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2025年10月08日 19:21 ITmedia PC USER
レノボ・ジャパンが5月に発売した「ThinkPad P14s Gen6 AMD」は、高性能なThinkPad Pシリーズの中でも、AMDプロセッサを採用したモバイルワークステーションだ。
筆者は同機を購入して使っている。なぜ購入に至ったのか、ThinkPad P14s Gen6 AMDのどこに魅力を感じたのか、外観や各種ベンチマークテストなど、さまざまな角度から紹介しよう。
●ライフスタイルの変化から、デスクトップPCの前に座る時間が減った
いきなり私事ではあるが、9月に第一子が誕生した。今までであれば、家族と過ごす余暇以外は自室のPCデスクにずっと座っていられたのだが、子供が産まれるとそうはいかない。
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子供が生活する寝室はリビングの隣にあり、筆者の部屋から離れているし、妻が眠っている間や出掛けている間は、常に子供の様子が確認できる状態にしておかなければならない。
であれば、自ずと自室のPCデスク前に座る機会が減ってしまう。とはいえ、つきっきりの育児となると、育児の合間の余暇や副業を行う際に支障を来してしまう。
いろいろと思案する中、AMD Ryzen AI PROプロセッサを搭載したThinkPad P14s Gen6 AMDが発売されていることに気付き、メインPCを入れ替えられないかと検討し始めたのがきっかけだ。
●最大で96GBのメモリを搭載できる点が決め手に
さて、筆者のメインPCはローカルLLM(大規模言語モデル)や、Adobe Lightroom、Adobe Photoshop、仮想マシンをヘビーユースしている関係で、128GBのメモリを搭載している。
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そうなると、おのずとモバイルワークステーションも同等程度のメモリを搭載できることが必須条件として挙がってくる。最近のノートPCは本体重量の軽量化や、システムボードの実装効率、電力効率の関係でLPDDRを採用しているため、後からメモリの増設が困難なモデルが大半を占めている。
となると、最初から搭載されているメモリ量が多い構成を選ぶ必要があるのだが、その場合はかなり購入費用がかさんでしまう。
その点、ThinkPad P14s Gen6 AMDはユーザー自身でメモリの換装が可能ながら、本体重量は約1.39kgからと、持ち運びが苦にならない絶妙な本体重量を実現している。
サポートするメモリも最大で96GBと、メインPCの128GBには少し及ばないものの、おおむね満足できる構成が取れるという点は非常に魅力的に映った。
今回購入したThinkPad P14s Gen6 AMDは、メモリを最小構成の32GB(DDR5-5600×1枚)という構成にして、後からCrucialの48GB(DDR5-5600×2枚、CT2K32G56C46U5)を追加で購入して換装した。
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ThinkPad P14s Gen6 AMDに筆者がほれ込んだ点についてはこれくらいにしておいて、ThinkPad P14s Gen6 AMDの外観をチェックしていこう。なお、購入時点での構成は以下の通りだ。
・CPU:Ryzen AI 7 PRO 350
・OS:Windows 11 Pro(64bit)
・メモリ:32GB DDR5-5600MT/s(SO-DIMM)
・ストレージ:512GB SSD M.2 2280 PCIe-NVMe Gen4 TLC OPAL対応
・ディスプレイ:14型 2.8K OLED マルチタッチパネル HDR500 100%DCI-P3 500ニト VRR 30-120Hz
・内蔵カメラ:約500万画素IRカメラ
・無線LAN:Wi-Fi 7対応
・WWAN:なし
・有線LAN:本体内蔵
・NFC:なし
・指紋センサー:内蔵
・キーボード:バックライト付き日本語キーボード
・カードスロット:スマートカードリーダー
・バッテリー:4セル(57Wh)
●ThinkPad P14s Gen6 AMDの外観をチェック!
