祖母の一周忌、有名大学出身のお坊さんが語ったのは「ワイドショーで見た話」 天才ピアニストとグレタさんの話題に親族ぽかん…消えた“ありがたみ”

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2025年08月11日 18:30  まいどなニュース

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実はどこかビジネスライクだったお坊さん ※画像はイメージです(sand555/stock.adobe.com)

お盆の法事では、親族が集まり、故人を偲んでお坊さんの説法に耳を傾けることも多いです。兵庫県在住のKさん(40代)は、信仰心のあつかった祖母の一周忌で、かつて祖母が深く信頼していた住職の話に違和感を覚えました。語られたのはワイドショーで見たような話題ばかり。親族が静かにうつむく中、Kさんは“ありがたさ”とは何かを考えさせられたといいます。

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尊敬されていたはずのお坊さん

Kさんは、亡き祖母の一周忌の法事のため、家族とともに夫の実家へ里帰りしました。法事に来てくれたのは、かつて祖母がとても尊敬していたお坊さんです。祖母は信仰心が篤く、日常的に仏壇の前で手を合わせ、法話のある日には欠かさずお寺に通っていたといいます。

そのお坊さんは京都の有名大学出身だといい、「こんな山奥の村に、とてもすごい学校を出たお坊さんなんて、ありがたいなぁ」「高野山で修行したんや。立派やなぁ」と話すのが祖母の口癖でした。祖母の葬儀の際も、このお坊さんが読経をしてくれましたが、その後、少しずつ「尊敬」の気持ちに変化が生じていたといいます。

家族葬という形で、簡素ながら丁寧に送りたいという親族の意向で伝えていたにも関わらず、葬儀の前に、住職へお布施の目安を確認すると、「〇〇家ですと××円ぐらい」と伝えられました。10年ほど前に祖父が亡くなった際は喪主である義父も現役で、参列者も義父関係が多く、大規模な葬儀だったのですが、今回は義父も引退していて、家族葬です。それにもかかわらず、提示された金額は以前の大規模葬儀時を思わせる水準で、喪主の義父と伯母たちは顔を見合わせ、「ちょっと、がめつくない?」とひそひそ話をしていたのをKさんは覚えているそうです。

一周忌での法話は

祖母の一周忌にも、やはりそのお坊さんが来て、読経をしてくれました。宗派に沿った読経は所作も丁寧で、そこには確かにプロとしての貫禄が感じられました。

しかし問題はその後でした。読経とお焼香が終わり、最後にお坊さんの「ありがたいお話」が始まりました。ところが、Kさんが先日たまたまワイドショーで見た内容とそっくりの「10歳の少年ピアニストがヨーロッパで単独公演を行った話」が語られ、続いて「グレタ・トゥンベリさんが15歳で世界に向けて行動を起こした話」が紹介されたのです。

「S子さん(祖母)にも、10歳のころがあったでしょう。そのころの姿を想像してみてください」と語るお坊さん。しかし、祖母は戦前生まれ。農村で育ち、小学校を卒業したあとは家の畑を手伝いながら暮らしてきた人です。

祖母の10歳といえば、ネットもSNSもない時代。雨の日にぬかるんだ畑で草取りに追われていた頃のはずです。

ピアニストや気候活動家の例え話に、誰ひとりとして祖母の姿を重ねることができず、親族一同は黙って天井を見つめていました。

「あれはいったい何の話だったんだ」

「あれはいったい何の話だったんだ」「まったくオチが分からなかった」

法要が終わり、お斎(おとき)の席に移ると、親族のあいだではそんな声がささやかれていました。お坊さんも悪い人ではないようですが、「ありがたさ」とは、知識の多さや語彙の巧みさだけで決まるものではないのかもしれません。

祖母が尊敬していたのは、そのお坊さんの「学歴」だったのではないか。仏道者としての肩書きだけを見て、「とても偉いお坊さん」として信じていたのかもしれません。しかし実際に接してみると、どこかビジネスライクで、語る内容もワイドショー頼りという現代的なお坊さんだったようです。

それでもKさんは、祖母はやはりそのお坊さんを信じていたのだと思っています。どれだけ法話が滑っていても、どれだけ費用が不透明であっても、家の仏壇やお墓の前でお経を聞き、何度も手を合わせていた祖母の姿が今も目に浮かぶといいます。

今度の法事では、もっと祖母の人生に寄り添ったお話が聞けたらいい――。そんな願いを込めて、Kさんはそっと祖母の遺影に手を合わせました。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)

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