「戦力になっていないおまえに給料を払っている」と暴言を吐く上司にイラッ…新入社員がわずか“1か月”で退職するまで

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2025年06月18日 16:11  日刊SPA!

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 企業には「必ず始業10分前には着席している」「定時になっても上司の許可を得ないと帰宅してはいけない」など、独自の「不文律」が令和の世にもまだまだ存在する。
 必要悪としてしょうがない種のものもある一方、もはや価値観にそぐわない、旧習めいた言いつけも少なくない。

 新卒で入った会社を早々に辞めた松田光春さん(仮名・20代)の退職理由も、上長の古めかしい“我が社ルール”のせいだという。

◆新人は「始業の30分前」に出社するルールが

 松田さんは今春、中規模IT企業に入社。全体研修を経て、システム開発部へ正式配属されるやいなや、疑問を感じる“指導”を受ける。

「配属して早々、新人3人がシステム開発部の部長に呼び出しを受けました。『うちの会社では、新人は始業の30分前に来て、先輩社員を出迎える決まりがある。君たちも30分前に来て部内の掃除をしなさい。松田くんは掃除に加えてお茶用にポットのお湯も沸かしておくように』と指示されました。内心『おかしくないか?』と思いながらも、圧に屈して断れなくて……。渋々30分前に出勤しては、掃除をする毎日が始まったんです」

◆土日に取り組む“宿題”を押し付けられ…

 その後、さらに新たな“我が社ルール”が発覚する。

「30分前出勤をするようになってから1週間ほどが経過したころですかね。部長から呼び出しを受け、『社会人は土日の過ごし方が大事。土日だからといって、遊んでばかりではダメだ。プログラムを覚えるための宿題を出すから、必ずやって月曜の朝までにメールでおくるように』と言われました」

 だが納得のいかない松田さん。課題をやらないまま、月曜日を迎える。

「会社側が『これをやれ』って指示を出したら、それはもう業務じゃないですか。なのに、この宿題をやっても業務時間には当然カウントされないわけです。だから土日は遊べるだけ遊んで、一切手をつけないまま出勤しました。

 時代も時代ですし、向こうも強く出られるわけがないと高を括っていたんですよね。それがどっこい、部長から『宿題が未提出なのは、なぜなのか? 仕事をナメているのではないか』と、強い口調で叱責を受けてしまって。私もカチンと来て、『就業時間外の過ごし方について、あれこれ言われるのはおかしいのではないですか?』と返しました。

 すると、『新人が土日に宿題をするのは、うちの会社のルールだ。なんの戦力にもなっていないおまえに給料を払っている会社の言うことを聞けないなら、辞めていい。とりあえず、今からやれ』とまで言われたんです。もうこの時点で退職しようと思いましたが、同期に引き止められ、一旦はその気持ちにフタをしました」

◆歓迎会で余興を強要されそうになり、総務に相談するも…

 理不尽な「新人ルール」に抗いながらも我慢していた松田さんだが、とうとう堪忍袋の緒が切れる出来事が発生する。

「新入社員の歓迎会の日程が知らされたとき、部長からまた呼び出されました。『新人には何かしらの余興をやってもらうことになっている。同期の新人3人で『東京03』のコントをやってみてはどうか』と言われて……。これには3人とも呆れ顔でしたよ」

「何かしら考えます」と、お茶を濁して返事を後日に回すことで、その場を逃れたという松田さんら一行。

「同期の2人も『さすがにこれはひどい』と意見が一致し、総務部に相談しました。しかし回答は、『新人の余興はうちの伝統で、基本的にはやってもらうことになっている。でも、やりたくないのなら、やらなくてもいい』なんて、頼りないものでした。

 2人は『評価が下がりそうだから、やるしかない』と諦めて受け入れていましたが、私は『こんなおかしな会社は辞めたほうがいい』と思って。その場で人事担当者に『それなら辞めます』と告げ、退職することにしました。在職は1か月弱でした」

◆呼び出されて「ふざけるな」と逆ギレ

 退職日が決まって溜飲を下げたのもつかの間、血相を変えた部長から“怒鳴り込み”が。

「最終出勤日の2日前だったでしょうか、部長から『ちょっと来い』と、会議室に呼び出されました。『もういいでしょ』と思いつつも、まだ在職中ですしね。仕方なく話を聞きましたが、要は退職理由の確認でした。のらりくらり適当に交わそうとしても、何度も何度も繰り返し問いただされて。『おめえの言う、わけのわからん押し付けが原因だよ』と、絶叫してやりたかったです」

 部長がしつこく聞くのは、自らの保身のためだったようで……。

「私は『この会社でやっていくという気持ちがなくなった』といった筋で説明していたものの、部長は『納得できない』の一点張りなんです。これ以上どう答えればよいのかと辟易としていると、『私が責任を追求されるのではっきり言ってほしい』とのことで。どこまでも自分の評価しか頭にないんだなと、あらためて辞めることにしてよかったと思いましたよ(笑)。

 一向に埒が明かないまま、『とにかくやる気がなくなりました』と機械的に返し続けていると、ついに人格否定をされました。『君はこれからもごまかして逃げるだけの人生を歩むのか。そんな姿勢では社会を渡っていけないぞ。こっちは採用にいくらコストをかけていると思っているんだね。ふざけるな』との、ありがた〜いお言葉を頂戴しました」

◆「あんたのほうが…」と言い返したくなったが…

 売り言葉に「あんたのほうが、ほかの会社で通用しないんじゃないの?」と、買い言葉を返しそうになりながらもぐっと飲み込んだ松田さん。「すみません」と、簡単ながら謝罪して丸く収めたそうだ。

「これまでの慣例だったとしても、それが正しいこととは限らないですよね。厳しいから嫌なのではなく、理不尽だと感じるから嫌なんです」

 世代によっては、「この程度で理不尽なわけがあるか」との反論が出そうな上に、明文化されたものだけではうまく回らない機微が社会にはあるのも、事実ではあろう。

 ただし、その言い訳に甘んじて、独自ルールを押し付けてばかりいると、見切りをつけられてしまう時代だ。

 新入社員や他社から「ドン引き」されてしまうルールをそのまま残してしまってはいないか——。会社組織のソフト面での定期的な点検の重要性は、増すばかりである。

<TEXT/佐藤俊治>

【佐藤俊治】
複数媒体で執筆中のサラリーマンライター。ファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など

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