プロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963(ニール・ジャニ/ニコ・ピノ/ニコ・バローネ組) 2025年WEC第4戦ル・マン WEC世界耐久選手権のハイパーカードライバーであるニール・ジャニは、同シリーズにワークス参戦するポルシェに対し、カスタマーチームであるプロトン・コンペティションへの情報提供を求めた。ジャニは、6月14〜15日に行われた第4戦ル・マン24時間レースでの不本意な結果を受け、プロトンの戦いを「ワンマンショー」と評した。
ジャニ、ニコ・ピノ、ニコ・バローネがドライブした99号車ポルシェ963の最終結果は13位。トップから4周おくれでの完走に終わり、3台のうち6号車が2位となったポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)が走らせるワークスマシンとのペース差は、開幕3戦と比べさらに大きくなった。
プロトンの低迷した成績は、カスタマーチームによる年間タイトル『FIAワールドカップ・フォー・ハイパーカー・チーム』の唯一のライバルであるAFコルセが83号車フェラーリ499Pでレースを制したのとは対照的だった。
なお83号車フェラーリは、AFコルセのワークスチームの延長として運営されており、ファクトリードライバーであるイェ・イーフェイがラインアップに名を連ねる一方、プロトンはPPMとは完全に独立して運営され、ペンスキーチームのデータやセットアップには一切アクセスできない。
ジャニは、今年のル・マンの結果がポルシェの今後のシーズンに向けたアプローチを変えるきっかけになるはずだと述べた。
「いつものように、部分的には良いペースだったが、レース全体をとおしてはそうではなかった」とジャニはSportscar365に語った。「それがシングルカーで戦うことの難しさだ」
「フェラーリは、カスタマーチームとどのように連携できるかを示している。それを見ると、フェラーリはすべてを正しく行っていると言わざるを得ない。カスタマーチームはすべての情報に完全にアクセスでき、それがフェラーリの利益にもなる」
「一方、現時点では我々は“ワンマンショー”を行っているようなもので、同じクルマの情報は何もわかっていない。それが僕たちがときどき上位に顔を出すが、レース全体をとおしてそこにいるわけではない主な理由だ。すべてがうまくいかなければ、そこに留まることができない」
「このことは関係者全員が考えておくべきことだ。なぜなら、我々をサポートすることはポルシェにとって利益になるのだからね。他にもカスタマーチームがいれば議論することもできただろう。しかし、現時点では他に誰もいない」
ジャニの発言は、今季に向けて963にふたつのエボ・ジョーカーが導入されたことを受けてのものだ。ひとつはポルシェが年初に明らかにしたサスペンションのアップデート。もうひとつは先週Sportscar365の取材によって確認された、その後のエアロダイナミクスの見直しだ。
ベテランのスイス人ドライバーは、プロトンの問題は、従来のセットアップ・コンセプトが新しい仕様、とくに改良されたサスペンションとうまく噛み合っていないことでさらに複雑になっていると述べた。
「なぜ彼らがそれを開発したのか、私たちには分からなかった」とジャニ。
「どのように活用すればいいのか、どのセットアップ・コンセプトと相性がいいのかを理解するのは非常に困難だ」
プロトンのペースには失望しつつも、ジャニはレース中の唯一のセーフティカー導入直前にラップダウンになったのは「不運だった」と認め、リードラップを維持できていれば10番手争いを繰り広げられたかもしれないと推測した。
99号車はさらにタイムロスを喫した。ミュルサンヌ・コーナーでジャニがキャデラックの1台に接触し、ホイールリムを損傷したのだ。また、レース終盤にはブレーキダクトにもトラブルが発生した。
[オートスポーツweb 2025年06月21日]