年内に動く経済対策は「ガソリン減税」だけ?新総裁に求められる経済再生の課題【Bizスクエア】

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2025年10月08日 07:03  TBS NEWS DIG

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10月下旬にも利上げか…?そんな憶測も飛び交っていた中、自民党の新総裁が決まった。新しく誕生する政権に、今求められる財政・金融政策とは?

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「早期利上げ」?日銀委員が注目発言

自民党総裁選が終盤を迎えた週、住宅ローンなど私たちの生活にも影響がある「日銀の利上げ」の可能性について、“ある発言”が注目された。

発言の主は、日本銀行の野口旭審議委員。

金融政策を決める委員の中では“利上げに慎重”と見られている人物だが、9月29日の講演で、「2%の『物価安定の目標』達成は着実に近づいている。それは政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつあることを意味している」と述べたのだ。

この発言に、早期の利上げ観測も出ていて、金融・財政政策が専門の矢嶋さんも利上げの声が大きくなっていると話す。

『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
「日銀の政策委員9人の中で、恐らくもう利上げが多数派になってきている。問題は時期をいつにするか、そういう段階になっていると思う」

つまり、植田総裁はじめ執行部3人が決断すれば利上げが決まる情勢だというが、大阪で講演した植田総裁は−

『日本銀行』植田和男総裁(3日):
「景気は一部弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」

そして、今後の金融政策については「見通しが実現していけば引き続き政策金利を引き上げる」としながらも、一方で「上振れ・下振れ双方向のリスクを丹念に点検し、予断を持たずに適切に政策を判断していく」とした。

利上げするのかしないのか、どちらとも取れる発言だが…

矢嶋さん
「ここ数週間で市場は、日銀の10月12月1月の3会合のどこかで100%利上げがあると見ているので、そういう意味では市場に対しての織り込みはもう終わっている。なので問題は3会合のどこでやるかというタイミング。それから、トランプ関税の影響が秋に強く出るだろうと思っていたところが、経済統計を見ると『どこに出ている?』というぐらい“経済が強い”というのが、日銀の前倒しの観測につながっていると思う」

日銀短観「トランプ関税の悪影響」皆無?

日銀が3か月に1回、企業の景況感を調べる「日銀短観」。

1日に発表された、9月短観では
▼【大企業・製造業】の業況判断指数は「+14」と6月短観より1ポイント上昇
▼サービスや金融などの【大企業・非製造業】は「+34」と、6月短観から横ばい

――トランプ関税の影響で製造業は6月・9月ともに下がるのではと言われていたが2期連続の改善。非製造業も実質賃金が物価高で抑えられているので心配されていたが高い水準を推移している。

『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
「6月短観の調査では、企業に今年度の設備投資や収益がどのくらいになるか計画を聞いている。9月調査では6月に比べて、企業が利益の予想や設備投資の計画を上方修正している。企業も前向きになっているので、“トランプ関税による景気の悪い影響は全く出ていない”という見方もできる」

――思っていたほど、トランプ関税で傷ついてない、日本の自動車産業は依然として競争力があると?

矢嶋さん:
「見方は二つあって、15%の関税にびくともしないぐらい強いというもの。もう1つは、関税が引き上げられる前にいろんなものが動いているので、それがまだ9月ぐらいまで続いていて状況が良いという見方。そうなると今後“反動減になる可能性”もある」

「今のうちに利上げ」という思惑も?

利上げへの重要な要素である「物価」は、今後どうなるのか?

消費者物価指数はここのところずっと前年同月比3%超だったが、ニッセイ基礎研究所の見通しでは、「2026年度1.6%」を予想している。

『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
「これは上昇率なので、プラスということは物の値段はこれからも上がる。ただ、ここ数年はものすごい幅で上がったが、今後は上がり幅が減るので上昇率が下がっていくという見通し」

――そうなると、2%目標を掲げているのだから利上げをするような状況ではないという意見もある。

矢嶋さん:
「そういう意見も当然あるので、政策担当者からすると『物価が高いうちに利上げをしちゃいたいよね』という思いも出てくるだろう。それと、アメリカの利下げがこの先きつくなってくると、やはり何か動いたときに円高などのリスクを背負うぐらいだったら、今の良い状況のうちに利上げをした方がいいと思う人も出てくる。9月にETFの売却を決めたが、市場に対して影響がないということを一応確認できている。そういう意味では次の手を打ってもいいのではという判断になるのではないか」

新政権に求められる「経済対策」

では、新政権の経済政策はどこが焦点になるのだろうか?

▼消費税減税▼給付金▼ガソリン減税▼年収の壁▼コメ価格▼電気ガス補助▼賃上げ促進▼トランプ関税対策

『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
「大きくは物価対策とトランプ関税の対応になると思うが、トランプ関税の影響はまだほとんど出ていないので、当初よりも補正予算の金額は落ちてくると思う。そうすると物価高対策がメインだが、年内に動きそうなのはガソリン減税だけ。野党は11月にもと言うが、恐らく今の日程だと難しい。年内やっとという感じだろう」

――高市さんは以前「食品の消費税減税」と言っていたから、この辺も総裁選で侃々諤々の議論をすればもう少し盛り上がったと思うが…。野党との連立や閣外協力によっても、テーマはだいぶ変わってくるのか?

矢嶋さん:
「方向性という意味で、おそらく自民党が手を結ぶ可能性があるのが日本維新の会と国民民主と言われている。維新が強く主張しているのが社会保険料の引き下げで、国民民主は年収の壁、所得税の改革。同じ“負担を減らす”話だが、改革の中身が変わってくるので、それに付随するいろいろなテーマは、どっちと組むかによって変わってくると思う」

――社会保険料の引き下げも、いざやるとなると大変?

矢嶋さん:
「維新の言う方向性は、みんな賛成するとは思う。ただ、どれくらい引き下げるかの金額によってやらなきゃいけない改革の量が変わる。それによって影響がかなり大きく市場に出てくるので、連立を組むときに、どれくらいの金額になるかというのを多分マーケットが織り込みに行くのではないか」

「賃上げ継続」のために新政権がすべきこと

新政権が、賃上げ路線を継続できるかどうかも一つの試金石だ。

【春闘賃上げ率】
▼全体⇒【2023年3.58%】【24年5.10%】【25年5.25%】
▼中小組合⇒【23年3.23%】【24年4.45%】【25年4.65%】
※連合 7月1日時点 第7回回答集計より

『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
「今、企業の収益はいいので、賃上げをする体力はある。なので、“賃上げをさせない理由を作らせてはいけない”。例えば、企業の収益で多分一番大きい外部環境の<為替>が大きく振れないような政策をどうやるかということ。あとは金融市場などいろんなところから“経営者に目線を非常に強く見せる”ことで、『やれるんだからやってくださいよ』という流れに持ってかないといけない」

(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年10月4日放送より)

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