映画の配給会社は、フィルム時代は初号プリント、ネガ原版から複製、現在はデジタル原版から上映用(データ)を量産します。洋画の場合は、量産する前に字幕付けや吹替版を作成し、国内での映倫申請などを行います。
そして、宣伝素材や予告編を作りますが、宣伝部門を自社内に持たない場合は、代理店やフリーの宣伝プロデューサーに外注します。この配収から配給会社が立て替えているプリント費と宣伝費(P&A費)を必要経費として引くことを「トップオフ」と言います。
では、映画の配収構造とその後の収益の仕組みはどのようになっているのでしょう。前項の続きから、『インサイド・ヘッド2』を仮の例として挙げて解説してみましょう。最終興収は53.6億円であったので、配収は約27億円とし、P&A費に10億円かけたと推定すると、この10億円は配給会社が立て替えた経費となることから、配収27億円から10億円がトップオフされた残りの約17億円が取り分(もうけ)となります。
洋画メジャーの場合、現地法人が日本向けローカライズの配給手数料を別途設定するのであれば、10%とした場合の1.7億円が差し引かれることになりますが、メジャー各社によってこの手数料は異なるでしょう。
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また、インディ系の配給会社の場合も、権利元との契約条件によってそれぞれの按分方法は異なります。例えば、海外の製作会社(権利元)に買付け料をすでに支払っていても、日本国内の興収が想定を超えてヒットしたら、そこから数%追加で支払うなどの条件が契約書に入っていたりする場合があります。
劇場での興行が終わると、以前はDVDやBD(ブルーレイディスク)といったパッケージソフトのセル、レンタルで二次使用の大きな売り上げがありましたが、昨今はコロナ禍に有料動画配信サービスの利用者が急増し、パッケージソフトの売り上げが配信収入に移行しつつあり、テレビの放映権も地上波だけでなく、BSやCS、ケーブルテレビなど多様化しています。
パッケージソフトには個人向けのセル商品とレンタル店用の2種類があります。消費者が支払う定価に対し、版権使用のロイヤリティ(対価)の率を決めて、発売元から製作した数量に応じて徴収します。発売元の原価には、監督や脚本家などに支払う二次使用に関する著作権の印税などが含まれています。
テレビの放映権収入は、配給会社には販売手数料が入り、その率は映画の興収が基準となっています。映画がヒットすれば、テレビの視聴率も上がり、媒体価値も上がることになります。地上波の放映権は、配収の10%くらいが基準とされていて、興収が20億円(配収10億円)であれば、放映権は1億円が目安となっています。
さらに原作本や映画グッズ、キャラクターグッズの販売収入、国内リメイク権収入なども大きな売り上げになっています。洋画のビジネスも多様化していて、配給会社内も事業展開に合わせて専門の部署を新設するなどして取り組んでいます。
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※この記事は『映画ビジネス』(和田隆/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
(和田隆、映画ジャーナリスト、プロデューサー)
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