【独自】遠野なぎこさん死去「私も強く生きていくから、その姿を見て」摂食障害と闘った30年を語る

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2025年07月17日 14:00  週刊女性PRIME

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拒食過食を繰り返す近況告白をした遠野なぎこ 写真/本人提供

 17日、俳優の遠野なぎこさんが亡くなったことが親族を通じて発表された。死因は「現在、警察の見解によりますと、事故によるものであり、自死ではございません」とし、葬儀は近親者で執り行う予定だという。

 これまで頻繁に更新してきたSNSが途絶え約2週間、心配の声が上がる中での訃報にファンをはじめ業界関係者の驚きが隠せない。最後のSNSは6月27日のインスタグラムで鶏肉をフライパンで調理する動画だった。

 前日の同26日には「私、うつ病なんだって 知らなかった」と告白。これまで摂食障害に苦しんできたが、同じ病気を患う人たちの励みになればと包み隠さず語ってきた遠野さん。かつて週刊女性の独占インタビューでも、摂食障害発症当時のこと、「それでも私は強く生きていく」と力強く語ってくれた。

 彼女が病と向き合い続けた日々を振り返る。

「吐いたら太らない」告げた母も摂食障害

「普通の人みたいに3食きちんと食べるとか、そういう生活はできたことがないですね。この食べ物への恐怖心というのは一生治らないんじゃないかなって思います。頭ではわかっているんだけど、やっぱり痩せている自分に固執してしまう部分もあるし」

 遠野さんが摂食障害を発症したのは15歳のとき。子役として幼いころから芸能界で活躍し、大河ドラマ『八代将軍吉宗』や人気ドラマ『未成年』など話題作に出演してきた。

 しかし思春期で身体が丸みを帯び始めると、母親から「吐いたら太らない」とすすめられ、過食嘔吐をするようになる。当時は摂食障害という言葉自体まだ浸透していなかったころのことだ。

「まだ子どもだったし、母の教えですから、そんなに悪いことだとは思わなかった。摂食障害という言葉も知りませんでした。ただこれできれいになれる、これで太らないで済むんだという気持ちだった。でも実は、母も摂食障害だったんです。それを知るのはずっと後になってからでしたが

 母の言葉から、過食嘔吐をするように。そして間もなく拒食症になっていった。同時に自傷癖もあらわれ、仕事もままならなくなっていく。撮影当日にオーバードーズ(薬の過剰摂取)をした日もあった。精神科に連れて行かれ、そこで「3年間の休養が必要」とドクターストップを命じられた。

 休養が明けるころ、オーディションの話が舞い込んだ。再起をかけて挑戦し、見事合格。NHK連続テレビ小説『すずらん』の主演に抜擢され、芸能活動を再開する。

 以降、バラエティーにも進出し、歯に衣着せぬ発言でタレントとしても人気を博す。その順調な芸能活動の陰で、過食嘔吐と拒食状態をひそかに繰り返してきた。

「自分の意志ではどうにもできないのがこの病気の難しさ。朝起きて、パチンとスイッチが勝手に切り替わってしまうんです。過食になると、コンビニの食べ物をお腹がパンパンになるまで食べてはもどしたり。多いときで一日5回吐いたこともありました。もうまともな状態ではないですよね」

結婚の理由は一緒にいて、摂食障害が良くなったから

 症状が悪化する原因は、ストレスや不安、孤独感。長くこの病気と闘い、彼女なりの傾向もわかってきたという。

「異性関係が充実していると不思議とおさまったりすることがあって。依存と言ったら言いすぎですけど、何か夢中になれる対象がないとダメ。寂しいという気持ちを埋めようとするのかもしれません」

 これまで3度結婚と離婚を繰り返してきた。やはりそれも安心感が欲しかったから。

「結婚したのは全部、摂食障害が一時的に良くなったのが理由でした。おいしいねって一緒にご飯が食べられて、感動して結婚したんです。それをメディアで言ってもわかってもらえないだろうから、あえて言わなかっただけで……」

 好きな人と食事をしながら笑い合う。カップルなら当たり前にあるそんな瞬間も、できるとは思っていなかった彼女にとって「ものすごくびっくりする出来事だった」という。けれどその幸せも長くは続かなかった。

 1度目の結婚生活は72日間、2度目の結婚生活は55日間で、3度目の結婚は14日後に離婚し、スピード離婚と騒がれた。

「最初は幸せでも、少しでも相手のあらが見えたり、結婚生活の中で何か不安に感じることがあったりすると、すごいストレスになってしまって。もうここから逃げられないんだと思って、症状が以前より悪化してしまったりするんです。結婚前はこれで病気が良くなるものだと思い込んでいて、そこまで想定していませんでした。甘かったですね」

お尻の骨が浮き出てお腹はぽっこり

 気持ちはひとまず安定しても、摂食障害がもたらす身体へのダメージは大きい。

「体力はかなり落ちています。寝るのも体力って必要なので、不眠症にもなって、30分に1回は目が覚めてしまう日が続いていて。筋肉はほとんどないので、お尻の骨が浮き出ていて、お腹は逆にぽっこり膨らんでいる感じ。栄養がとれていないので、立ちくらみもするし、抜け毛もひどい。お風呂場はもうホラー映画みたいになっちゃってます

 15歳から30年近く摂食障害と闘ってきた。これから先、どう病気と向き合っていくのだろう。

この病気と共存していくしかないんでしょうね。普通の人みたいに食べるというのはちょっと厳しいんじゃないかと思います。例えば海外に行ったりとか、環境を大きく変えたりすると良くなることもあるんでしょうけど。でもいつ爆発するかわからない爆弾を抱えている状態なので」

 自身の摂食障害を公表し、闘う姿を発信する。そこには同じ病気を患う人たちに対するひとつの思いがあるという。

孤独じゃないよっていうことを伝えたい。摂食障害でもちゃんと仕事もできるし、笑顔でいられる。私も強く生きていくから、その姿を見ていてほしいなって思います。

 陰で吐いたり拒食になったりしてる人間がここにもいるんだよと、でも笑顔で頑張っているんだと思ってほしい。周りに理解されないし、死にたくなるくらい苦しい。でもひとりじゃないからねと、わかってる人間がいるんだよって、伝えられたらと思っています」

 遠野なぎこさんのご冥福をお祈りします。

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