
【写真】あふれだす色気がすごい! 北山宏光、インタビュー撮りおろしショット
■北山宏光、6年ぶりの主演舞台にしみじみ「1年目のような気持ちで」
――歴史ある作品の主演を務めることになりました。オファーを受けての率直な思いを聞かせてください。
北山:歴史を背負う責任を感じましたね。ただ、この令和の時代に上演することで、観た方々が何をどう受け取ってくれるのか……というワクワク感もありました。
――北山さんご自身は、この作品を知っていましたか?
北山:いえ、知りませんでした。オファーを受けてから作品を観たのですが、登場人物たちの荒々しい姿がとても印象的で。戦後、家も家族も何もかもを失ってしまった状態で、怒るのも悲しむのも疲れてしまう。それでも生きていかなければいけない人間のエネルギーを感じる物語でした。
――この作品で、主演としては6年ぶりに舞台へと帰って来ることになりました。それについての思いも聞かせていただけますか?
北山:前回の舞台からもう6年も経ったんだなぁ……と、なんだかしみじみしてしまいました。この6年の間、活動の環境にいろいろな変化があったので、今回の舞台は1年目のような気持ちで挑もうと思います!(笑) 僕自身、舞台という場所がすごく好きなんですよね。舞台は“生もの”で、映像作品とは違った“尊さ”があると思っています。僕たちの放つ熱量をお客さんに直に感じてもらえる場所なので、この作品を観た人にも何かを与えられたらいいなと思っています。
――演じる「松永」は、闇市を支配する若いやくざ。自身と共通することは少ないと思いますが、共感できる部分などはありましたか?
北山:生きている時代がまったく違うので、共通点を見つけることはなかなか難しいですね。ただ、松永は思ったことを素直に吐き出すキャラクターなのですが、「もしも僕がこの時代に生きていたら」と仮定すると「僕も同じ吐き出し方をしていたのかな」なんて思いました。
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――北山さんも虚勢を張ってしまうことはありますか?
北山:かわいがっている後輩に対して強めに言ってしまうこともありました。かっこつけずに、優しく指導すればよかったのにね(笑)。
■“北山宏光が松永を演じる意味”を見せつけたい
――松永は「死にたいけど死にたくない」「故郷に帰りたいけど帰りたくない」という“矛盾”した部分も持ち合わせています。その点について、北山さんはどう思いますか?
北山:僕は「人間は誰しも矛盾している」と思っていて、その部分に関しては、松永にすごく共感できます。ましてや松永は戦後の混沌とした世界で生きている。追い詰められた状態の中で「死にたいけど死にたくない」と思うのは、とても人間らしいと思いました。僕もこの時代に生きていたら、そういう考えになっていたと思います。
――これから稽古に入られますが、松永を演じるために準備していることはありますか?
北山:準備というか、僕がもともと持っているものをスパイスとして、作品に色を付けていきたいなとは思っています。原作となった映画、2021年に上演された舞台がある上で「北山宏光が松永を演じる意味」というのを見せつけなければいけないと思っています。
――まだ模索中かと思いますが、「こういう松永にしたい」というイメージはありますか?
北山:松永の無骨なイメージの中に、少しの“艶”を足したらどうなるのかな?と思ったりしています。そうすることで、令和版ならではのオリジナリティーが出るのではないかと。
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北山:ありがとうございます。今作では顔に土を付けて荒々しさを表現したりと、あえて過去作との変化を加えています。そのアプローチの仕方もそうですが、時代やキャストが変わると雰囲気もここまで変化するのかと、面白さを感じました。
――共演者には、横山由依さん、岡田結実さんなどが名を連ねています。顔合わせはまだ(※取材時)ということですが、他番組で共演した際の印象を聞かせてください。
北山:共演経験がある方はいるのですが、すべてバラエティ番組なんですよね。だから、バラエティでの面白い印象しかなくて(笑)。一緒にお芝居をしたことがないので、掛け合うことでどんな表情を見せてくれるのか、本当に楽しみです。渡辺大さん(真田役)とは今回が初共演。キャラの立ち位置としてはバディ関係のような感じになるので、さらにご本人との年齢も近いですし、仲良くなれるといいなと思っています。
――演出の深作健太さんとはすでにお会いされたと伺いました。彼の印象はいかがでしたか?
北山:物腰が柔らかくて、そしてとてもクリエイティブな方だという印象を受けました。「この作品はこうだから」と凝り固めている感じはまったくなくて、一緒にアイディアを出し合いながら作品を作っていける“柔軟さ”を感じましたね。
――上演決定のリリースに「今の時代に上演される意義が見出されることでしょう」とありました。北山さんが脚本を読んで感じた“意義”を聞かせていただけますか。
北山:この作品を令和に上演すること自体が、まず面白いですよね。生きることに対しての“揺れ”を感じる作品で、令和に生きる方々が観た時に、咀嚼の仕方が全員違うものになると思いました。また、時代背景も今とまったく違いますが、「死にたいけど生きていたい」などの複雑な心境を抱えている人たちは、いつの時代にも存在すると思います。生死に対する思いはどの時代も共通しているからこそ、この作品から受ける何かしらの影響はあると思うんですよね。若い子が観たら、もしかしたら人生がひっくり返っちゃうかもしれない。その“何か”を受け取り感じてもらうことが、この作品を令和に上演する意義だと思います。
――北山さんは、観た方に何を受け取ってもらえたらいいと思っていますか?
北山:僕としては、上演が終わって会場を出て、電車に乗っている時でもいいし、ご飯を食べている時、お風呂に入っている時でもいいのですが、「舞台ってすばらしいな」と思ってもらえたらいいですね。充実感を感じた際、謎の“ため息”が出る瞬間ってあるじゃないですか(笑)。あの「は〜よかった」というため息が多ければ多いほど、僕はうれしいです。
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舞台『醉いどれ天使』は、東京・明治座にて11月7日〜23日、愛知・御園座にて11月28日〜30日、大阪・新歌舞伎座にて12月5日〜14日上演。