2025年F1第10戦カナダGP アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス) メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ウォルフは、メルセデスのエンジンカスタマーに対し、ブリックスワースのハイパフォーマンス・パワートレインズ部門(HPP)が、F1のパワーユニット(PU)を含む最近の信頼性に関する一連の問題に懸命に取り組んでいることを保証した。
メルセデスがF1第10戦カナダGPで表彰台のトップに返り咲いたことを喜ぶ一方で、カスタマーチームで一連の不具合が起きたことから、メルセデスのエンジンの安定性に対する懸念が浮上した。
モントリオールにおけるジョージ・ラッセルの力強いポール・トゥ・ウインの走りは、チームに2025年シーズンのグランプリ初勝利をもたらした。さらに祝賀ムードを高めたのは、アンドレア・キミ・アントネッリがF1で初の3位表彰台を獲得したことだ。18歳の新人ドライバーにとっては大きな節目となった。
しかし、メルセデスPU搭載車が複数のレースで早期にリタイアするなど、最近の技術的なトラブルについて人々は眉をひそめている。
■問題が続くメルセデスPU
アントネッリは地元イモラでの第7戦エミリア・ロマーニャGPでリタイアを余儀なくされ、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)も第8戦モナコGPで同様の不具合でリタイアした。最近では、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)がカナダGPで停止し、有望とみられていたレースをリタイアすることになった。
これらの問題は、2026年のパワーユニットレギュレーションの準備にすでに取り組んでいるメルセデスHPPにとって、重要な局面で発生している。メルセデスは、2014年にV6ハイブリッド時代が始まって以来、歴史的に最も信頼性の高いパワートレインのひとつを提供してきたが、最近の一連の不具合によりその評判が損なわれる恐れがある。
こうした苦境にもかかわらず、ウォルフはHPPのマネージングディレクターであるハイウェル・トーマスが率いるチームに全幅の信頼を寄せ、同部門が信頼性の懸念の解決に全力で取り組んでいることを保証した。
「ハイブリッド時代が始まって以来、我々のエンジンは申し分なく、非常に強力だ」とウォルフはモントリオールで語った。
「今年は最終年であり、すべてのことが来年に向けられている。ハイウェルと彼のチームは、我々が抱えている信頼性の問題を完全に把握している」
■2026年の開発と同時進行で問題解決へ
2026年にはPU仕様の改正や電動化の強化など、大幅なレギュレーション変更が予定されており、メルセデスの開発の焦点は当然ながら今後のことにシフトしている。しかしながらウォルフは、この未来志向の戦略は現在の問題への対処を犠牲にするものではないことを強調した。
「何年もの期間を振り返ってみると、我々が経験した失敗は、統計的に非常にわずかなものだった。だから今、何が起こったのかを学ぶ必要がある」
「実際のところ、アレックス(アレクサンダー・アルボン)に何が起こったのかはわからない。確実に我々は理解して学ぶことになるだろう」
ウォルフの発言は、メルセデスが長期的なエンジニアリング能力に自信を持ち、これらのトラブルを軽視していないことを明示している。
メルセデスは2026年の新規則にもとづき、4チームにエンジンを供給する準備をしているが、信頼性の不安はすべてのカスタマーチームにとって最大の懸念事項となるだろう。冬の開発が急速に近づいており、HPPとブリックスワースのチームは、現在のエンジンの安定性を確保しながら次世代のパワーユニットを完成させるという、二重の課題に直面している。
差し当たりウォルフの保証は、メルセデスの実績あるエンジニアリング力に対する信頼と、短期的な信頼性の問題で全体像を曇らせないという決意を反映している。
[オートスポーツweb 2025年06月23日]