再審制度の見直しを議論する法制審議会(法相の諮問機関)の部会で15日、法改正に向けた14項目の論点が示された。主要テーマとなりそうな証拠開示と検察側の不服申し立て(抗告)の禁止について問題点を整理した。
証拠開示
「裁判官にとって非常に悩ましい問題になっている」。現役裁判官の部会委員は4月の初会合で、再審請求審での証拠開示ルールが刑事訴訟法に明記されていない問題点を指摘した。
請求人側から見れば、再審開始には無罪を言い渡すべき明らかな証拠が必要となるため、確定審で提出されずに警察・検察が保有している証拠は幅広く検討対象としたい。これに対し、3審制で終わったはずの裁判で幅広い証拠開示を認めれば、事実上の「4審化」につながりかねないとの懸念が検察にはある。検察側に開示を勧告するかは裁判官の裁量に委ねられているのが現状だ。
法務省によると、15日の部会(非公開)は証拠開示のあり方の議論から始まった。部会委員らから「ルール化はぜひとも必要だが、通常の裁判とは制度が異なるため留意が必要」「開示の対象は、再審請求との関連性や必要性などを考慮することが考えられる」などの意見が出たという。具体的な開示の範囲をどう設定するかがポイントになる。
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検察の抗告権
現行制度では裁判所が再審開始決定を出しても、検察側は抗告ができる。ただし、再審の長期化の要因との批判も根強い。
2024年10月に再審無罪が確定した袴田巌さん(89)のケースでも、静岡地裁の再審開始決定(14年3月)に対して検察側が即時抗告した。その後、東京高裁から最高裁、最高裁が東京高裁に審理を差し戻し、再審開始決定が確定するまでに9年を要した。
日本弁護士連合会からの部会委員はこれまでの議論で、「検察側の抗告が冤罪(えんざい)被害者の迅速な救済を妨げている」と主張。検察側の抗告を禁止し、再審公判の場で主張を尽くすべきだと訴えた。
これに対し、検察官の委員は「抗告するかどうかは十分かつ慎重な検討を行っている」とし、抗告を禁止すれば、違法・不当な開始決定が是正できなくなると反論した。
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過去には三重県で1961年に起きた名張毒ぶどう酒事件や、鹿児島県で79年に男性の遺体が見つかった大崎事件で、検察側の不服申し立てにより再審開始決定が取り消されている。【三上健太郎】
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