画像:「マツコの知らない世界」番組Xより7月8日に放送された『マツコの知らない世界』(TBS)では「30代からの婚活の世界」を特集。その内容にネットからはさまざまな声が集まりました。
◆“本気の婚活”をのぞく、30代男女のリアル
この企画は、初婚年齢が30代を超えて晩婚化が進む現代において、婚活激戦区とも言われる30代からの本気の婚活のリアルな現場を紹介するというもの。前回の「40代からの婚活企画」が大反響だったことから、今回の企画に至ったそうです。
番組では前回同様、東京都青山にある結婚相談所「マリーミー」を運営する婚活アドバイザーの植草美幸さんと、その娘のれいあさんが登場。本気で結婚したいという独身30代男性・女性に対し、植草さんがアドバイスをしつつ、実際に婚活パーティーに参加する様子が映されていました。
登場したのは「親に光熱費を払ってもらう年収約200万円で、菜々緒がタイプのラーメン店アルバイト・34歳男性」、「相手女性には年収500万円を求める身長158cm・年収300万円の飲食店アルバイト・35歳男性」、「相手男性に年収800万円以上を求める会社員兼モデル業をする年収500万円・31歳女性」などでした。
◆現実を見ろ!婚活アドバイザーの鉄槌
結婚相手に求める条件などを語る彼らに対し、植草さんは「言っていることすべてがドリーム」「図々しいにも程がある」「あなたくらいの女性は山ほどいる」などと辛口でコメント。相手に求める理想の高さや、結婚のために自分を見つめ直す必要性を植草さんが厳しく指摘する様子が、面白おかしく伝えられていました。
番組が放送されると、ネットでは切り取り動画や画像で今回の企画が拡散。「実際に婚活パーティーに行くとこんな男ばっかりだよね」、「こういう人たちは自分には甘いのに他人には厳しい」、「頭ハゲて親のスネをかじった年収200万のフリーターが誰かと結婚できると思える自己肯定感は羨ましいくらい」といった参加者たちへの批判的な意見が多く集まりました。
◆ヤラセじゃないけど素人でもない?“設定アリ婚活”のモヤモヤ
番組の構成上、婚活現場のリアルを伝えるとともに、「身の程をわきまえず理想の高い相手を求めるため、結婚できていない難のある独身男女」の生態をエンタメ色を強く打ち出していたことは明白です。実際、参加者たちの顔やスペック、異性に求める条件がテロップで表示され、植草さんがピシャリと釘を刺す、わかりやすい構造の切り取り動画がXで拡散され、コメント欄は大いに盛り上がった様子でした。
一方で今回の参加者たちは「婚活に興味のあるエキストラ事務所に所属している男女」として番組冒頭で紹介されていました。特に男性2人は役者業もしながらアルバイトで生計を立てているようで、ネット上に掲載されている役者業のプロフィールを特定した人もいました。
この状況に対し、「結局は素人ではなく売れてない役者か」、「ヤラセだとしても面白いからいいじゃん」といった意見が寄せられる一方で、本気で婚活をしている人たちからは「こういう番組のせいで婚活中の私たちまで非常識で理想の高い高飛車だと思われそうで嫌」、「真面目に婚活している人をバカにする流れを助長するのは、余計に非婚化を進ませるのでは?」として、番組への拒否反応や二次被害を訴える意見もありました。
◆結局、これは“婚活バラエティ”なのか?
実際、巷の恋愛リアリティ番組では俳優や女優、モデルなどの卵でありながら実家の家業や職歴のある職業を肩書きとして出演する参加者は少なくありません。それだけでなく、恋愛や結婚ではなく自分の会社の宣伝を目的として出演すると思われる経営者も珍しくありません。
すでに恋愛リアリティ番組に慣れている視聴者の中には、参加者が番組出演によって仕事が増えることを狙っていたとしても、「顔と実名を出して恋愛リアリティ番組に出演し、こちらを楽しませてくれるだけでありがたい」として、コンテンツ消費として番組を楽しむ人も多いです。
今回の番組でも確かに「婚活に興味のあるエキストラ事務所に所属している男女」という説明は口頭でありましたが、テロップで文言として表示されていたわけではありません。また、X上では切り取り動画や画像でもその「エキストラ事務所に所属している男女」という情報は当然わからない状態で拡散されました。
このような情報伝播のリスクや、婚活を扱う番組の在り方として「役者を使っているけどヤラセではないと言い逃れできる」状況は慎重に考えるべきだったでしょう。そして、切り取られて拡散された情報だけで「婚活している独身男女はこういうヤバい人たち」と我々が判断してしまうリスクも改めて如実になったのではないでしょうか。
コンテンツなのか本気のドキュメンタリーなのか。今回は「30代からの本気の婚活」と銘打っていることから、恋愛リアリティ番組とは毛色が異なるでしょう。たとえ彼らが本気で結婚を目指しているとは言っても、エキストラ事務所に所属し役者業をしている男女を起用したことが適切だったかどうかは疑問が残る形となりました。
未婚化や晩婚化が進み、恋愛や結婚が遠のいている現代だからこそ、恋愛リアリティ番組や婚活コンテンツに注目が集まるのは自然な流れです。しかし、だからこそコンテンツとして消費する上での線引きを番組を作る側にも視聴者側にも求められているのではないでしょうか。
<文/エタノール純子>
【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中