3世代目「Pixel 10 Pro Fold」レビュー 薄型軽量への正直な評価、カメラは予想以上に高画質で使い勝手よし

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2025年10月09日 02:10  ITmedia Mobile

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10月9日に発売されるPixel 10 Pro Fold。その使用感を、一足先にお届けする

 Pixel 10シリーズのフォルダブルスマホ「Google Pixel 10 Pro Fold」が、10月9日に発売される。Pixelは、スタンダードモデル1機種と、製品名にProがつくプロモデルの2ラインに分かれるが、ラインアップは後者の方が充実している。通常サイズの「Pixel 10 Pro」とその大画面版にあたる「Pixel 10 Pro XL」が存在する他、今回取り上げるフォルダブルスマホのPixel 10 Pro Foldも選択できる。


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 このPixel 10 Pro Foldも、3世代目になってより成熟度を増している。今作はバッテリー容量を増やし、30時間以上の駆動時間を誇る他、ワイヤレス充電もQi2に対応。ディスプレイ比率を大きく変えてフルモデルチェンジを図った「Pixel 9 Pro Fold」を、ブラッシュアップした端末に仕上がっている。この機種を発売に先立ち試用することができた。ここでは、そのレビューをお届けする。


●コンセプトキープで正統進化、フォルダブルながら防塵も魅力的だが……


 薄型化を大きく進めてフルモデルチェンジを図ったサムスン電子の「Galaxy Z Fold7」に対し、Pixel 10 Pro Foldはどちらかといえば、前モデルを踏襲しながら細部をブラッシュアップしている印象の端末になる。開いたときのディスプレイサイズは前モデルと同じ8型。閉じたときのサイズは6.4型で、わずかながら外側ディスプレイが大型化している。


 また、ボディーのサイズは幅76.3mmと先代のPixel 9 Pro Foldからややスリムになった。これは、狭額縁化を進めたためで、閉じたときの没入感は高まっている。ただし、厚みは閉じたときが10.8mmと0.3mmほど厚くなってしまった。わずか0.3mmと思うかもしれないが、全体が10mm前後だとやはり手に取ったときの違いが分かりやすい。重量も、1gアップの258gになった。


 Pixel 9 Pro Foldが登場した際には、国内最薄の横折りフォルダブルスマホを銘打っていたが、2025年現在では、その座を先に挙げたGalaxy Z Fold7に奪われている。2024年、Pixel 9 Pro Foldを試用した際には、「フォルダブルスマホもここまで薄くなったか」と感心したものだが、改めてPixel 10 Pro Foldを持ってみると、まだ厚いと思うようになった。


 これは、筆者が普段から一般的なバータイプのスマホと同程度まで薄型化したGalaxy Z Fold7を使っているためだろう。いったん、ここまで薄いフォルダブルスマホを体験してしまうと、後には戻れないということだ。グローバルでは、横開きのフォルダブルスマホの世界で薄型化競争が過熱しているが、Googleがこのビッグウエーブに乗り遅れてしまったのがやや残念。200g前後のスマホと比べるとズッシリとした重みもあり、要改善のポイントといえる。


 とはいえ、カメラバーが台座のような四角になっていることもあり、机の上に置いた際に安定するのはPixel 10 Pro Foldの美点だ。薄型化を突き詰めたGalaxy Z Fold7は、このバランスが悪く、置いたまま使う際に安定感がない。横一直線のカメラバーを採用した他のPixel 10シリーズよりはガタガタしてしまうものの、それでもまだ置いたまま使いやすい印象は受けた。


 また、この機種から防水・防塵(じん)がIP68に進化した点も見逃せない。可動部の多いフォルダブルスマホは、どうしても防塵が弱くなりがちだ。先代のPixel 9 Pro FoldはIPX8で防塵には非対応、Galaxy Z Fold7も防塵はIP4Xで1mm以上の砂やホコリしか防げないため、サラサラした砂のあるビーチなどの上に落とすと故障の原因になる。


 対するPixel 10 Pro FoldはIP68で、粉じんが一切侵入しない等級になっている。実際、ヒンジ周りを見ると、隙間がほとんどなく、ガッチリとした作りになっていることが分かる。ここから細かな砂を巻き込んでしまい、開閉できなくなるという心配はなさそうだ。利用シーンが限定されていたフォルダブルスマホだが、Pixel 10 Pro Foldであれば、安心して海や砂場などに持っていくことができる。


 ということで、実際に砂場に持っていき、あえてPixel 10 Pro Foldを砂まみれにしてみた。フォルダブルスマホは、砂の上に置くだけでちょっとドキドキしてくる。砂をかけた状態で画面をつけてみたが、もちろん操作は可能。このままグイっと折り曲げてみたところ……ヒンジ付近にジャリっとした嫌な感触があった。そのまま開閉したところ、やはりジャリジャリと音がする。


 どうやら、ヒンジが砂を巻き込んでしまったようだ。「レビュー完成前にやってしまったか……」と思いながら、真水で洗浄。その後開閉を繰り返し、クッションを本体でトントンとたたいたところ、だんだんと音がしなくなってきた。内部に砂が侵入しきらず、開閉で排出する仕組みなのかもしれない。今のところではあるが、音は鳴らなくなり、開閉にも問題は起こっていない。


 ただ、やはり砂を巻き込むのは事実で、何度もやっているといつか壊れてしまいそうな不安感があった。大丈夫……といわれても、自分の端末だったらビーチなどに持っていくのは避けてしまいそうだ。あくまでも、うっかりミスで砂まみれになってしまっても、生存確率が高まるぐらいに捉えておいた方がいいかもしれない。


