。
だが、猟犬や番犬として活躍したルーツを持つ柴犬は、実はかなり「クセ」が強い犬種。それが理由で大量に飼育放棄され続けているのが現実だ。
人懐っこく、ニコニコ顔と飛行機耳でおもちゃをくわえ、テトテトと小さなステップを踏みながら飼い主さんの元にやってくる可愛い姿で人気の柴犬の女の子、すずちゃんでさえ、「バリバリの柴犬っぽさだらけです」と、飼い主のミニすず(@RKfWUAQ1xbOEEAp)さんは言う。
柴犬の「クセツヨ」を愛する柴飼いさんたち
台風の日でも散歩してる犬は柴犬だけ!とよく言われるが、どんなに訓練をしても、綺麗好きの柴犬は本能的に屋外でしか排泄をしない個体が多い。
すずちゃんも同様で、飼い主さんが体調不良の日でも散歩は欠かせないという。
|
|
「かなりの運動量も必要で、結構な距離を歩かなくてはいけません。そのわりに、ドッグランではランしません。他のワンちゃんとも『柴距離』を保ちます。柴は飽きやすいと言われますが、すずもボールを投げると目でボールを追っておしまいです。家では急にスイッチが入ってテンション上がり、クルクル回ります。そして前触れもなく急にスイッチが切れます…。
ビビりです。見慣れないものにはとても警戒します。散歩道に粗大ゴミが置いてあると、かなり手前からロックオン。ゆっくり近づき、張り紙が揺れればビクッ!とします。すずの場合はしばらくすれば諦めて折れてくれますが、行きたくない方向はしっかりと『拒否柴』をします。柴犬のクセツヨ特性はだいたい持ってます。そしてこのクセツヨが我々柴飼いを虜にしてしまうんですよね」(ミニすずさん)
SNSで見る「可愛い柴犬」と現実は違う
すずちゃんの可愛い様子を見て、「いつか絶対に柴犬を飼いたいと思いました」というメッセージがX(旧Twitter)やInstagramに届くこともあるという。
「SNSには可愛くて面白い柴犬がたくさんいますよね。でも柴犬って本当にクセツヨで、個体ごとの個性の幅が広い犬種だと思います。縁あってお迎えした子が、思い描いていた柴犬とは全く違うかもしれない。実際、攻撃性の高い子も多いです。何かの拍子で豹変して飼い主の手に噛みつき、手に穴が開いて病院送りになった人もたくさん知っています…。他のワンちゃんと仲良くなれない子も多く、咬傷事故を起こしてしまう子も多いです。
そして、とにかく毛が抜けます。想像の100倍は抜けます!こういったたくさんのマイナス面もよく理解して、覚悟を持ってお迎えして欲しいです。決して『可愛い』だけで飼ってはいけない犬種だと思います」(ミニすずさん)
|
|
ニコニコが可愛いすずちゃんは「元繁殖犬」
11歳になるすずちゃんは元繁殖犬。犬舎にいた頃からすずちゃんのことを知っていた飼い主さんは、繁殖犬引退のタイミングでお迎えを願い出たそうだ。
「ブリーダーさんのところにいる頃はお外での生活だったので、うちに来た当初は家の中でくつろぐことが難しかったようです。ふわふわのベッドも初めてだったので、『何だこれは!』って感じで戸惑っていました。
でもすぐに慣れてくつろぎだし、ヘソ天を覚え、人にお腹をなでられると気持ちいいことがわかり、なでられるのが大好きになりました。ゴローンとなって足を広げ、お腹を出すのが得意技で、いつも家の中の動線上に落ちています。とっても邪魔ですがどきません。みんなにまたがれています」(ミニすずさん)
無理な繁殖は絶対やめて
動物の愛護および管理に関する法律により、犬の飼養や繁殖にも厳しい基準と規則が設けられている。だが、特定の犬種が人気になる度、無理な交配や違法な繁殖を行う悪質な業者が後を絶たない。
「柴犬でも、サイズの小さい豆柴が人気のようですが、小さければ小さいほど良いという感じで、どんどん小型化している気がします。そのために無理な交配や繁殖が行われているのか、特に豆柴の中に『IBD』という炎症性腸疾患を発症する子が多いと聞きました。
利益のためだけの望ましくない繁殖は絶対にやめて欲しいです。出産回数や間隔を守り、母犬のことも、産まれてくる子犬のこともちゃんと考えてあげて欲しいです」(ミニすずさん)
いつかやってくるお別れの時まで
すずちゃんの飼い主さんのもとには、柴犬級にクセの強い小型犬、ロングコートチワワのミニちゃん先輩もおり、飼い主さんのSNSには、クセツヨ同士の愉快なやりとりが日々投稿されている。
「柴犬に限らず、ワンちゃんをお迎えしたら、いつかやってくるお別れの時まで、必ず全力で愛情を注いであげて欲しいです。当たり前のことですが、最後まで責任をもって家族の一員として過ごしてください。なんやかんや言っても、『柴犬はサイコー!』ですから」(ミニすずさん)
柴犬の魅力だけでなく、実はかなり飼育が難しい犬種であること、そして、すべての飼い主に課せられる終生飼育の義務も、ドラマを通してしっかりと伝えてほしい。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)