ひと昔前のアニメで“あるある”だった要素といえば、原作には影も形も存在しないオリジナルキャラクターが登場してくること。そうした設定は大抵原作ファンから厳しい目を向けられていたものの、時には人気が爆発し、アニメから原作へと“逆輸入”されることすらあった。
今回は『週刊少年ジャンプ』(集英社)のアニメ化作品から、とくに印象深い逆輸入キャラたちを取り上げてみたい。
『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空の父親として知られ、ゲームなどにも頻繁に登場するバーダックだが、実は元々原作には存在しないキャラクターだった。
すべての始まりとなったのは、1990年に放送されたアニメ『ドラゴンボールZ』の特別エピソード「たったひとりの最終決戦」。この物語の主人公は、惑星ベジータに住むサイヤ人の下級戦士・バーダックで、のちに孫悟空となる息子・カカロットが生まれるところも描かれている。
とある戦闘の中で未来を予知する能力に目覚めたバーダックは、フリーザの裏切りと惑星ベジータの滅亡を知ることに。そしてたったひとりで宇宙の帝王に立ち向かうも、あえなく敗れ去る……。それまでの『ドラゴンボール』にはなかった悲壮な物語で、視聴者に鮮烈な印象を刻みつけた。
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原作者の鳥山明もこのエピソードに感銘を受けたのか、バーダックを原作漫画へと逆輸入。第307話にて、わずか2コマではあるものの、フリーザの回想に登場させられている。そしてバーダックは一気に“正史のキャラクター”として存在感を増していった。
さらに単行本『銀河パトロール ジャコ』に収録されたオマケ漫画『DRAGON BALL−(ドラゴンボール マイナス) 放たれた運命の子供』では、鳥山自身が新たにバーダックを描写し、息子の未来を案じる父としての側面を与えている。その結果、アニメ版の無骨な戦士像から、より“原作らしい”ニュアンスをまとった新たなバーダック像が構築された。
バーダックの人気については、単純なかっこよさだけでなく、サイヤ人という種族のドラマや悟空のルーツに深みを与える存在ということが大きいだろう。原作の世界観をより豊かにしてくれるキャラクターだからこそ、逆輸入が歓迎されたのではないだろうか。
久保帯人によるバトルファンタジー漫画『BLEACH』にも、アニオリキャラが原作に逆輸入された例が存在する。それは京楽春水の斬魄刀・花天狂骨だ。
花天狂骨が初めて姿を見せたのは、アニメオリジナルの長編エピソード「斬魄刀異聞篇」。死神たちの斬魄刀が具現化して反乱を起こすというストーリーだった。
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そもそも花天狂骨は太刀の「花天」、脇差の「狂骨」からなる二刀一対の斬魄刀だが、実体化した姿はそれぞれ華麗な花魁のような女性と、少し幼いくノ一のような女性として描かれており、妖艶かつ派手なビジュアルによって多くのファンの心を掴んだ。
そして彼女たちは、原作漫画の最終章「千年血戦篇」で登場を果たすことに。戦いの中で負傷した京楽が斬魄刀と会話する場面では、花天の姿が明確に描かれ、さらに狂骨に関しても重要な設定が明かされている。
「斬魄刀異聞篇」に登場した数多くのキャラクターの中から逆輸入の対象に選ばれた2人は、『BLEACH』でも異例の扱いを受けた登場人物と言えるだろう。
逆輸入とは少々事情が異なるかもしれないが、「原作よりアニメで先に登場させられたキャラクター」というのも存在する。『テニスの王子様』シリーズにおける越前リョーガだ。
リョーガは主人公・越前リョーマの兄という設定で、初登場は2005年公開の劇場アニメ『テニスの王子様 二人のサムライ The First Game』。映画限りの存在かと思いきや、その後、原作の続編にあたる『新テニスの王子様』でまさかの再登場を果たした。リョーマ以上にトンデモなテニスを繰り出し、相手の能力をコピーして奪うという驚異のプレースタイルの持ち主だ。
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ちなみに作者の許斐剛は自身のX(旧・Twitter)で、リョーガは原作で出そうと温めていたキャラクターで、先にアニメ映画に提供したという経緯だったことを明かしている。
リョーマの兄、越前リョーガは20年程前の初めてのテニスの王子様劇場版の時に、原作で出そうと温めていたリョーマの兄を先にアニメ映画に提供しました🚢
テニスの王子様では結局登場タイミングが無く、新テニスの王子様で漫画に初登場させた時は感激しました。
そしていよいよ───
感慨深いです✨ pic.twitter.com/2lkjBXOzGI
— 許斐剛 (@konomi_takeshi) July 1, 2024
最近のアニメではオリジナル展開がご法度になりつつあり、オリジナルキャラを見かける機会がめっきり減っている。もしかすると今後、逆輸入キャラは幻のような存在になるのかもしれない。もし寂しい気持ちになったときは、今回取り上げた作品を振り返ってみてほしい。
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