▲合田直弘が海外競馬の「今」を詳しく解説!(c)netkeiba【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆後半の目玉は欧州長距離路線の大一番・G1ゴールドC
今回は、「ロイヤルアスコット開催(6月17日から21日)」後半の主要競走を展望したい。
開催3日目(6月19日)のメイン競走に組まれているのが、欧州長距離路線の大一番G1ゴールドC(芝19F210y)だ。
このレースの22年と24年の勝ち馬で、長距離界の絶対エースとして君臨してきたキプリオス(牡7、父ガリレオ)が、古傷である環骨の炎症が再発したとして、5月27日に現役引退を表明。一転して、主役不在の混戦模様となっている。
A.オブライエン厩舎が、キプリオスの後釜となることを期待しているのが、イリノイ(牡4、父ガリレオ)だ。昨年のロイヤルアスコット競馬場で、G2クイーンズヴァーズ(芝14F34y)を制し、重賞初制覇を果たしたのがイリノイだ。その後、G1パリ大賞(芝2400m)2着、G1英セントレジャー(芝14F115y)2着と、強敵相手に好走を続けた同馬は、10月に仏国に遠征してG2ショードネイ賞(芝3000m)を制し、2度目の重賞制覇を果たして3歳シーズンを終えた。今季緒戦となった、5月8日にチェスター競馬場で行われたG3オーモンドS(芝13F84y)を、人気に応えて快勝。3度目の重賞制覇を果たしての参戦となっている。
フランスにおけるこの路線に出現したニュースターが、アガ・カーン・スタッドによる自家生産馬カンドゥラリ(セ4、父フランケル)だ。
デビューしたのが3歳の12月で、シャンティイ競馬場のオールウェザートラックを舞台とした条件戦を3連勝。重賞初挑戦となった4月27日のG3バルブヴィル賞(芝3000m)で3着に敗れ、連勝が止まったが、今年からG1に昇格した5月25日のG1ヴィコンテッスヴィジエ賞(芝3100m)を3.1/2馬身差で快勝。G1で重賞初制覇を果たしている。
昨年のこのレースの2着馬で、5月29日にサンダウンで行われたG3ヘンリー2世S(芝16F50y)を5馬身差で快勝しての参戦となるゴドルフィンのトローラーマン(セ7、父ゴールデンホーン)、昨年のこのレースの3着馬で、今季初戦となった5月16日のG2ヨークシャーC(芝13F188y)も3着だったスウィートウィリアム(セ6、父シーザスターズ)らも、争覇圏にいる馬たちと見られている。
開催4日目(6月20日)の第2競走に組まれているのが、3歳の牡馬と牝馬による6FのG1コモンウェルスC(芝6F)だ。
当日1番人気が予想されるのが、ゴドルフィンのシャドウオブライト(牡3、父ロペデヴェガ)である。2歳だった昨シーズン、G1ミドルパークS(芝6F)、G1デューハーストS(芝7F)という2つのG1を制した同馬。今季初戦となったG1英2000ギニー(芝8F)で、勝ち馬ルーリングコートから1馬身差の3着に入り、マイルも守備範囲にあることを実証したが、陣営はスプリント能力こそこの馬の真髄と判断。ロイヤルアスコットではG1セントジェームズパレスS(芝7F213y)ではなく、ここに照準を絞ることになった。
シャドウオブライトの相手と目されているのが、ジャドモントのバブーシュ(牝3、父コディアック)だ。2歳だった昨シーズンは4戦し、G1フェニックスS(芝6F)、G3アングルシーS(芝6F63y)という2重賞を含む3勝をマーク。今季2戦目となった、5月18日にネース競馬場で行われたG3ラッカンS(芝6F)を2.3/4馬身差で快勝し、3度目の重賞制覇を果たしての参戦となっている。
同じ開催4日目(6月20日)の第4競走に組まれているのが、3歳牝馬によるG1コロネーションS(芝7F213y)だ。欧州各国の1000ギニー馬による競演となることが多いこのレースだが、今年は、G1英1000ギニー(芝8F)勝ち馬デザートフラワー(牡3、父ナイトオブサンダー)が、G1英オークス(芝12F6y)で二冠に挑戦(結果は3着)。G1愛1000ギニー勝ち馬レイクヴィクトリア(牝3、父フランケル)は、夏以降のレースに備えるとして回避を決定。結果として、5月11日にパリロンシャン競馬場で行われたフランス版1000ギニーのG1プールデッセデプーリッシュ(芝1600m)を勝っての参戦となるザリガナ(牝3、父シユーニ)に人気が集中することになった。
2歳だった昨年は3戦し、G3オマール賞(芝1600m)を含む2勝を挙げた同馬。今季初戦のG3グロット賞(芝1600m)を制して臨んだG1プールデッセデプーリッシュは、直線で猛然と追い込むも、シーズパーフェクト(牝3、父スーネーション)にハナ差及ばぬ2着で入線。しかし、直線半ばでシーズパーフェクトが左にヨレた際に、ザリガナの進路を妨害したとして、審議の末に繰り上がりで優勝を手にすることになった。陣営は、今度こそすっきりとした形でのG1制覇を目論んでいる。
開催最終日(6月21日)の第3競走に組まれているのが、サトノレーヴ(牡6、父ロードカナロア)が出走を予定するG1クイーンエリザベス2世ジュビリーS(芝6F)だ。
4月27日にシャティン競馬場で行われたG1チェアマンズSP(芝1200m)でカーインライジングの2着になった後、直接英国入りし、ニューマーケットを拠点に調整されてきた。ブックメーカーの前売りで同馬は、4〜5番人気となっている。
中心視されているのは、フランス調教馬のラザット(セ4、父テリトリーズ)だ。3歳だった昨年は8戦し、G1モーリスドゲスト賞(芝1300m)など3重賞を含む6勝をマーク。同馬の今季初戦に陣営は、サンクルー競馬場のLRアルティパン賞(芝1600m)を選択。ここで4着に敗れると、短距離路線に回帰することになり、5月2日にシャンティイ競馬場で行われたLRセルヴァンヌ賞(芝1200m)を5.1/2馬身差で快勝。同馬の本分がスプリント戦にあることを、改めて実証した。
昨年のG1コモンウェルスC(芝6F)勝ち馬で、今季初戦となった5月14日のG2デュークオブヨークS(芝6F)を勝っての参戦となるイニシェリン(牡4、父シャマーダル)、日本人馬主・斎藤久明氏の所有馬で、今季初戦となった5月25日のG3パレロワイヤル賞(芝1400m)を制し4度目の重賞制覇を果たしての参戦となるトップギア(牡6、父ウートンバセット)らも、サトノレーヴにとって強敵となりそうだ。
ロイヤルアスコットの模様は、連日にわたってグリーンチャンネルで生中継されている。日本の皆様もぜひ、ご注目いただきたい。
(文=合田直弘)