フレッシュネスバーガーの店舗数が、6年ぶりにわずかに増加した。2025年4月時点での店舗数は157店舗、前年4月は155店舗であったため、2店舗の微増だ。同店は2019年に店舗数を大きく拡大し、2020年4月には185店舗に達したが、その後は減少傾向が続いた。
しかし、フレッシュネスバーガーの最盛期は2007年で、当時の店舗数は192店舗だった。現在もこの数は超えておらず、いわば「200店舗の壁」に直面している状況だ。
つまり、決して悪くはないが、かといって順調とも言えない、そんな“パッとしない”状態が続いている。実際、現在は外食大手のコロワイドの傘下にあるが、それ以前はユニマットグループのもとで展開されており、これまでに親会社が何度か変わるなど、どこか安定感に欠ける印象だ。
それは、一体なぜだろうか?
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●指摘されている「オペレーション」の問題
フレッシュネスバーガーはほっかほっか亭の創業者の一人である栗原幹雄氏が創業したハンバーガーチェーンだ。コンセプトは「大人がくつろげるバーガーカフェ」で、作り置きの商品を手渡すことが一般的だったファストフードに対し、注文が入ってからパティを焼き上げたり、素材にこだわったヘルシーなメニューを売りにしたりしていた。
「カフェ」というコンセプトの通り、ジェラートやベーカリーなど、ハンバーガー以外の商品も積極的に販売し、内装は木目調で手作りのような温かみがある
ファストフード業界内の立ち位置でいえばモスバーガーに近いが、単価はフレッシュネスバーガーの方が高い。シンプルなクラシックバーガーは640円で、モスバーガーの定番「モスバーガー」が470円であるのに対し、200円ほど高い。クラシックバーガーセットにすると、1000円を軽く超える。
もちろん、客単価が高いからダメ……というわけではない。問題は、商品にこだわることによる副作用だ。
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筆者がフレッシュネスバーガーについて消費者への調査をしていると、「提供スピードが遅い」という意見をよく耳にする。注文されてからバンズを焼き上げることもあり、作り置きと比べると、提供までのスピードが遅くなってしまう。
価格は高めだが、業態はあくまでファストフード。ファストフードとしては提供スピードが求められるが、その点で消費者の期待とずれている印象もある。全ての店舗で提供が遅いというわけではないが、マクドナルドなどと比べると、提供時間に対する不満が出やすい印象がある。
また、店舗の運営において問題になりがちなのが「店内清掃」だ。ファストフード店を運営する上で特に重要なのが「クレンリネス」、つまりお店の清潔さである。この点についても疑問を呈する声は多い。例えばある記事では、「フレッシュネスバーガーはQSC(品質・サービス・清潔さ)の中で、特にクリンネス(清潔さ)のレベルが低い。収益水準が低いため、店舗改装などへの再投資ができていない」と指摘されている。
こうしたオペレーションの問題などから、フレッシュネスバーガーは爆発的に店舗を拡大しづらくなっているのではないだろうか。
●ハンバーガー業界での「ポジショニング」も見えづらい
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これは、より本質的な問題にもつながっている。「ハンバーガー業界内でのポジショニング」だ。
フレッシュネスバーガーはファストフードとしては高単価な部類だが、価格が1000円以上のいわゆる「グルメバーガー」に位置付けられるほどではない。グルメバーガーは1990年代に日本で誕生し、複数回のブームを経て、2010年代にその数を大きく増やした。価格が高い一方で、製法や素材などにこだわっており、フレッシュネスバーガーよりも上位に位置付けられる存在だ。
つまり、フレッシュネスバーガーは、安くて気軽に行けるファストフードともいえず、製法や素材にこだわったグルメバーガーでもないような、どっちつかずの状態にあるのだ。
この中途半端さが、フレッシュネスバーガーのオペレーションの問題を際立たせてしまっている。例えば、グルメバーガーであれば、提供にある程度時間がかかっても許されるだろう。顧客は「高単価で良いものをゆっくり食べたい」と考えて店に来ているからだ。
しかし、フレッシュネスバーガーの場合立ち位置がはっきりしていないため、マクドナルドなどと比較されて「ちょっと遅いな」と思われてしまう。また、店内清掃が行き届いていなければ、「ある程度高いのだから、もっときれいであってほしい」と思われてしまうのだ。
いずれにしても、その“微妙な立ち位置”のせいで、フレッシュネスバーガーは選ばれにくい存在になってしまっている。
しかも、同店の誕生は1990年代で、すでにマクドナルドやモスバーガーなどが大きくシェアを広げていた。後発組として誕生しているため、店舗網を広げて「とりあえずフレッシュネスバーガーに行くか」という状態も作りにくい。あらゆる点で「中途半端」になってしまっているのが、フレッシュネスバーガーなのだ。
それに加えて、一定の店舗数を持ち、一般認知度の高いハンバーガーチェーンには、それぞれに明確な「個性」がある。
チェーンの中でも最も早く展開を始め、圧倒的な数を誇るマクドナルドに、「対マクドナルド」の意識を強く持ちながら国内2位の店舗数となるまで規模を拡大したモスバーガー。また、圧倒的な量のインパクトで、日本で再ブレイク中のバーガーキングなど、それぞれの店は業界内での立ち位置が分かりやすい。
それに対して、フレッシュネスバーガーは「モスバーガーっぽい」という、あいまいで消極的な認識にとどまっており、特徴が分かりづらい。
●打開策はどこにある?
もちろん、フレッシュネスバーガーの店舗数は微増であることから、「苦境」とまではいえない。ただ、ここ数年でもハンバーガーチェーンは増えており、競合は多い。
特にロッテリアは、「ゼッテリア」という少し高めの商品を提供する業態を増やしつつある。これらは、フレッシュネスバーガーにとって大きな脅威となるだろう。そのため、このまま「個性」を出せずにいると、フレッシュネスバーガーに本当の意味での「危機」が訪れるかもしれない。
では、その打開策はあるのだろうか。
前述の通り、フレッシュネスバーガーは創業以来「バーガーカフェ」をコンセプトとして掲げており、他のファストフードと比べて、カフェメニューが充実していることを特徴としてきた。筆者の個人的見解だが、ここに発展の余地があると考えている。
特に都心部を中心にチェーンのカフェはどこも盛況であり、その数は増え続けている。背景にはコロナ禍を機に普及したリモートワークや、飲み会需要減少があると考えられる。こうした需要の受け皿になっているのが、チェーンのカフェなのだ。これらの「カフェ需要」を満たすことで、フレッシュネスバーガーがシェアを拡大できる可能性はある。
こうした方向性で出店を拡大するのか、あるいは全く異なる戦略で店舗を増やすのか。いずれにしても、難しいかじ取りが求められている。
(谷頭和希、都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家)
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