未成年者の選挙運動の自由を求めて提訴した原告の(手前左から)宮田香乃さん、竹島一心さんら(原告側代理人提供) 若年層の投票率向上は20日投開票の参院選でも課題となっている。選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる改正公選法が成立してから今年で10年だが、未成年者による選挙運動は禁じられたままだ。未成年者の保護などが理由とされるが、「若者の政治参加を萎縮させている」と訴え、同法の違憲性を問い提訴した学生がいる。
原告は2月の提訴時、16〜18歳の高校生だった4人。未成年の選挙運動を禁止する規定は表現の自由を定めた憲法に違反しており、選挙運動の機会を奪われたとして、国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。選挙権を持たないからこそ、意思表示の手段として運動の自由は保障されるべきだと主張している。
この規定は1952年に定められ、未成年者を大量動員した選挙運動の阻止や心身未成熟な未成年者の保護が目的とされる。
提訴後に大学生となった宮田香乃さん(18)=大分県別府市=は、2023年の統一地方選で立候補した知人へのSNSでの応援を断念した経験がある。「自発的な運動もできないのは理不尽。声をちゃんと聞いてほしい」と語った。
宮田さんは「18歳になったら突然選挙に行けと言われても難しい」と指摘。選挙権を持つ前から自分のこととして政治と向き合う必要性があると強調する。
「政治的表現の自由は大事な権利」。高校3年の竹島一心さん(18)=兵庫県尼崎市=は、昨年の県知事選で、ブログに特定の候補者への投票を後押しする投稿をしようとしたが、規定に抵触する可能性に気付き、諦めた。「社会から排除されているような気持ちになり、すごく悔しかった」と振り返る。
原告代理人によると、同規定の違憲性を巡る訴訟は初という。5月に開かれた第1回口頭弁論で、国側は請求棄却を求めて争う姿勢を示している。
主権者教育に詳しい東洋大の林大介准教授(公共政策)は、同規定の目的に一定の理解を示しつつ、政治に対する若者の関心を高める機会を奪っていると説明。主権者教育の推進に向け、「当事者意識を持てるような環境を整えることが大事だ」と話した。