
結論から申し上げると、ご飯のお供として毎日少しずつ食べる分には、何の問題もありません。しかし、おやつ代わりにバリバリと大量に食べてしまう習慣がある場合は、健康を損なう恐れがあるため、やめたほうがいいでしょう。主な理由は3つあります。分かりやすく解説します。
味付け海苔、食べ過ぎのデメリット1. ヨウ素の過剰摂取による健康リスク
海藻類には、「ヨウ素」が豊富に含まれています。ヨウ素は、私たちの体内で「甲状腺ホルモン」(サイロキシンやトリヨードサイロニン)の原料になります。「甲状腺ホルモン」は、酸素消費の増加、熱産生の増加、体温上昇などの「基礎代謝の上昇」や、糖代謝、タンパク質の分解、脂肪分解などの「代謝の促進」を担っています。そのため、一定量のヨウ素の摂取は必要で、海藻類は重要な摂取源です。
そして、1日のヨウ素の推奨摂取量は、成人男性・女性ともに0.13ミリグラムとされています。私たち日本人は日頃から昆布やわかめ、ひじきなどをよく食べる傾向があるため、ヨウ素が不足している人はほとんどいません。「頑張って海藻を食べてヨウ素を補おう」などと考える必要はまったくありません。
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ヨウ素が甲状腺ホルモンの原料になるなら、多く摂るほどいいのでは?と思いがちですが、実際はそうではありません。甲状腺ホルモンは、多過ぎても少な過ぎてもよくないのです。
常に適量がバランスよく働くよう、体内で産生量が調節されています。過剰にヨウ素を摂取すると、甲状腺ホルモンの産生は逆に抑制されてしまい、「甲状腺機能低下症」になることがあります。ですから、「海藻類は健康にいい」と思い込んで必要以上に食べると、健康を損なう可能性があると知っておくべきでしょう。
味付け海苔も海藻類の一種である海苔で作られています。海苔に含まれるヨウ素の量は、昆布やひじきよりも少ないため、そこまで神経質になる必要はありませんが、ヨウ素の摂り過ぎになるほど食べるべきではありません。
味付け海苔、食べ過ぎのデメリット2. 塩分の過剰摂取による健康リスク
さらに注意すべきなのは「塩分」です。味付け海苔は醤油などで味付けされています。特に韓国のりなどは、多量の食塩が加えられているため、バリバリと食べてしまうと塩分の摂り過ぎになりやすいです。
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味付け海苔、食べ過ぎのデメリット3. 繊維質豊富なため、胃腸が弱い人は注意
味付け海苔は、繊維質も豊富に含んでいます。いいことのように思われそうですが、胃腸が弱い方が食べ過ぎると、腹痛や下痢を起こすことがあります。味付け海苔にもさまざまな種類があり、体質にも個人差があります。そのため一概には言えませんが、栄養面から考えると8切なら1日2〜3枚が適量です。つい食べ過ぎてしまう方は、数枚ずつ個包装されたタイプの味付け海苔を「1袋だけ」と決めておくと、摂取量の目安になるので、おすすめです。
阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))
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