中国海軍の空母「遼寧」(写真上)と「山東」=いずれも6月17日、太平洋上(防衛省統合幕僚監部提供) 中国海軍の空母「遼寧」と「山東」が6月に太平洋上で同時に確認された際、米空母打撃群の迎撃を想定した演習を実施していたことが分かった。台湾有事を見据え、米軍の接近を阻止する動きを確認していたとみられる。複数の日本政府関係者が18日、明らかにした。
空母2隻は6月7日以降、中国が台湾有事の際の防衛ラインと位置付ける小笠原諸島とグアムを結ぶ「第2列島線」付近の太平洋上で、同時に活動しているのが初めて確認された。
防衛省によると、遼寧は同7日ごろ、第2列島線を越えた南鳥島付近を起点に数日かけて西に航行。これと同時期に山東は沖縄本島南方から沖ノ鳥島北方を通過する形で東に向かった。政府はこの動きについて、遼寧が米空母役となり、中国軍が迎え撃つ形式の訓練を行ったと分析している。
同省関係者によると、空母は通常、周辺に原子力潜水艦などを伴って航行する。米軍は、他国空母と接近した際、不用意な衝突を避けるため500カイリ(約930キロメートル)程度の距離を取るとされる。中国軍が行った演習で遼寧と山東が接近した際、同様の距離を取る動きが見られたという。
中国空母を巡っては同7日と8日、警戒監視中の海上自衛隊P3C哨戒機に対し、山東搭載のJ15戦闘機が異常接近する事案が発生した。自衛隊幹部は「演習への影響を嫌ったけん制であったことは明らかだ」との見方を示した。
5月下旬以降、日本近海では両空母の艦載機による発着艦が計約1100回に上っている。防衛省は中国が台湾有事を見据え、遠洋での作戦能力向上を進めているとみて警戒を強めている。