
九州エリアの動物愛護センターに、お父さん犬を除く一家で保護されたワンコ親子がいました。どういうわけか母犬の左前足先が欠損しており、人間を前にとにかく怯えており、ガタガタ震えながら伏せた姿勢でお漏らししてしまいました。
その様子は、過去に人間から虐待を受けたトラウマから来る行動のようにも見え、胸が苦しくなります。
また、子犬たちは成長具合がバラバラで、複数回の出産によるきょうだいたちのようにも見えます。母犬は、自分自身も人間がとにかく怖いはずなのに、子犬たちを守ろうと自ら盾になるような素振りを見せていました。
意図的に一家全匹とも棄てられた可能性
しかし、どうしてこのワンコ一家は動物愛護センターに収容されることとなったのでしょうか。
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筆者は「もしかして野犬の一家かな」と思いましたが、動物愛護センターの職員や保護団体などの目から見ると、飼い犬だった可能性が高いと言います。そして、元飼い主が母犬に不妊手術などを行わなかったため、複数の子犬を生んだのだろうとも。
通常、一気に複数のワンコ一家がいきなり姿を消したのであれば、飼い主からの捜索があるはずですが、動物愛護センターには問い合わせはナシ。意図的に一家全匹、棄てられた可能性が高そうでした。
子犬のうちの1匹にバベシア感染の疑いが
このワンコ一家の存在を知った宮崎県の保護団体・咲桃虎(さくもんと)では、一家まとめて保護を決意。献身的なお世話をしながら。母犬はもちろん、子犬たち全匹にぴったりの家族を探すことにしました。
保護後、子犬のほうから里親さんが決まっていきましたが、このうちの中に「ソウタ」と名付けられたワンコがいました。
「ずっとのお家」を見つけることができ、このまま幸せな日々を送っていくのだろうと思われましたが、譲渡からわずか2日後に、里親さんから団体の元に連絡がありました。
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聞けば、「ソウタの歯茎の色が白すぎる。動物病院に連れて行こうと思う」というもの。
動物病院には団体メンバーも同行し、獣医師の診断を一緒に聞くことにしました。しかし、ここで告げられたのは耳を疑うソウタの診断結果でした。
「バベシアという感染症の疑いがあり、重度の貧血が見られます。数値だけでみれば、余命2〜3日ほどだ」
幸い母犬も子犬たちも元気いっぱいで成長中
実は動物愛護センターでの収容時、ワンコ一家のうち子犬2匹が突然死していました。この際の病名はわからなかったものの、今思えばバベシアの影響だったのではないかとも疑われました。
幸い、ソウタは獣医師の適切な医療処置により一命を取り留めました。団体ではまだ譲渡先が決まっていないワンコたち全匹にバベシアの検査を実施。それぞれやはり体調に問題がありましたが、ここからしばらく繊細な治療を行い、残ったワンコ一家は全匹とも完全回復しました。
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以降、ワンコ一家は、母犬はもちろん子犬たちも常に元気いっぱいで、エサもモリモリ食べている毎日です。ここまでの紆余曲折を乗り越えたワンコ一家に「ずっとの家族」が現れ、第二の犬生へと繋がっていくことを祈るばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)