●カメラは10 Proとの差分はあるが高画質、フォルダブルならではの使い勝手も評価


 カメラは、超広角、広角、望遠のトリプルカメラ。広角カメラには、4800万画素のセンサーが搭載されており、ピクセルビニングを解除して切り出すことで2倍相当のズームとしても使える。望遠カメラは広角からの倍率で5倍までのズームが可能だ。ホワイトバランスの正確さや、シャープなディテールは他のPixel譲り。人も料理も、サッとキレイに撮れる。


 一方で、Pixel 10 Pro/Pro XLほどの望遠性能はない。端末名に“Pro”を冠しているため、同じことができると思った向きもありそうだが、少なくとも望遠での撮影を楽しみたいならPixel 10 ProやPixel 10 Pro XLを選択すべきだ。Pixel 10 Pro/Pro XLに搭載された拡散モデルを使う「超解像ズームPro」にも非対応となる。


 これは、望遠カメラが1080万画素と画素数が低いからだろう。Pixel 10 Pro/Pro XLの望遠カメラは4800万画素の5倍で、切り出しを使うことで10倍までほぼ劣化のない撮影ができる。これに対し、Pixel 10 Pro Foldでは、もとの画素数が低いため、切り出しが使えない。5倍以上には超解像ズームがかかる。デジタルズームで補正が入るということだ。


 ただし、大本が5倍で、そこから2倍分を引き延ばしているだけなので、そこまで画質が劣化するわけではない。むしろ、補正はかなり優秀。少なくとも、単に画像を拡大しただけのデジタルズームとは大きく違う。肌のディテールもしっかり残っているし、Pixel 10 Proで撮った写真と比べても、かなり拡大しなければ違いが分からない。Pixel 10 Pro/Pro XLほどではないが、ズーム性能は優秀と評価していい。


 また、フォルダブルの形状を生かし、メインカメラで自撮りを楽しむことも可能だ。メインの広角カメラを使えばインカメラよりも高画質なのはもちろん、超広角カメラに切り替えて複数人でグループ撮影したり、ポートレートモードを使って背景をボカしたりといったことも自由自在にでき、かつクオリティーも高くなる。


 こうした使い方ができるのは、フォルダブルスマホならでは。画質の高さで定評のあるPixelシリーズならではのカメラと、表裏両方にディスプレイのあることの相乗効果で、撮影の幅が広がる。もちろん、折り曲げた状態のままテーブルなどの上に置き、自分も含めた状態で集合写真を撮るといった用途にも使える。単純な画質という観点ではPixel 10 Pro/Pro XLに及ばないものの、使い勝手まで含めると評価が高まる端末といえそうだ。


●AI機能はPixel 10シリーズ準拠、マジックサジェストは今後の進化待ちか


 プロセッサは他のPixel 10シリーズと同じ「Tensor G5」で、AIを使った機能も同じように利用できる。撮影では、AIが被写体を認識し、利用する機能や構図、フレーミングのアドバイスをしてくれる「カメラコーチ」に対応する。Pixel 10シリーズのレビューでも書いたように、頼りすぎるとAIに操られているような気分になってくるものの、指示に従うだけで適当に撮るよりクオリティーが上がるため、撮影に自信のない人にはいい機能だ。


 実際、モデルに適当にカメラを向けてシャッターを切った写真と、カメラコーチに従ってポートレートモードを有効にし、より近づいたうえでカメラの位置も気を付けながら撮った写真を比較すると、違いが分かりやすい。さすがにプロが撮った写真とまではいかないが、かなり見栄えがよくなっている。AIを単なる画質向上ではなく、ユーザーのセンスを磨くために使っている点は面白い。


 もう1つの大きな売りといえるのが、ユーザーの行動を先読みして、最適なアプリを提案したり、アプリ内から情報を引っ張ってきて画面に表示したりしてくれる「マジックサジェスト」だ。ただし、こちらは他のPixel 10シリーズをレビューした時と同様、あまり有効には機能しかなかった。


 フライトの予約をしたメールは届いていたが、それを尋ねても特に反応はなし。宿泊先の情報を表示してくれるということもなかった。使い始めてからしばらくたっているため、解析は終わっていたはずだが、まだまだ利用できるシーンは限られているのかもしれない。


 一方で、メッセージ中にはカレンダーアプリを提案してくれることはあった。予定を聞かれたようなときに、自分でアプリを選択せず、メッセージアプリ内から直接カレンダーに移れるのは、ちょっとしたことだが便利。特に、チャットのようにテンポよくメッセージをやりとりしている際には、役立つ機能といえる。まだまだ改善は積み重ねる必要があるが、AIが行動を先回りしてくれるというコンセプトは面白い。


 AI関連でもう1つ便利なのが、オンデバイスで文字起こしが可能なレコーダーだ。これはPixel 10 Pro Foldに限ったことではないが、フォルダブルスマホの場合、半開きの状態のまま、文字を表示できるため、PCなどでメモを取りながらその中身を確認しやすい。リアルタイムでかつオンデバイス、さらに折り曲げられるのはPixel Foldシリーズだけ。その文字起こしがサクサク進むのは、最新のチップを備えているからこそだ。


 もっとも、そのTensor G5ゆえに、GPUをフル活用する一部のゲームに制限がかかってしまう側面もある。特にこの機種は画面サイズが大きいだけに、この点は少々残念。価格が26万7500円(256GBモデル)にも上るため、なおさらそう感じる。3世代目になったPixel 10 Pro Foldだが、サイズ感などにも含めてもうひと頑張が必要。AIとの組み合わせで使い勝手はいいだけに、アップデートによる改善にも期待したい。


(製品協力:Google Japan)



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