
参院選が終盤に入りました。
各党の獲得議席の見込みは?
関係者へのヒアリングや各社の情勢調査等を踏まえると、自民、公明は大幅に議席を減らし、参院で過半数を維持するための50議席の獲得はかなり難しい状況だと思います。立憲、国民民主、参政、れいわ、保守は議席増、維新は現状維持、共産は議席減、社民は議席獲得できるかどうか、といった見込みです。
32ある一人区について、前回(2022年)参院選では、自民が28、野党が4を獲得しましたが、今回は、情勢調査で野党優勢の方が多く、前回政権交代前の2007年参院選(全体獲得議席:自民37公明9)以来の厳しい状況といえます。複数区においても、これまで主要政党の指定席だったところに参政や国民が入り、変動を起こしています。
自公に対して、「目に見える大逆風が吹いている」というよりも、なんというか、「もうイヤだ・・」という冷徹な諦めや不信感が強くあり、それが、新興政党への強い期待感にもつながっています。
自民は、政党支持率は下がっているとはいえ、依然1位であるものの、支持層の半分しか固められておらず、公明、共産は、支持者の高齢化の一方で、若年層やコアな支持層以外への訴求が進みません。立憲、国民は労組票等も手堅く、一時期失速が指摘された国民ですが、若年層の支持は高いです。参政は、地方議員のほか党員・支持者を党や政策作りに参加させるといった手法で基盤を作り、新たな政策軸の提示で、他党支持層や無党派層も掘り起こしています。
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なお、今回参院選は、選挙戦の序盤から中盤で、情勢がかなり変化しました。ネットや報道で情勢や党首の声等がたくさん伝えられ、また大量に再生される動画等の影響も大きく、選挙の戦い方自体が、新たな時代に本格的に入っていることにも気付かされます。
自公が過半数割れしたらどうなる?
今回の参院選は「事実上の政権選択選挙」と言われますが、自公が過半数割れをしても、2009年衆院選のように、それまでの野党が圧倒的な第一党になって、政権交代が起こる、ということは想定されず、また、政策がバラバラのたくさんの野党がひとつにまとまる、ということも難しいと思います。
そうすると、現実的には、自公が、無所属や他党から一本釣りして引き込む、または、立民、維新、国民やその一部と連立を組む、あるいは、各政策ごとに個別に協力をしていくことで、なんとか法案や予算案を通していくということになります。自公が参政と連立を組む、という可能性もないわけではありませんが、自公内に新興政党への警戒感があることや、衆院では少数与党のままとなること、といった課題があります。
国民目線で見たときに、立国維のどの党にとっても、今の自公の側につくことはプラスにならない、という判断もあり得、その場合は、政策ごとに調整をするという不安定な状況が続くことになります。先の通常国会でも見られたとおり、政権は、野党側の撤回や修正要求に丁寧に応じていかなければ法案や予算案を通せませんので、国会運営が停滞することや、政策が一貫性の無いものとなったり、(必要性が高くても)世論の受けの悪い政策は実施できない、といった問題が生じることになります。
もちろん、政権が、緊張感をもって、謙虚に運営されることは望ましいことですが、決められない、政策がつぎはぎになる、といった状況が、長く続くとは思えず、政局はより流動的になるかもしれません。
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石破首相が続投するか、という点については、ご本人の意思や、火中の栗を拾おうという人材がいるか、また仮に、自民が新たな総裁を選んでも、少数与党の状況では、国会の首相指名選挙で選ばれる保証がない(野党側の候補が首相に選ばれる可能性もある)こともあり、このまま続投という可能性もあると思います。
日本政治のあり方が変わる?
私は今回の参院選は、日本政治のあり方を大きく変える分岐点になる可能性があると思っています。
日本ではこれまで、たとえ政権交代があっても、その後揺り戻しがあって、結局自民一強体制に戻り、長年に渡り、政権を担うのは基本的に自民党、という状況でした。これは世界の先進国から見れば、相当に珍しい状況です。今後、(紆余曲折はあると思いますが)政策協定等に基づく「欧州型連立政権」に移行していくのか、それとも再び、自民への揺り戻しがあるのか、あるいは、米英のような二大政党制の可能性も模索できるのか、いずれにしても、これまでの主要政党の議員や支持者の世代交代も相まって、旧来型の日本政治の転換点になり得るかもしれないと思います。
いずれにしても、与野党ともに「選挙前に聞こえの良いことをたくさん並べたが、結局実現できずに、失望を招く。あるいは、実現してみたものの、政策として妥当ではなく、結局、国民生活は良くならなかった。」といったことではない、きちんと責任を負う成熟した民主政治の実現と、国民の側にも、そういったことを見極める真摯な目が、強く求められていると思います。
◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。
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