実はたくさんある「選挙に関する特許」マイナンバーカードで電子投票、光る掲示板…ユニークな特許3選

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2025年07月18日 21:20  All About

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実は選挙に関する特許は多数存在しています。そうした特許の中から、今回は、将来実現するかもしれない電子投票システム、電子掲示板、選挙当落予測システムの3つを取り上げてそれぞれの特許内容を解説します。※画像:PIXTA
2025年7月20日に、第27回参議院議員通常選挙が行われますが、今年は例年以上に、SNSなどを中心に選挙に関する話題で盛り上がっているように見受けられます。

そんな選挙に関する特許が、実は多数存在しているのをご存じでしょうか。今回は、そうした選挙に関する特許の中から将来実現するかもしれない、ユニークな特許を取り上げてみたいと思います。

マイナンバーカードを利用した電子投票システム

まずは、日立製作所が2020年に特許を取得した、電子投票システム(特許第6710467号)を取り上げます。

実は、電子投票に関する特許というものは、この日立製作所の特許以外にも多数存在しており、パナソニック、ヤフー、富士通などが特許を有しています。

電子投票に関する特許は、近年ではブロックチェーン技術を利用したものが多い中、日立製作所が特許を有する電子投票システムは、“マイナンバーカード”を利用している点に特徴があります。

具体的には、次のような特許内容となっています。

1:銀行などのATMにおいて、マイナンバーカードを用いて本人認証をし、本人であることが確認できれば、そのままATMから選挙投票を行う。

2:ATMに備え付けられたカメラを通じて不正がないかをチェックする機能を有する(例えばATMの前に複数の人がいる場合は、不正の可能性ありとして投票処理を中断するなど)。

電子投票を実施するには、本人認証をどのように行うのかがポイントの1つとなります。本人認証のために選挙前に有権者へ電子投票カードを送付して、その電子投票カードなどを用いて本人認証を行うようにする、といった電子投票に関する特許もあります。

しかし、そのような電子投票カードをわざわざ送付するよりは、マイナンバーカードを用いて本人認証する方が手間も省けてより確実でしょうから、この日立製作所が特許を有する電子投票システムは、そのような意味で将来実現する可能性があるのではと筆者は考えます。

図1、2が、この電子投票システムでATMを通じて電子投票をする際のATM画面のイメージです。
図1:電子投票システムによる投票画面イメージ ※画像:特許情報プラットフォーム

図2:電子投票システムによる投票画面イメージ ※画像:特許情報プラットフォーム

なお、上記の特許を利用したものではありませんが、電子投票による公職選挙は、2002年に電子投票条例を定めた上で岡山県新見市長・市議選において初めて行われたのを皮切りに、2024年の四條畷市長選挙・市議会議員補欠選挙までに合計26回行われています。

しかし、これらのいずれも投票所まで有権者が出向いてパソコンやタブレット端末などを使って投票するといった仕組みのものであり、日立製作所の電子投票システムのように投票所に行かずにインターネットで投票するといったものではありませんでした。

今後、科学の発展などにより技術力が向上していくことで、先述した特許のようなインターネットを利用した電子投票システムが将来実現する可能性があるのではと思います。その際に、マイナンバーカードで本人認証を行う仕組みにすることは大いに考えられるところではないでしょうか。

新しい選挙掲示板

続いては、丸善グループが2023年に特許を取得した、電子掲示板(特許第7292590号)を取り上げます。

選挙になると街中に登場する、候補者のポスターが貼られる選挙掲示板を、電子化しようという特許です。

具体的には、次のような特許内容となっています。

1:公示日になると、立候補者の氏名、顔、所属政党などの情報が一斉に表示される電子掲示板。

2:電子掲示板に表示されている特定の立候補者をタッチすると、画面が切り替わりその立候補者の政策などを表示できるようにする。

図3が電子掲示板のイメージです。
図3:電子掲示板のイメージ ※画像:特許情報プラットフォーム

選挙に関する特許はいろいろとありますが、選挙掲示板に関する特許は比較的少ないです。そうした中、この丸善グループの特許は実現可能性もあって面白そうではあります。

選挙掲示板は、長年あまり代わり映えしていないものなので、このように電子化がされれば、近未来感もあってより選挙に興味をもつ有権者が増えるかもしれません。

電気代がかなりかかりそうだなとか、メンテナンスなどで結局人手が割と必要になりそうだなといった課題も浮かぶところではありますが、将来実現する可能性は大いにあり得ると思います。

政党への追い風・逆風も加味して選挙を予測

最後は、富士通が2024年に特許を取得した、選挙当落予測システム(特許第7582016号)を取り上げます。

実は、選挙の当選・落選の予測システムにも特許が多数存在しています。しかし、この富士通の特許は、政党への追い風・逆風も加味して当選・落選を予測するという点が特徴的であり、具体的には、次のような特許内容となっています。

1:ニュースサイトの政治記事やSNSの投稿内容などに基づき政党への追い風・逆風を数値化して加味した上で、選挙の立候補者の当選・落選を予測する。

2:政党への追い風・逆風を加味する際、立候補者を一律に加味するのではなく、追い風や逆風の影響を受けづらい属性の立候補者にはあまり影響がないように補正する(例えば、世襲で地盤の強い議員や大臣経験者などはあまり追い風・逆風の影響がないようにし、新人立候補者などは逆に影響を受けやすいようにするなど)。

政党への追い風・逆風を数値化したもののイメージは、図4の通りです。
図4:政党への追い風・逆風のイメージ ※画像:特許情報プラットフォーム

この政党への追い風・逆風を加味して予測するというのは非常に面白いと思います。実際の選挙でも、そうした追い風や逆風によって大波乱の結果になることもよくありますからね。そういう意味では、とてもリアルな予測システムではないかと思います。

今回、選挙に関する3つの特許を取り上げましたが、他にもさまざまな選挙に関する特許があります。

こうした特許が、将来実現して、より選挙が面白くなっていくと、より投票率が上がるかもしれませんので、そのような意味でも今回取り上げた電子投票システムや電子掲示板のような特許が将来実現していくといいなと筆者は考えます。

藤枝 秀幸プロフィール

大手IT企業などでSEとしてシステム開発などに従事した後、2009年に「藤枝知財法務事務所」を開業。以降、IT分野やエンタメ分野を中心に契約書業務や知的財産業務を行う。メディアや企業のコンテンツ監修なども手がけている。All About 弁理士ガイド。
(文:藤枝 秀幸(弁理士・行政書士))

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