ThinkPad P14s Gen6 AMDは14型のモバイルワークステーションで、モバイル向けのThinkPadの中で、他に同じサイズのディスプレイを持つ製品となると、ThinkPad X1 Carbonシリーズが該当する。
しかし、残念ながら重量は約1.39kgとThinkPad XシリーズのようなモバイルPCと比べて非常に重たい部類に入る。
一昔前に筆者が持ち運びしていたThinkPad T470sより少し重たい位と考えると、持ち運びに支障を来すことはないと思う。
画面上部にはWindows Helloに対応したIRカメラが搭載されているため、指の乾燥などで指紋認証がうまく通らない場合でも、画面付近を見るだけでWindowsにログインできて便利だ。
左側面にはUSB Type-Cの形をしたポートが配置されているが、いずれもThunderbolt 4ポートだ。Thunderboltポートと言えば、Intel CPUを搭載したPCでなければというイメージが強かっただけに、ThinkPad P14s Gen 6 AMDには驚きだった。今回メインPCの代わりということもあり、可能であれば外部GPUを利用したかったため、非常に心強い。
重量が約1.39kgと、ある程度ボディーの中にスペースがあることもあり、HDMI出力ポートとUSB 3.2 Gen1ポートも用意されている。
右側面には左から順にマイナンバーカードなどのICチップ付きカードを読み取るためのスマートカードリーダー、nanoSIMスロット(ダミー状態)、USB 3.2 Gen 1、有線LANポートの順に並んでいる。
スマートカードリーダーは、スマホへのマイナンバーカードの取り込みや、マイナポータルアプリを使ったサインインを多用しているため、正直追加する必要はなかったが、差額は2200円ほどだったので、せっかくなので追加してみた。
ThinkPad P14s Gen 6 AMDはスペックシート上、WWANに対応しているのだが、残念ながら現時点ではカスタマイズ時にWWANを指定できない。そのため、nanoSIMスロットはあくまでダミースロットとなる。
WWANアンテナだけ実装されていないかと祈っていたが、残念ながらWWANアンテナは未実装の状態で届いた。もし自分で後から追加するとしたら、WWANアンテナを取り付ける必要があるので注意したい。
以前、ThinkPadのキーボード配列が変わった当初は受け入れられないなと一定の距離を取っていたのだが、「ThinkPad TrackPoint Keyboard II」の登場をきっかけに今ではすっかり慣れたものだ。
ただ驚いた点として、左CtrlキーとFnキーの位置が標準で入れ替わっている。少なくともThinkPad X13 Gen2 AMDの頃はまだ左がFnキーだったので、ここ最近で変わってしまったのだろうか……。ついにThinkPadが他機種のキー配列に迎合してしまった事実をまだ受け入れられないでいるのが正直なところだ。
●ベンチマークを通して性能をチェック
さて、今回購入したモデルに搭載されているRyzen AI 7 PRO 350の性能について詳しくチェックしていこう。
今までリリースされてきたモバイル向けのRyzenシリーズは、バッテリー駆動時において、ACアダプター接続時と比べてパフォーマンスが低下する傾向があった。しかし、ThinkPad P14s Gen 6 AMDに搭載されているRyzen AI PRO 300シリーズはこの課題が克服されており、ハイパフォーマンスが求められるモバイルワークステーションにピッタリなモデルと言えよう。
そこで、3DレンダリングによってCPUの性能をテストする「CINEBENCH R23」を実行し、Ryzen AI 7 PRO 350のACアダプター駆動時とバッテリー駆動時のパフォーマンスをチェックしてみよう。なお、今回ベンチマークテストの比較対象として、以下の筆者のメインPCの測定結果と比較しているので、参考になれば幸いだ。
メインPCの主なスペック
・CPU:AMD Ryzen 7 9700X
・メモリ:128GB(DDR5-5600/64GB×2)
・GPU:PowerColor Hellhound AMD Radeon RX 9070(グラフィックスメモリは16GB)
CINEBENCH R23のベンチマークテストスコア
・マルチコア
・ThinkPad P14s Gen 6 AMD(AC駆動):1万3525ポイント
・ThinkPad P14s Gen 6 AMD(バッテリー駆動):1万3394ポイント
・メインPC:1万6089ポイント
シングルコア
・ThinkPad P14s Gen 6 AMD(AC駆動):1928ポイント
・ThinkPad P14s Gen 6 AMD(バッテリー駆動):1835ポイント
・メインPC:2112ポイント
こうして結果を比較してみると、AC駆動、バッテリー駆動ともにマルチコアスコア、シングルスコアにおいてほぼ同等のパフォーマンスを発揮していることが確認できた。
それに加えて、割と無理筋で比較対象としたメインPCとのスコア比も、マルチコアスコアは約83.2%、シングルコアスコアは約89%と大健闘しており、今回の目的であったメインPCの代替として十分なパフォーマンスを発揮していることが見て取れる。
●ThinkPad P14s Gen 6 AMDは持ち運べるメインPCにピッタリ
ThinkPad P14s Gen 6 AMDについて、メインPCの代替機として利用できるか、という観点でハードウェア仕様から外観、ベンチマークテストを通して掘り下げてみてきた。
特にRyzen AI 7 PRO 350のパフォーマンスは、ノートPC向けのCPUにもかかわらず、デスクトップ向けのRyzen 7 9700Xの約8割のパフォーマンスを発揮できる点は、非常に大きな強みと言えよう。
加えて、ノートPCながら最大で96GBのメモリをサポートしているため、筆者のようなローカルLLMや、フォトレタッチ、仮想マシン用途で利用していたとしても十分なメモリ容量を確保できる点も非常に強烈な仕様だ。
インタフェースに着目してみると、Thunderbolt 4ポートを2基標準で搭載している点も非常に大きい。例えばThunderbolt 4を使った外付けのGPUボックスや、Thunderbolt 4ドッキングステーションと組み合わせることで、デスクトップPCと変わらないスタイルで利用できる。
そのため、自室で集中して作業する際はより強力な外部GPUと外部機器を利用できるし、育児や家事などで自室を離れる際も、メイン環境をそのまま持ち運んで作業継続できるため、筆者にピッタリな1台であることを改めて確認できた。
どこでもメイン環境を変わらず利用したい方には自信を持ってオススメできる製品だ。同じような悩みを抱えている方は「メイン環境のポータブル化」にチャレンジしてみてはいかがだろうか。
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