原爆養護ホーム「矢野おりづる園」を訪れ、入所者と懇談される天皇、皇后両陛下=20日午後、広島市安芸区(代表撮影) 戦後80年に当たり広島県を訪れた天皇、皇后両陛下は20日午後、広島市安芸区の原爆養護ホーム「矢野おりづる園」を訪れ、入所者らと懇談された。2014年に在位中の上皇ご夫妻が訪れたが、両陛下の訪問は初めて。
同園には被爆者94人が暮らし、平均年齢は90歳を超える。両陛下は81〜99歳の10人と面会。腰をかがめて目線を合わせ、「生活はいかがですか」などを声を掛けて回った。
山中千恵子さん(95)は15歳で被爆し、母親は原爆投下から1カ月もたたずに亡くなった。天皇陛下は「平和は大切ですね」と語り掛け、皇后さまは「おつらい思いをなさいましたね」と寄り添った。
19歳で被爆し、10月に誕生日を迎える森永ヨシコさん(99)に、皇后さまは「お元気に100歳の誕生日をお迎えになってください」と話した。
これに先立つ同日午前、両陛下は14年の集中豪雨による土砂災害で被災した広島市安佐南区八木地区の復興状況を視察した。被災後に整備された「小原山砂防堰堤(えんてい)」を訪れ、犠牲者が出た場所に向かって2度黙礼した。同市内では関連死を含め77人が亡くなり、同堰堤周辺では23人が亡くなった。
23年に開館した市豪雨災害伝承館では、被災者らと懇談。天皇陛下は、長男=当時(11)=と三男=同(2)=を亡くした平野学さん(50)、朋美さん(48)夫妻を「残念でしたね」といたわり、朋美さんが被災後に子供向けの防災紙芝居を作成したと話すと、「立派なご活動を」とねぎらった。

広島市豪雨災害伝承館を訪れ、被災者に言葉を掛けられる天皇、皇后両陛下=20日午前、同市安佐南区(代表撮影)

小原山砂防堰堤(えんてい)で、かつて家屋があった場所に向かって黙礼される天皇、皇后両陛下=20日午前、広島市安佐南区(代表撮影)