「年をとるのも悪くない」中森明菜、還暦ステージで響かせた“いま”の歌声【ライブレポート】

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2025年07月17日 12:01  ORICON NEWS

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中森明菜、還暦記念イベントの模様
 歌手・中森明菜が60歳の誕生日を迎え、東京・丸の内のライブレストランCOTTON CLUBでファンクラブ限定の還暦記念イベントを開催した。7月12日から16日まで、昼夜あわせて9公演が行われる中、15日の昼公演も満員の観客が詰めかけた。

【ライブ写真】無二の歌声&表現力とMCのギャップでファンを魅了した中森明菜

 客席数は各回156人。ジャズの趣が漂う会場では、ファンが食事やドリンクを楽しみながら開演を待ち、非日常感と期待が静かに高まっていく。

■深みのある歌声に寄り添う、緻密で温かな演奏
 ライブは、バンドによるインストゥルメンタル「Prelude to ALDEA」からスタート。編成はアコースティックピアノ、バイオリン、ベース、ドラム、ギター、サックス&トランペットで、ベースをセンターに据えた変則的なステージ編成に自然と注目が集まる。そして「Days」のイントロが流れる中、赤いドレスにボブスタイルのウィッグ姿の中森が登場。「あきなー!」という歓声に笑顔で応えながら、深くしなやかなボーカルを響かせる。ストリングスや管楽器を生かしたジャズ/ボサノヴァ調のアレンジと、包み込むような演奏がその歌声に寄り添い、観客を静かに引き込んでいった。

 なお、この日のバンドは昨年のファンクラブイベントと同じ顔ぶれで、中森が発する一音一音にぴたりと呼応するような、緻密かつ柔軟なアンサンブルが印象的だった。ボーカルのブレスや間合いに合わせて、音量やテンポも自然にコントロールされ、語りかけるような歌声のニュアンスまでも的確に支えていた。

■飾らない言葉と笑顔でファンと交流
 MCでは、「お足元悪いなかありがとうございます」「足ビショビショになってない〜?」と、天候を気遣う声掛けで笑いを誘い、「一昨日、とうとう還暦を迎えさせていただきました」と報告し、「イジけるときもよくあるけど(笑)、年をとるのも悪くないですね」と言い添えてファンと乾杯。「だいすきー!」の声には、投げキッスで応えるチャーミングな姿も見られた。

 その後も「好きな曲はありました?」という問いかけに「全部!」と返された際は、「ウフフ、このウフフは“絶対ウソ”って意味だよ」と明菜節で応じるなど、観客とのやりとりも終始和やかで、笑顔の絶えないステージだった。

■ジャズアレンジで引き出される名曲の新たな表情
 演奏は全編を通じてジャジーなアレンジで統一されており、2曲目の「APPETITE」からはギターレス&ベースはウッドベースに持ち替えられ、さらに本格的なジャズの空気に包まれた。バイオリンと管楽器が交錯するスリリングなフレーズに、中森も情熱的な身振りで応え、視覚的にも楽曲世界を広げていく。続く「二人静」でも、しっとりとしたジャズのアプローチが楽曲の新たな表情を引き出した。

 「飾りじゃないのよ涙は」では、テンポを落としたムーディーなアレンジで、声の艶と深みがより際立つ。しゃがれ声をあえて活かしたフェイクやシャウトなど、ライブならではの表現が光った。演奏後には「盛り上がる曲なんじゃないの!?と思ったよね?」と茶目っ気たっぷりにコメント。観客との軽妙なやりとりも会場を温かく包み込んだ。

 中盤には、アコースティックギターとボーカルだけの最小構成で「予感」「陽炎」「OH NO, OH YES!」を披露。この日のアレンジにあわせて低音から吐息までも繊細に響くように調整したというPAと、中森のロー&ハスキーボイスの説得力が一体となり、濃密な時間を生み出した。

■おちゃめな姿と遊び心、圧巻のラスト
 そして終盤は、バンドが再び加わって演奏にもさらに熱が加わり、中森の情熱的なダンスが印象的だった「月華」、ラテンジャズ調の「I MISSED “THE SHOCK”」では中森の低音ボイスとギターカッティングが高揚感を生み出し、この日のハイライト的な盛り上がりを見せた。

 ラスト前のMCでは、観客からの「ウィッグ外してー!」の声に応じて本当に外しそうになるお茶目な素振りを見せたり、声優として参加したアニメ『あらいぐま カルカル団』のキャラクター“ボーカル”のキャラ声で「ミ・アモーレ」を披露するシーンも。肩の力の抜けたサービス精神でファンを喜ばせた。

 ラストの「I hope so」では、爽快感のある8ビートに乗せて、この日もっとも力強く、そして楽しそうに歌声を響かせる。ここで初めてセンターマイクのポジションから移動し、ファンと笑顔でコミュニケーションをとり、温かな余韻の中でライブは幕を閉じた。

 中森は体調不良からの復帰後、昨年7月のファンクラブイベントで6年半ぶりにファンの前で歌唱。12月には追加公演を行い、今年4月には野外フェス『ジゴロック 2025 〜大分”地獄極楽”ROCK FESTIVAL』にも出演した。さらに、先述のアニメ『あらいぐま カルカル団』では約33年ぶりに声優を務めた。

 還暦を記念した特別企画として、ファッションをテーマにしたポップアップストア『AKINA NAKAMORI 60th Birthday Special Collaboration with ISETAN』も22日まで東京・伊勢丹新宿店で開催。自身がセレクトしたアイテムや愛用品の展示に加え、デザイン監修を務めた伊勢丹限定のTシャツも販売されている。

■セットリスト
M01. Days
M02. APPETITE
M03. 二人静
M04. 飾りじゃないのよ涙は
M05. 予感
M06. 陽炎
M07. OH NO, OH YES!
M08. 月華
M09. I MISSED "THE SHOCK"
M10. I hope so

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