2025年F1第21戦サンパウロGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル) 2025年F1第21戦サンパウロGPでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がピットレーンからスタートし、3位でフィニッシュした要因のひとつが、パワーユニット(PU)を交換し、フレッシュなエンジン(ICE)でレースを戦ったことが挙げられる。この決定はフェルスタッペンが予選Q1敗退した後、程なくして決定されたとホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)は説明する。
「予選順位が悪かっただけでなく、クルマの状態も酷かったので、セッティング変更が必要だから、パルクフェルメ・ルールを破ることは早々に決まりました。そこで、新しいパワーユニットも入れていこうということになりました」
予選後にレッドブル・ホンダRBPTが交換したフェルスタッペンのパワーユニットは、コンポーネント6種類のすべてだった。
「じつはそれについては少し議論がありました。というのも、予選後に準備できていたのは最小限のペナルティを受けるパワーユニット(たとえば、新しいICEに、使用済みのターボとMGU-H、MGU-Kを搭載したもの)でしたが、あの予選順位(16番手)であれば、最小限のペナルティ(10グリッド降格)もフルペナルティ(最後尾スタート)も変わらないので、サンパウロGPも含めて残り4戦を全力で戦うにはフルペナルティをとったほうがいいという決断となりました」
事前にどのような組み合わせで準備されていたのかは不明だが、いずれにしても準備していたものを一旦バラして、その後に組み直したことは間違いない。そうなると、交換作業は通常よりも時間を要することは想像に難しくない。
「今回はチーム側のメカニックだけでなく、交換しない側(角田裕毅)のホンダのメカニックも一緒になって作業したので、比較的余裕を持ってレースに臨むことができました」
角田も予選は19番手に沈んでいた。角田のパワーユニットを交換しなかった理由について、折原GMはこう語る。
「裕毅のほうは(すでに5基目を入れているので)台数的には余裕がありました。あと、2台そろってピットレーンスタートというのは好ましくないというのもありました」
予選後にパワーユニットを交換すると、レースがぶっつけ本番となる。エンジン自体のセッティングはどのように行われたのか?
「エンジン本体以外のチューニング、たとえばエネマネ(エネルギー・マネージメント)などはそれまでに済んでいました。あとは、エンジン個体の差を埋めるチューニングに関してはラップ・トゥ・グリッド(レコノサンスラップ)を利用して、ピットに戻ったときに、調整していました。そういう作業はできればやりたくはないですが、これまでも何度かやっているので、問題なかったと思っています」
そのレコノサンスラップでは、フェルスタッペンがこんなことを無線で語っていた。
「このエンジンは間違いなく、振動が少ないね」
このメッセージは折原GMも、もちろん聞いていた。
「あれは、ポジティブな感想でした。データを見る限り、個体による差はないのですが、ドライバーは何かを感じたんだと思います。そのようなメッセージは私も今回、初めて聞きましたが、振動が少ないというのは悪い話ではないので、隣に座っていた人(チーフエンジニアのポール・モナハン)と顔を見合わせて、お互い思わずニヤっとしました」(折原)
フレッシュエンジンに交換したものの、現在のレギュレーションではチームによってエンジンのパワー差が出ないよう、スロットル全開時の出力は同じになるよう設定されている。
「同じエンジンは同じデータで走らなければならないのですが、フレッシュなエンジンのほうが馬力は出ますので、同じデータで走っても確実に差は出ます」
そのエンジンパワーも手伝って、フェルスタッペンはピットレーンからスタートして、3位までポジションアップに成功した。その結果を折原GMも望んでいたものの、想定はしていなかったと言う。そして、残り3戦に向けて、こう抱負を語った。
「新しいパワーユニットを入れたということは、我々もまだ全然諦めていません」
次の第22戦ラスベガスGPは全開率の高いコース。サンパウロGPで投入した比較的新しいエンジンが威力を発揮することは間違いない。
[オートスポーツweb 2025年11月17日]