ノーベル生理学・医学賞の坂口さん講演要旨

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2025年12月08日 21:01  時事通信社

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時事通信社

 【ストックホルム時事】坂口志文・大阪大特任教授が7日行ったノーベル生理学・医学賞の受賞記念講演の要旨は次の通り。

 メアリー・ブランコウ博士、フレデリック・ラムズデル博士と共に受賞できるのは大きな名誉だ。ノーベル委員会とカロリンスカ研究所には感謝申し上げる。

 免疫系は、侵入してくる微生物から私たちの体を守るが、同時に正常な細胞まで攻撃する危険性もある。以前から、何らかの制御システムが存在するはずだとして、複数の仮説が提唱されてきた。

 愛知県がんセンターの研究グループは、生後3日目のマウスから胸腺を摘出すると自己免疫疾患を発症するが、初日や7日目以降に摘出すると、ほぼ発症しないことを発見した。

 私たちは実験で、胸腺では生後数日で自己免疫を抑えるT細胞が作られ、それが欠けると自己免疫疾患を起こすとの仮説に至った。その後、目印となる分子が見つかり、重要な遺伝子も特定された。これらの研究により、「制御性T細胞」の発生や機能の解明が進んだ。

 治療では、同細胞を意図的に増減させるほか、特定の疾患に対応する細胞を作る方法などがある。臨床応用が可能な段階に入っており、自己免疫疾患や臓器移植後の拒否反応などを抑えたり、がんに対する免疫を高めたりすることも可能だ。

 最後に、研究に関わった多くの方々、第一に人生のパートナーであり共同研究者でもある妻の教子、同僚や学生などに深く感謝したい。 

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